(写真は4WDモデル:価格=166万6500円/装着オプション:GパッケージI+CパッケージI+HIDプロジェクターロービームランプ+ゴールドウェザーパッケージ=44万6250円)
スバル・インプレッサ15S(FF/4AT)/20S(4WD/4AT)【試乗記】
なかなかの優等生 2007.06.27 試乗記 スバル・インプレッサ15S(FF/4AT)/20S(4WD/4AT)……151万2000円/236万2500円
7年ぶりのフルモデルチェンジで3代目となった「スバル・インプレッサ」。
5ドアハッチのニューモデルに試乗。自然吸気エンジンモデルを試す。
起承転結
「4ドアセダン+ショートワゴン」というこれまでのラインナップから、(日本では)5ドアハッチバックのみの設定へと驚きのモデルチェンジを行った「スバル・インプレッサ」。ヨーロッパCセグメント車への対抗意識をあらわにしたかのモデルチェンジは、同時に、日本市場でより幅広いユーザー層へのアピールを狙ったものでもあるという。
WRC(世界ラリー選手権)での活躍などで、コンペティティブなスポーツモデルというイメージを確立させたこれまでのモデル。一方でそうしたイメージは、女性ユーザーに対する敷居を高めてしまうといった、販売戦略上は必ずしもプラスに作用しない部分もあったそう。
それゆえ、「若い男性向けモデルというイメージを打破し、“スバル・ラインナップにおける中間車種”というポジショニングへの原点回帰を図ったのが新型」とスバルは説明する。これまで3代のインプレッサのなかでは、「起承転結の”転”に相当する」というのが、開発責任者によるコメントである。
しなやかで快適
新型の自然吸気エンジンモデルは、2リッターの排気量から140psを発生させるSOHCユニットを積む「20S」と、1.5リッターの110psツインカムを搭載した「15S」の2グレード。
「水平対向エンジン+4WDシャシー」という基本的なレイアウトはもちろん新型でも変わらない。が、過去の実績からすると、実は台数上の“売れ筋”は1.5リッターのFFモデルであったりする。
というわけで、今回も「15S」には4WDと並んでFFモデルを設定。シリーズ中で、再び最量販を狙う。
そんな前輪駆動方式を採用した「15S」で走りはじめてみると、「加速に力強さは感じないものの、しなやかで快適そのもののフットワークテイストには感心」という印象。
ホイールベースが延長されたため、後席の足元空間はなるほど従来型とは比較にならない広さ。後席の居住性が向上したのはいいのだが、そこに用意されるシートベルト・バックルが自立式ではないため、装用の際には必ず両手を必要とする。そのうえ、センター席にはそもそも2点式シートベルトしか用意されない。残念至極だ。
心配と疑問
「15S」から「20S」へと乗り換えても、フットワークのしなやかな印象は同じ。どうやら新型インプレッサの技術的な要は、新設計・新採用のリア・サスペンションにあると実感する。
「15S」FF仕様と比較すると、80kgほど重いものの、そんなウェイトハンディは30psと4.3kgmの出力アップで軽々帳消し。それどころか、動力性能に関してずっと余裕が大きく感じられる。500ccという排気量の差からすれば当然か。
ただし、いまどき2リッター車のATが4段というのは、販売上、大きなマイナスだろう。どうやらスバルでは、現在新型のCVTを鋭意開発中らしい。今回のインプレッサにも、モデルライフ半ばでそれが採用される可能性は高い。
というわけで、最新のモデルらしく「なかなか優等生に仕上がっている」のが、自然吸気エンジン搭載の新型インプレッサの印象だ。
かくして“普通のモデル”方向への軌道修正を図ったニューモデル。より大規模で、販売力も上まわるさまざまな“大手メーカー”の作品と、より直接的な戦いを強いられることになった。その点について、個人的には「心配および疑問ナシ」とはしないのであるが……。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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