シトロエンC4 1.6(4AT)/クーペ2.0VTS(5MT)【試乗速報】
ハイドロだけがシトロエンじゃない 2005.04.29 試乗記 シトロエンC4 1.6(4AT)/クーペ2.0VTS(5MT) 2005年6月に発売予定のコンパクトハッチ「シトロエンC4」。「クサラ」の後継モデルとなる新型に、『webCG』本諏訪裕幸が試乗した。強豪へ、2枚の挑戦状
「C4はシトロエンのメイン車種になります」
と語るのは、シトロエンジャポン広報氏。
日本市場で「C2」「C3」「C5」とラインナップをそろえるシトロエンが、「クサラ」の後継車種としてリリースするクルマが「C4」。来年半ばには上級サルーン「C6」も登場し、2〜6が出そろうことになる。(なお、本国には「C1」「C8」もある)C4は、2004年9月のパリサロンで公開され、同年11月には欧州での販売が開始されている。
C4が参入するクラスは、「VWゴルフ」をはじめ、「プジョー307」「フォード・フォーカス」「ルノー・メガーヌ」「オペル・アストラ」などの強豪がひしめく。そこにC4が出した挑戦状は、ちょっとズルいが2枚ある。クーペとセダン。2種のボディバリエーションは、リアやサイドから眺めると全く別なクルマのようだ。プラットフォームは「プジョー307」と同型が用いられ、ディメンションは全長×全幅×全高=4260(クーペは4275)×1775×1480mmとなるが、室内容量は変わっていないという。日本仕様に搭載されるエンジンは3種類あり、2リッターの直4が2種(143psと180ps)と1.6が用意される。
とまどうステアリング操作
試乗会では、セダンのベーシックグレードと、スポーティな「クーペ2.0VTS」に乗ることができた。
流麗なボディデザインに引き寄せられるかのようにクルマに乗り込むと、まず個人的に一番気になっていたインテリアをチェックする。
「クサラ」もそうだが、最新モデルの「C2」「C3」ともに内装の質感に関してはあまり褒められたものではなかった。そこにきてこのC4、インテリアの質感向上には目を見張る。ダッシュボードの樹脂やスイッチなどの感触も気持ちよい。室内に入ると誰もが感じる室内の香り。これは吹き出し口の横に内蔵される、アロマ内蔵のエアコンのせいだ。
第一印象はかなり良い。これは購入に結びつきやすい、重要な要素である。
インテリアで一つのウリとなるのが、操作をしてもセンター部分が固定されるというステアリング。スイッチを集約して、走行中の使い勝手を向上させたと謳う。とはいうものの、実際に走り出してみると、特別に使いやすいということはなかった。
それよりも気になったのは、走行中にちょっと油断すると、ステアリングがどこに向いているかわからなくなることだ。スポークやグリップ部分の太さでかろうじてわかるものの、多少とまどってしまう。主にデザインというか、話題性のためなのか、とも思った。
が、気がつかないところで大きなメリットがあった。それはステアリングに収納されるエアバッグが、衝突時の最適形状にセッティングされていること。これは、エアバッグが常に同じ向きで射出されるために可能になった。こちらは説得力がある。
ベストバイは1.6セダン
最上級かつスポーティグレードとなる2.0VTSに乗り込む。シリーズ中唯一5段MTが搭載され、スポーティな味付けのサスペンションセッティングがなされているグレードだ。VTSの2リッターエンジンは、無段階可変バルブタイミング機構を備えたハイパフォーマンスバージョンで、180psと21.0kgmを発生。が、いざ乗ってみると、数字から考えるよりは、あまり力強さを感じない。シフトフィールはルーズで、「スポーティ」を念頭に置いて乗ると、多少イメージとのギャップが生ずる。
続けてセダンの1.6。こちらはおそらく販売の主力となるだろう。
運転に関してはステアリング径が大きいわりに、フィールが重たいのが気になった。さらにクサラもそうであったように、回転半径が大きい。細道の市街地などでは多少苦労するかもしれない。Dレンジに入れて停止していると、コラムがブルブル震えるところも気になるといえば気になる。
高速走行などは試乗スケジュールの都合で試せていないが、乗り心地は正直言って2台に大差がない。サスペンション形式はC2やC3と同型式の、前マクファーソンストラット、後カップルドビーム式。C2は“ガチガチ”、C3は“ユルユル”という印象を残していた2台に比べ、C4のセッティングはひたすらマイルドだ。ハイドラクティブではなく、コイルスプリングが用いられたが、素直に乗り心地がいいシトロエンとなった。一番スポーティに味付けられるVTSグレードでも、「硬い」と思うことはないぐらいだ。
さらにどちらのグレードもエンジンの静粛性は高く、内装のクオリティとあわせ、一つ上のクラスに乗っているようだ。
個人的なベストバイは、セダンの1.6。動力性能も不満は無く、乗り心地は良好。ファブリックのシートも悪くない。ちょっと踏んだところから、急に効くようなブレーキタッチは、感触としてはもう一歩ではあったが。
「やっぱりC4だよね」という日
「C4」はシトロエン色が強いモデルだ。「C1」はトヨタ色も入っているし、「C6」は高級車であることを考えると、手が届きやすく味わいやすいシトロエンは最近の作ではこれしかないだろう。
しかし一つわだかまりが残るリポーターは、次の質問をした。
「ハイドロは考えなかったのですか?」と言うと、広報氏は答えた。
「新車を出すとすぐにそう聞かれるのですが、別にシトロエンはハイドロだけを売りにしているメーカーではありません。そのほかにもシトロエンらしい部分は多くあります」
よくよく考えればそうなのだ。特徴的なところに気が向いてしまうが、今作も乗り心地やデザインはまさにシトロエン。恥ずかしい問いを投げてしまったようだ。
モノグラムだけがルイ・ヴィトンじゃないし、清原だけがジャイアンツじゃない。「ハイドロじゃないから……」なんて言っている場合ではない。
「シトロエンはやっぱりC4だよね」は、なかなかわかった人なのかもしれない。
(文=webCG本諏訪裕幸/写真=荒川正幸/2005年4月)

本諏訪 裕幸
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
-
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】 2025.11.25 インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。


































