キャデラックCTS 3.6(FR/6AT)【試乗記】
うれしい誤算 2008.02.27 試乗記 キャデラックCTS 3.6(FR/6AT)‥…620.0万円
約6年ぶりにフルモデルチェンジした「キャデラックCTS」。大胆なデザインのフロントグリルで登場した2代目の3.6リッターモデルを試す。
板に付いたデザイン
縦型ヘッドライトに2段構えの大型ラジエターグリルがとても雄々しい今度の「キャデラックCTS」。兄貴分の「STS」がフェイスリフトにより同様のフロントマスクを手に入れたのに対し、CTSはフルモデルチェンジを実施して2代目に進化。初代CTSの登場を皮切りに進められてきた「キャデラック・プロダクト・ルネッサンス」は、これを機会にテーマを“Art & Science”から“Pursuit(追求)”に改め、第2ステージへと踏み出すことになった。
キャデラックのエントリーモデルとはいえ、全長4870mmの堂々たるボディを誇る新型CTSには、初代同様、いまどきのクルマとしては珍しいくらい、エッジの効いたシャープなエクステリアが与えられた。旧型ではどことなく窮屈に思えたフロントマスクは、全幅が2インチ広がったことも手伝って、とてもバランスよく見える。
フロントフェンダーに設けられたサイドエアベントも新型の特徴だ。欲をいえばクロームメッキではなく、アルミなどを使い、より上質に仕上げてほしかったが、全体的にはキャデラック独自のスポーティな雰囲気がうまく表現できている。
高級感漂うカット&ソー・インテリア
外観以上に乗員を満足させるのが新しいインテリアだ。ドアを開けてまず目を奪われるのが、ダッシュボード上部からドアトリムにいたる美しい仕上がり。素材こそ本革ではないが、高級車のように素材を手作業で裁断し、ステッチを施し、貼り合わせたという“カット&ソー・インテリア”が退屈になりがちなコクピットの眺めにアクセントを与えている。
センタークラスターもきれいにまとまっている。8インチモニターは不要なときには収納可能なポップアップ式で、収納したときでもオーディオの情報などが表示されるので重宝する。ちなみにHDDナビに加えて、iPod接続用のケーブルやBOSEの5.1chサラウンド・サウンド・システムが標準装着となる。
3連メーターにはシンプルなアナログメーターを配置。時計もアナログ式を採用している。メーターやスイッチのリングなどにクロームメッキを多用するのは、個人的には好みではないが、それを差し引いても運転席は居心地がいい。
直噴化でますます元気な3.6リッターV6
日本でのラインナップは3.6リッターV6を積む「CTS 3.6」と2.8リッターV6の「CTS 2.8」の2タイプで、どちらも6段ATが組み合わされ、後輪を駆動する。なお、現時点では左ハンドルしか用意されないが、エントリーモデルだけに右ハンドルの設定は不可欠だろう。
ふたつのモデルのうち、今回試乗したのはCTS 3.6。エンジンの排気量こそ旧型と変わらないが、直噴を採用したことで最高出力は56psアップ!の311ps/6400rpmを実現する。引き続きレギュラーガソリン仕様というのは、このご時世にはうれしいかぎりだ。
さっそくエンジンを始動して試乗開始。3.6リッターの直噴ガソリンエンジンは低回転から余裕たっぷりで、1000rpm台前半でも1810kgのボディをするすると前に押し出す力強さを誇っていた。2000rpmを超えるとさらに勢いを増し、街なかなら右足のわずかな動きだけでストレスなく走れるのがいい。積極的にコントロールしたければ、シフトレバーをDレンジから右に倒してマニュアル操作することも可能。その際、メーターパネルにはギアポジションが表示される。高回転まで引っ張れば、5000rpm手前から艶のある音を漏らしながら、レブリミットの7000rpmまで、期待に違わぬ加速を見せるはずだ。
不満は後席スペース
前:ダブルウィッシュボーン、後:マルチリンクのサスペンションは、このCTS 3.6ではよりハードなスポーツサスペンションとなり、タイヤも235/50ZR18が標準装着となる。おかげで乗り心地はやや硬めだが、思いのほか快適なのはうれしい誤算。高速道路でもその快適さは変わらず、直進安定性に不安もない。フラット感もまずまずのレベルである。
車速感応式のパワーステアリングは比較的軽めの操舵力ながら、フィーリングはとても自然。首都高速を走るかぎり、ボディの大きさや重さを感じさせない素直な動きに好感を持った。
ということで、見た目も中身も洗練されて、グッと付き合いやすくなった新型キャデラックCTS。不満は後席で、比較的低い位置に座らされるうえに、あまり足を前に伸ばせないので、どうしても膝を抱えるような姿勢を強いられ、やや窮屈。だからといって、荷室が驚くほど広いわけでもない。ボディサイズに余裕があるだけに、もう少しなんとかならなかったのか?と思うけれど、それを承知のうえで、CTSの個性を手に入れたいという人を止める理由は思い浮かばない。
(文=生方聡/写真=郡大二郎)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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