シトロエン・クサラVTR(5MT)【ブリーフテスト】
シトロエン・クサラVTR(5MT) 2003.06.25 試乗記 ……199.0万円 総合評価……★★★★帰ってきた大穴
前回のマイナーチェンジと同時に姿を消した「クサラVTR」が帰ってきた。クーペボディのMTなのに、エンジンは普通の1.6リッター。中途半端だと思う人もいるかもしれないが、本国仕様に近いベーシックなMTのおもしろさを味わえる貴重な存在でもある。
DOHC化された1.6リッターの加速は必要にして十分。吹け上がりや音は気持ちよく、なによりもパワーを使い切れる楽しさがある。硬められていない足まわりは、シトロエンらしい乗り心地と予想以上のハンドリングを両立。クーペといえども室内の広さはセダンと同じだ。これで価格は200万円以下。ベスト・クサラであることはもちろん、ベスト・イン・クラスだとも思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
シトロエンのCセグメントを担当するモデルとしてクサラがデビューしたのは1997年。その後2000年と今年2003年にマイナーチェンジが実施されている。ボディはセダン、クーペ、ブレークの3タイプを用意するが、セダンとクーペのルーフラインはまったく同じ。サスペンションはシトロエンお得意のハイドラクティブではなく、通常の金属バネを使う。
(グレード概要)
日本仕様のサクソには、1.6リッターと2.0リッターの2種類の直列4気筒DOHCエンジンが用意される。セダンとブレークはどちらのエンジンも選べるが、クーペは 1.6リッターの「VTR」のみ。エンジンのチューニングは共通だ。トランスミッションは、セダンとブレークがATのみなのに対し、「VTR」はMTだけとなる。 スポーティモデルとエントリーモデルの両方の性格を合わせ持つモデルだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
インパネのデザインはデビュー以来不変。ただし、VTRのインパネはホワイトメーターとシルバーのセンターパネル/助手席側ガーニッシュが特徴で、スポーティな雰囲気を演出している。オートエアコン、キーレスエントリー、4エアバッグなど、装備はひととおりそろっている。センターパネル下側にあるパワーウイン ドースイッチはやや使いにくい。
(前席)……★★★
ボディカラーによって赤と青が使い分けられるファブリック張りのシートは、セダンやブレークと比べるとクッションが薄く、かための座り心地をもたらすが、形状がいいので疲れにくい。
(後席)……★★★
クーペとはいっても全高はセダンと同じなので、長いドアと助手席のウォークイン機構を使っての後席へのアクセスは楽。スペースはこのクラスの平均レベルで、大人が座っても問題ない。クッションは前席よりも厚く感じるぐらいで、座り心地は快適。中央席にも3点式シートベルトとヘッドレストが用意されるなど、安全性に対する配慮も万全だ。
(荷室)……★★★★★
荷室の容量は後席を立てた状態でも408リッターと、300リッター台前半にとどまるライバルを大きく引き離す。奥行き、深さ、幅、どれをとっても申し分のないスペ ースだ。なかでも、凝ったリアサスペンションのおかげで、サスペンションの出っ張りがまったくないのがいい。リアシートは、座面を起こしたあと背もたれを倒し込むダブルフォールディング方式だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.6リッターエンジンは、ATとの組み合わせとなるセダンやブレークでは、アクセル全開となる場面も多かったが、トルコンの滑りがないMTのVTRはそんなことはなく、ペダルの踏み込み量に比例した、スポーティな加速を味わえる。爆発力はないがこれで十分だ。滑らかな吹け上がりと4000rpmから上での心地よいサウンドは、なかなかスポーティに思えた。シフトレバーの動きは軽く、スッスッと操作できる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
まず感じるのはボディ剛性の高さ。タイヤはパワーを考えれば太めだが、低速でのゴツゴツした突き上げ感はほとんどない。速度を上げたときのしっとりした乗り心地はいかにもシトロエンだ。コーナーではこの足まわりがしっかりと路面に接地してくれるおかげで、かなりのペースで走ることができる。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2003年5月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:−−
タイヤ:(前)195/55 R15(後)(いずれもミシュラン・パイロット・プライマシー)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):山岳路(9)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
ホンダ・スーパーONE(FWD)【試乗記】 2026.6.15 ホンダからアグレッシブなキャラクターの新型電気自動車(BEV)「スーパーONE」が登場。往年の「シティ ターボII」を思わせるコンパクトなBEVは、先達(せんだつ)に負けない刺激を持ち合わせているのか? 気になる走りを、箱根のワインディングロードで確かめた。
-
ディフェンダー110ハードトップX-DYNAMIC SE D350(4WD/8AT)【試乗記】 2026.6.13 写真を見ていつもの「ディフェンダー」とはどこか違うと思われた方は鋭い。このクルマは1ナンバー、つまり商用車登録の「ディフェンダー・ハードトップ」である。全長約5mのボディーに備わるシートは前の2座のみ。広大な荷室を使いこなす生活を思い描いてみた。
-
キャデラックCT5スポーツ(4WD/10AT)【試乗記】 2026.6.12 アメリカのプレミアムブランド、キャデラックが擁する4ドアセダン「CT5」。その最新モデルに試乗する機会を得た。今や“上質な4ドア”というだけでも貴重な存在だが、さらにCT5には、ジャーマンスリーとは趣の異なる個性が確かに宿っていた。
-
メルセデス・ベンツGLC400 4MATIC with EQテクノロジー(4WD)【海外試乗記】 2026.6.11 「メルセデス・ベンツGLC」のモデルラインナップに電気自動車版の「GLC400 4MATIC with EQテクノロジー」が仲間入り。システム最高出力は489PS、一充電走行距離は700km超と、まず間違いのなさそうなスペックが示されている。本国ドイツで仕上がりを試した。
-
マツダ スピリット レーシング・ロードスター(FR/6MT)【試乗記】 2026.6.10 マツダ スピリット レーシングを象徴するハードコアモデル「ロードスター12R」と同時に発表された、台数限定2200台の「ロードスター」に試乗。12Rとの比較を交えながら、最高出力184PSの2リッター直4エンジンがもたらす走りの印象を報告する。
-
NEW
自動車メーカーにとってBEV開発は「経営のお荷物」なのか?
2026.6.17デイリーコラム自動車メーカーによるBEV計画見直しの発表が相次いでいる。事業環境が大きく変わっているのは確かだが、メーカーにとってBEVは「できることなら手がけたくない」「隙あらばやめたい」商品なのだろうか。国内メーカーの動向から考えた。 -
NEW
第116回:激論! BEVスーパースポーツ(前編) ―株価を暴落させた「フェラーリ・ルーチェ」のカーデザイン―
2026.6.17カーデザイン曼荼羅フェラーリが、メルセデスAMGが、立て続けに電気自動車のスーパースポーツを発表! 特に注目を集めた……というか物議を醸したのが「フェラーリ・ルーチェ」だ。株価の急落まで引き起こしたいわくつきの造形を、カーデザインの識者と考察する。 -
NEW
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)【試乗記】
2026.6.17試乗記「RAV4」は世界で年間100万台以上が販売されるトヨタ屈指の売れ筋モデルゆえに、最新の技術や装備がこれでもかと詰め込まれている。販売拡大が見込まれるプラグインハイブリッド車にそれが顕著だ。「Z」グレードの仕上がりをリポートする。 -
NEW
ベスパGTSスーパー300(CVT)
2026.6.17JAIA輸入二輪車試乗会2026今年で誕生80周年を迎えたベスパ。その上級モデルである「GTSスーパー300」に試乗した。デザインこそ伝統を受け継いでいるように見える一台だが、走りのほうはどうなのか? イタリアンスクーターの名門ならではの、アダルトな魅力をリポートする。 -
NEW
名門の栄光と苦悩 「ヘリティッジ・ハブ・イタリー ASIベルトーネ・コレクション」より
2026.6.16画像・写真自動車史を飾るベルトーネの作品が一堂に集結。伊トリノの自動車博物館「ヘリティッジ・ハブ・イタリー」に開設された「ベルトーネ・コレクション」を、大矢アキオが写真で紹介。そこからは、華やかなだけではないカロッツェリアの苦闘がしのばれるのだった。 -
開発車両の公道テストに“目立つカムフラージュ”をなぜ使う?
2026.6.16あの多田哲哉のクルマQ&Aごくたまに公道で、派手なカムフラージュ柄で擬装している開発車両に出会うことがある。かえって目立つようなカラーリングが採用されているのはなぜなのか? 元トヨタのチーフエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。
