サーブ9-5 エアロ(FF/5AT)【ブリーフテスト】
サーブ9-5 エアロ(FF/5AT) 2007.07.19 試乗記 ……562.0万円総合評価……★★★
モデルチェンジで印象が変わった、「サーブ」のフラッグシップ「9-5」。スポーティバージョン「エアロ」に試乗した。
印象的なフロントマスク
2006年4月から日本でも販売されている最新の「サーブ9-5」は、旧型に比べ格段にアグレッシブになったフロントマスクが大きな特徴。とくにヘッドライトのデザインが表情に力強さを与えるからか、「ずいぶん変わったなぁ」と思う人は多いだろう。そういう意味では旧型から新型への“イメージチェンジ”は大成功だったということができる。
しかし、このイメージチェンジはフルモデルチェンジによるものではなく、いわゆるビッグマイナーの一環。中身のほうは1997年デビューの9-5をベースに、足まわりのセッティングを見直すなどしてバージョンアップが図られている。それでも設計の古さは隠せず、パワフルなエンジンにシャシーが追いついていない印象もあった。
その一方で、9-5の持つユルさが街乗りには意外に好ましい感じもあり、それを狙って手に入れるなら、案外いい買い物になるかもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
サーブ9-5のデビューは1997年。翌の8年にワゴンが追加。
2006年のビッグマイナーチェンジで内外装が大きく変更された。ヘッドランプとフロントグリルの造形を連動させ、印象はよりダイナミックに。リアバンパー形状はボディと一体感をまし、新意匠のリアコンビネーションランプとあいまって快活な印象となった。
インテリアは、ダッシュボードやフロア、シフトノブまわりのパネル類をブラックで統一した「ブラックルームインテリア」コンセプトを導入したことが新しい。ダッシュパネルやドアモールはグレードごとに異なるモチーフを採用し、差別化を図った。
ほかに、「サーブインフォメーションディスプレイ(SID)」を採用したメータークラスターや、ダイヤル式エアコンパネルを採用するなど、機能性も向上した。
(グレード概要)
テスト車「エアロ」と、標準モデル「アーク」がラインナップされる。エンジンはどちらも2.3リッター直4ターボ。チューンによって260psと185psに差別化される。トランスミッションは、どちらも5AT。
エアロはスポーティ仕様。フロントシートヒーター付きスポーツレザーシートやステアリングシフト付スポーツレザーステアリングホイール&シフトノブ、ティンテッドクローム調パネル、Harman/Kardon社製サウンドシステムなどが標準装備されるほか、スポーツサスペンションやエアロキットが装着される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ドライバーを囲むようにデザインされたインパネがまさにサーブ。マイナーチェンジではダッシュボード上やシフトレバーまわりをブラックで統一する一方、メタル調のパネルを配することでスポーティな雰囲気を漂わせている。ノブを360度動かすタイプのエアベントも個性的で、さらに、夜間、スピードメーター以外の照明を落とす「ナイトパネル」も健在だ。オーディオやエアコンのデザインが色遣いを含めて多少野暮ったく思えるのが惜しいところ。
(前席)……★★★
運転席のドアを開けると、サイドサポートとクッションの間だけ明るい色を配したツートーンのレザーシートが出迎えてくれる。座ってみるとやや硬めではあるが、サイドサポートのタイトさは適度だ。例によってキーシリンダーがセンターコンソールがあるので、乗り換えてしばらくは戸惑うことになるが、これもまたサーブ流である。
ステアリングホイールは9-3同様、グレーのレザーとシルバーのプラスチックで構成される若々しいデザイン。左右スポークの上にはステアリングシフト用のスイッチがあるが、シフトレバーをマニュアル位置に動かさないと使えないのはちょっと不便。シフトレバー上部にスポーツモードの切り替えボタンが付くデザインはオペルの名残だ。
(後席)……★★★
後席に腰を下ろすと、お尻を落とすように座るポジションに多少違和感を覚えたものの、おかげでヘッドルームには十分なスペースがあり、また、足元にも余裕が感じられる。ただ、全長が4855mmあることを考えるとやや物足りない。
乗り心地は、前席に比べで落ち着きが足りず、路面によってはショックが伝わってくることもあった。
(荷室)……★★★
奥行き100cmほどの荷室は、全長からすればとくに大きいとはいえないが、高さは50cmと十分だし、トランクスルーやダブルフォールド式のリアシートを採用するおかげで機能性は高い。リアシートのクッションを起こしてシートバックを倒せば、ほぼフラットなスペースが現れるのはうれしい点。この状態なら荷室の奥行きが170cmまで拡大するから、大抵の荷物は収まるだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
試乗した9-5エアロのエンジンは、2.3リッター直列4気筒にハイプレッシャーターボを与えた高性能版で、最高出力260ps/5200rpmは9-3の2.8リッターV6ターボの実力を上回るものだ。低回転域では排気量以上の余裕を感じ、ターボ臭いところもないのだが、アクセルを踏み込むと、一呼吸おいてトルクが勢いよく湧き出してくる印象。ひとたび加速の態勢に入れば、予想外の速さに驚くだろう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
260psのハイプレッシャーターボエンジンと専用スポーツシャシーが与えられたという9-5エアロだが、乗り心地はいまどき珍しいくらいマイルドで、身構えて乗ると肩透かしを食らうほどだ。一般道では横揺れで気になることもあるが、十分に快適なレベル。ただ、ボディ剛性はさほど高くなく、タイヤが拾ったショックをフロアに伝えてくるあたり、ひと昔前の設計という印象だ。
高速を100km/h程度で巡航する場面では、落ち着いた挙動を見せ、フラット感もまずます。さらにスピードを上げるとピッチングが目立ってくるが、日本で使うぶんにはそれほど不満は感じないだろう。
ハンドリングはサーブらしいニュートラルなもので、回頭性も悪くないが、260psのハイパワーを持てあまし気味。もう少しスポーティな味付けでもいいかと思う。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年5月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:6353km
タイヤ:(前)225/45R17(後)同じ
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(2):山岳路(7)
テスト距離:502.9km
使用燃料:54.0リッター
参考燃費:9.3km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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