スバル・インプレッサWRX STI(4WD/6MT)【試乗記】
満を持す 2007.11.23 試乗記 スバル・インプレッサWRX STI(4WD/6MT)……365万4000円
レギュラーモデルに遅れて登場した、「インプレッサ」の最強バージョン「WRX STI」。日常の足としても使えるのか? 一般道でテストした。
待ってました!
インプレッサシリーズが3代目にフルモデルチェンジしたのが2007年6月。それから待つことほぼ5か月、東京モーターショーのステージで華々しいデビューを飾ったのが、シリーズの看板モデル「インプレッサWRX STI」である。
その姿を見て、新型インプレッサに抱いていたモヤモヤがすっと消えたような気がした。4ドアセダン(2ドアやワゴンもあったが)から、リアオーバーハングを切り詰めた5ドアハッチバックに転身を図った新しいスタイルには、爽やかさを覚える一方、なんとなく物足りなさを感じていた。しかしWRX STIは、大きく膨らんだ前後フェンダーに加えて、ボンネット、フロントバンパーサイド、フロントフェンダー後端にそれぞれ設けられた開口部、そして大型のリアルーフスポイラーなどにより、アグレッシブに仕上げられたエクステリアがキマっている。むしろこのWRX STIのデザインが本来の姿ではないのか? と思えるくらいだ。
発売時期をズラしたのは、ファンを焦らすためではなく、あくまでクルマの熟成を図るのが狙いだったとスバルの開発陣は話すが、いずれにせよ5か月近く待っただけのことはありそうだ。
ワイドボディに秘められた闘志
新しいWRX STIは、旧型に比べて、ホイールベースは長く、前後オーバーハングは短く、そして、前後トレッドをワイドにしたのが特徴である。具体的に見ていくと、ホイールベースを85mm伸ばしながら(2625mm)、前後のオーバーハングはそれぞれ15mm、120mm削り取ることで、全長を50mm短い4415mmに収めている。また、WRX STIでは、標準のインプレッサよりも全幅を55mm広げることにより(1795mm)、前後トレッドは旧型比で40mm、45mmアップの前1530mm、後1540mmまで拡大。これらサイズの見直しにより、ハンドリングの向上を目指したという。
搭載されるエンジンは、2リッター水平対向4気筒DOHCターボのEJ20で、旧型とボア×ストロークや圧縮比は変わらず。最大トルクこそ43.0kgm/4400rpmと同じ数字を掲げているものの、電子制御スロットルの採用やターボのコンプレッサー形状の見直し、インタークーラーの容量アップ、吸排気バルブの連続可変タイミングコントロール「デュアルAVCS」の採用で、トルク特性を改善。最高出力は308ps/6400rpmをマークする。
さらにWRX STIでは、アクセルペダルの操作に対するエンジンのレスポンスをドライバーが選べる「SI-DRIVE」を搭載する。
組み合わされるトランスミッションは6段マニュアルのみ。駆動方式はもちろんフルタイム4WDで、センターデフにはDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)を採用した。基本的なトルク配分は前41:後59となり、センターデフの差動制限力を3つのオートモード、または、6段階のマニュアルモードのなかから自由に選べるのもWRX STIならではの機能である。
大人の眺め
そんなWRX STIを一般道で試乗した。試乗車は18インチタイヤを履く標準仕様車で、価格は365万4000円。追加装備はディーラーオプションのオーディオくらい。アルカンターラと本革が組み合わされた専用のバケットシートに収まってまず気づくのは、視界がすっきりしたこと。旧型では、ボンネットに設けられた大型のエアインテークが前の視界を、またリアスポイラーが後ろの視界を遮っていたのだが、新しいWRX STIではボンネットのエアインテークは控えめになり、またリアはスポイラーがルーフに移ったことでその存在を意識せずに済む。おかげで、見やすくなったのは確かだが、それを寂しいと思うファンは案外少なくないかもしれない。
視線をメーターパネルに落とすと、標準のインプレッサとは異なり、タコメーターが真ん中にドーンと構えるレイアウトに変わっている。文字盤の照明もレッドになり、レッドゾーンの8000rpmあたりに「STI」のロゴがあしわられるなど、うれしい演出が各所に見られる。ただ、ダッシュボードまわりの質感は300万円台後半のクルマとしてはやや寂しい。「速けりゃ文句ないでしょう?」という気持ちもわかるが、開発陣もこれで満足しないでほしい。
洗練された走り
例によって、少し下を向いたスタートボタンを押してエンジンを叩き起こし、常識的な重さのクラッチをつないで試乗を開始する。アクセルペダルを軽く煽ると、フラット4は旧型よりも明らかにスムーズに回転を上げ、それに伴い奏でられるボクサーサウンドも心地良い成分だけが控えめに耳元に届く印象。荒々しさは微塵もない。一方、アクセルペダルを大きく踏み込めば、3500rpmを超えたあたりから勢いづき、一気にレブリミットの手前まで駆け上がって、気持ちのいい加速を見せてくれる。ショートストロークのシフトレバーを操り、高回転をキープしながら走るのはまさに快感だ。
「レガシィ」で採用実績のあるSI-DRIVEは、3つのモードを持つ。シフトレバー下のスイッチをいじりながら試乗してみたが、燃費重視のIモードでももどかしさはなく、Sモードとの差は比較的小さい。さすがにS#モードを選ぶと明らかにレスポンスはアップするが、ふだん走るにはIモードで十分だと感じた。
足まわりは、インプレッサS-GTの快適さから一転し、スポーツモデルにふさわしいレベルに締め上げられていて、一般道ではそれなりに路面からのショックを伝えてくるが、まあ我慢できる。一方、ワインディングロードでは、そのぶん余計な動きが抑えられ、コーナリング中の姿勢も安定している。ライバルの新型「ランエボ」ほどのシャープさはないけれど、コーナー入り口での動きは実に軽やかで、リアの安定感がアップしたこともあってコーナリングスピードは自ずと上がってしまう。
短時間の試乗で感じたのは、新しいWRX STIがエンジン、足まわりともにグンと洗練されたこと。そのぶん少しダイレクト感が失われたようにも感じるが、スポーツ走行だけでなく日常の足としても十分使えるクルマに仕上がっているのは確か。用意されるのがマニュアルトランスミッションだけとはいえ、シリーズ中、最も魅力的なモデルと断言できる。
(文=生方聡/写真=郡大二郎)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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