ホンダ・シビック2.2i-CTDiエグゼクティブ(FF/6MT)【海外試乗記】
ジャパニメーションカー 2007.03.10 試乗記 ホンダ・シビック2.2i-CTDiエグゼクティブ(FF/6MT)ってなわけでドイツ半在住の小沢が送るヨーロッパ直行便インプレ第2弾は「ホンダ・シビック」のディーゼル。そ、日本で売られてない、ヨーロッパ専用ボディのシビック・ハッチバックに乗ってきました。
プレーンなだけじゃ売れない時代
このクルマのポイントはヒジョーにカンタン。普通のシビックじゃいまさら売れないってとこです。個性が強かった初代モデルならともかく、最近のホンダ車は正直クセがなさ過ぎる。
確かにホンダエンジンは良く回るし、普通に便利で美しいクルマだ。アメリカじゃブランドイメージも高いし、そのデザインテイストと相性がいいのか、相変わらずの人気だけど、ヨーロッパじゃその手のライバルが沢山存在する。
「VWゴルフ」「プジョー206&207」」「ルノー・メガーヌ」、さらにオペルにトヨタにスズキと、ハッキリいって埋没してしまうのだ。個人的には徹底的にF1イメージを生かすか、昔みたいに超インテリジェンスな作りやデザインを採用して欲しいもんだけど、そうそうカンタンにはいかない。
そこでヨーロッパホンダが考えた次善のアイデアが“超ハイテクデザイン”だ。もしくは機動戦士ガンダムのような“ジャパニメーションデザイン”といってもいい。要するにハッキリとニッチ(スキ間)狙いに切り替えたってわけ。万人向けのクセのないプレーンなカタチではなく、ある主理想主義的なまでの子供っぽいカタチ。そこには日本のアニメーション、つまりジャパニメーションにも共通するが、コアでディープなファンが存在する。どうせならガツンとそちらを狙おうというわけだ。結果的にF1ファンを捉えることができるかもしれないし。
コンセプトカーのよう
ってなわけで日本の専門誌では「カッコいい」「日本でも売ればいいのに」と言われている、ヨーロッパ専用のシビック・ハッチバック。見て、乗って思いましたね。コイツは日本で売れませんと。ホンダがコッチに日本に持ってこなかったのも良くわかる。過剰にアニメチックなのだ。「トヨタ・カローラ」とシビックが同格に扱われるような国においては、かなりツライはず。とはいえ実は日本市場でも販売状況が厳しいらしいシビック。思いきってコッチを持ってくる手もあったような気もするが……。
それはさておきシビック・ハッチバックはやはり乗り手を選ぶクルマだ。まずはエクステリア。真横から見るとひと筆書きかつエッジの立ったラインで、子供が最初に描くクルマのようだ。ボンネットの角度とフロントウィンドウの角度がほぼ合っていて、それがツルっとしたオシリの丸いラインに自然に繋がっている。全体的にヤシの実のようであり、昔の「いすゞ・ピアッツァ」のデザインをちょっと縮めたような印象も与える。
ディテールまでもアニメチック。最たるものは、左右がキラキラしたガーニッシュで繋がっているヘッドライトだ。ライト自身が反射板を多用したキラキラしたものな上、ガーニッシュも同様の作りだからまるでロボコップの目のよう。
加えて、ドアハンドルはトランプのスペードのマークと矢印を組み合わせたかのようだし、左右リアにある排気管のフィニッシュも極端に平べったい三角形。全体のイメージには合っているが、決して大人っぽいとはいえない。
インテリアも相当にアニメっぽい。インパネ全体がドライバーを包んでくれるような扇形フォルムなのだが、それが二重構造になっている。外側中央にはデジタルスピードメーター、内側中央には巨大なタコメーターが配置されており、乗ったことはないが(当たり前!)まるでアニメのエヴァンゲリオンのコックピットかのような有機的デザイン。タコメーター自体も外側に普通にアナログ針が見えるものの、中央部には車両全体を表すディスプレイが配置されていて、デジタルな装い。個人的に嫌いではないが、苦手な人も多いはず。
さらに内側扇形パネルの両サイドに、大きく丸い空調スイッチや空調吹き出し口が配されているのだが、その周りが非常にツルっとした無垢のパネルになっていて、正直コンセプトカーのようなテイストだ。
とまあ全編こんな風なジャパニメーションデザインになっており、つくづくホンダも思い切った手を打ったなぁと思わされた。
ディーゼルとガソリンのいいとこ取り
ところが走りや使い勝手の部分はヨーロッパ向けだけあって非常にしっかり効率的に作られている。見た目とは全く違う。
コンパクトカーのフィットをベースに作られたというボディは、全長4250mmという平均的なサイズだが、広さは十分。フロントシート、リアシートに大人がマトモに座れ、さらに広大なラゲッジルームも備わる。コカコーラ500mlペットボトル12本入りの箱が、おそらく8箱は詰めるだろう。
乗り心地はしなやかで、ハンドリングも悪くない。ノーブレーキでコーナーに入っていってもステアリングはちゃんと効き、そこでアクセルを踏んでも結構粘る。全高が1460mmと低くないわりにロールも少ない。
なにより驚いたのがエンジンだ。ヨーロッパに置けるホンダの主力エンジンで、「CR-V」や「アコード」にも搭載されている2.2リッター直4の直噴ディーゼルターボなのだが、これがまたデキが非常にいい。
レブリミットは4500rpmと特別高くはないが全体的にレスポンスが良く、なおかつトルクが太い。2000rpmもあれば十分なパワーを発揮し、そこからすばやく吹ける。
しかもディーゼルならではの粘りもあって、6速2000rpmからでもノッキングせずに十分加速する。唯一、アイドリング時のガラガラ音が多少気になったが、あとはまったく不満なし。というか扱い易くてキモチいい。
ガソリンとディーゼルのいいとこ取りみたいなエンジンであり、これなら日本でも乗りたいなぁと思わされた。
というのもこのエンジン、おもしろい成り立ちを持っている。ホンダは川本信彦前々社長の時代から伝統的にディーゼルエンジンが苦手で、ガソリンエンジンの設計でディーゼルを作ったそうだ。すると両方の特性を持つものができたというのだ。まさに災い転じて福となすというか、ホンダならではの個性が幸いしたのである。なかなかいい話ではあーりませんか!
ってなわけで、見た目アニメチックだが、中味マトモなシビック・ディーゼル。日本で見てみたい気もしなくはありませんな。
(文=小沢コージ/写真=キムラオフィス)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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