フィアット・グランデプント アバルト1.4ターボ(FF/6MT)【海外試乗記】
アバルトの復活 2008.01.31 試乗記 フィアット・グランデプント アバルト1.4ターボ(FF/6MT)スペシャルチューンを施された特別なフィアット、「グランデプント アバルト」。155psのパワーを発生するホットモデルに『CAR GRAPHIC』大谷秀雄がイタリアで試乗した。
『CAR GRAPHIC』2007年12月号から転載。
健脚を手に入れた
アバルトは2008年暮れまでに、4モデルを矢継ぎ早に発表する。まずグランデ・プント・アバルトが先鋒役を務めた後、2008年初頭に同“エッセエッセ”が登場、つづいて500アバルト、そして年末までに同“エッセエッセ”がリリースされるという。エッセエッセ(esse esse)とは、「Super Sport」の頭文字SSの伊語であり、その昔500アバルトの高性能版として存在したことはご存知だろう。
グランデ・プント・アバルトの心臓部は、プント1.4 16V SportのDOHC直列4気筒をIHI製固定ジオメトリーターボで武装して、いっきに155psまで出力をアップさせたものだ。ユニークなのはオーバーブースト・ボタンが備わることで、最大過給圧は通常1.1barのところオーバーブースト時は1.6barまで高まる。これは3000rpmから作用してボタンを押している間、最大トルクを21.0mkgから23.5mkgへ増強させるのだ。同時に電動パワーステアリングへも作用して、ギアリングが速まったかのようなスポーティな操舵感を与えるセッティングに変化する。
試乗はバロッコのテストコースで行なわれたので、日本の一般道でしか乗ったことのない標準型と比較することは難しいが、前スプリングが20%高められて車高も10mm低くなり、またスタビライザー径もアップ(19mm)、ダンパーはイタリアのCofap製に変更されているという足回りは、それでもプント本来の持ち味であるソフトな当たりと、ストロークの長さを失っていないのが嬉しい。大きめの姿勢変化、しかしそうすることで4輪のグリップを稼ぐセッティングは相変わらず貫かれている。
標準型と異なるとすれば、よりダンピングが効かされたことで、ネットリと油の中を泳ぐような挙動となってコントロール性が上がっていること。ただしステアリングの反応を闇雲に速めるような愚は冒していないから、ご安心を。最高速208km/hで、0−100km/hを8.2秒でこなすこのモデル、サーキットで全力疾走させても破綻を来すことのない、健脚を手に入れたといえるだろう。
覚悟の必要な“エッセエッセ”
刮目すべきは155psターボ・ユニットで、あの自然吸気版の非力感が微塵もなくなったことは精神衛生上よろしい。1800rpm辺りから過給圧の目盛が動き出すのだが、3速800rpmでも何とか発進できるほどのフレキシビリティを有する。3000rpmからのトルクの湧出は頼もしく、これならばもう車内で身体を前後に揺らして“漕ぐ”必要もない。6500rpmのリミットまで活発に吹け上がる。
180psを得ている“エッセエッセ仕様”にも1周だけ試乗を許された。こちらはターボを大型のギャレット製に代えて最大過給圧を2.1barまで高めた仕様で(オーバーブースト時は2.6bar)、マフラーもアンサ製となってスロットルを戻すと一瞬、パパッとアフターファイアするほどのヤル気満載の仕様なのだ。車高はさらに20mm落とされ、また18インチ・タイアを装着するため155psバーションとはうって変わって、ステアリングの僅かな動きも見逃さずにノーズが左右に動くといった、キビキビとした挙動を信条とするタイプ。ただ、サーキットへの取り付け道路を走り出しただけで、もうハーシュネスがキツイことがわかるだけに、これを一般道で使用するには、それなりの覚悟を要しそうだ。グランデ・プント・アバルトを購入後、1年もしくは2万km以内ならば、アバルトの指定工場でエッセエッセ・キットは装着できるが、キット価格は5000ユーロ(約81万円)というから、やはりこの点でも人を選ぶだろう。いずれにせよ、大きく仕様が異なるだけに気になる2モデルである。
(文=大谷秀雄/写真=Fiat Group Automobiles Japan/『CAR GRAPHIC』2007年12月号)

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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