ジープ・チェロキー“レネゲード”(4AT)【海外試乗記】
ワイルド・チェロキー 2002.11.08 試乗記 ジープ・チェロキー“レネゲード”(4AT) アメリカはモンタナ州ボスマンで、ジープ2003年モデルの試乗会が開催された。自動車ジャーナリストの森口将之が、ジープのニューモデル3車種に試乗。まずは、ワイルドな外観をもつ「チェロキー“レネゲード”」の印象を報告する。![]() |
![]() |
復活の“裏切り者”
2001年デトロイトでデビューした3代目ジープ「チェロキー」は、2002年からわが国への上陸が始まった。低くスクエアなフォルムだった旧型とは対照的に、丸形ヘッドランプを用いた“ジープ顔”と、高く盛り上がった“こんもりルーフ”を特徴とする。従来は、カジュアルな「スポーツ」とドレッシーな「リミテッド」の2グレードだったが、2003年モデルから、3番目のグレードが加わった。
スポーツとリミテッドの間に位置する、新グレードの名前は「レネゲード」。“裏切り者”という意味をもつこのクルマは、ジープのなかでもっともスパルタンな「ラングラー」の前身「CJ-7」に、シンプルなスポーティグレードとして設定されていた。ジープファンには、お馴染みの名前なのだ。
エクステリアは、前後のオーバーフェンダーがボルトオンタイプとなり、ルーフ前端には2個の補助灯を内蔵したライトバーを装着。その後ろにはカーゴバスケットが付き、サイドシルには脱着式サイドステップが装備される。さながら、「アドベンチャーパッケージ」といったところだ。それ以外では、フロントバンパー中央がシルバーの塗り分けられ、専用アルミホイールなどを装着する。かつて出品された、ラングラーの4ドアバージョンのコンセプトカー「ダカール」のイメージを受け継いだとのことである。
キャビンはダッシュボードにアルミの帯が入り、メーターはホワイトタイプとなる。シートは中央部がクロス、サイドがレザーのコンビタイプ。クロスシートのスポーツグレードと、レザーシートのリミテッドグレードの中間であることを意識させる。ライトバーに備わる補助灯のスイッチはダッシュボード前端に配され、ハイビーム時に点灯する。
![]() |
![]() |
オドロキのディーゼル
今回の試乗車は、日本仕様と同じ3.7リッターV6SOHCガソリンエンジンと、4段ATの組み合わせ。ヨーロッパ向けとして用意される、2.8リッター直4DOHC16バルブ・コモンレール式ディーゼルターボ(CRD)搭載モデルもあった。DOHC16バルブヘッドをもち、143ps/4000rpmと34.7kgm/2000〜2400rpmを発するこのエンジンは、デトロイトディーゼル製で、従来の2.5リッターCRDがマニュアルトランスミッション専用だったのに対し、今回はオートマチックのみが組み合わせられる。ATは大トルクに対応する、「グランドチェロキー」用の5段ATが使われた。ジープが北米のみならず、欧州市場も重視していることを実感さるディーゼルモデルだ。3.7リッターV6の210psに、パワーで67ps劣るものの、2.6kgm太いトルクを1400rpm以上低い回転数で発生する。
両エンジンともスムーズかつ静かだが、まわすほど力が出てくるタイプのガソリンV6に対し、CRDはスペック通りの大トルクが自慢。排気量が大きな4気筒ということもあって、音は「ガラガラ」とディーゼルっぽい。しかしターボの段付きはほとんどなく、アイドリング付近から力強い加速を披露する。オンロードでは、5つのギアを持つATのおかげで低回転を保つことができ、リラックスした気分で走れる。オフロードでは、ディーゼルならではの低回転からの厚いトルクの恩恵で、ガソリンモデル以上に走りやすかった。
さらに洗練された乗り味
シャシーは旧型の3倍の剛性をもつ。リアサスペンションはリジッドながら、フロントはダブルウィッシュボーンの独立懸架。ステアリングはラック&ピニオン式と、いずれもジープブランドとして初めて乗用車的なメカニズムを備えた現行チェロキー。オンロードでは、優れた乗り心地を披露する。2003年モデルではダンパーが新しくなり、車高がやや落とされるなどの改良が施された。おかげでオンロードでの快適性はそのままに、ステアリングの反応がよくなり、コーナーでのロールが減るなど、ハンドリングはさらに洗練された。
レネゲードはガソリンV6エンジンとの組み合わせで、2003年初頭に日本へ輸入される予定だ。わが国では四角い旧型のイメージが強いためか、いまひとつ人気が得られないジープ・チェロキー。しかし、オフロードテイストを高めたレネゲードが、現状を打開する起爆剤の役目を果たしてくれるかもしれない。
(文=森口将之/写真=ダイムラー・クライスラー/2002年10月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】 2025.9.15 フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。
-
スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.13 「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”【試乗記】 2025.9.12 レースやラリーで鍛えられた4WDスポーツ「トヨタGRヤリス」が、2025年モデルに進化。強化されたシャシーや新しいパワートレイン制御、新設定のエアロパーツは、その走りにどのような変化をもたらしたのか? クローズドコースで遠慮なく確かめた。
-
トヨタ・カローラ クロスZ(4WD/CVT)【試乗記】 2025.9.10 「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジモデルが登場。一目で分かるのはデザイン変更だが、真に注目すべきはその乗り味の進化だ。特に初期型オーナーは「まさかここまで」と驚くに違いない。最上級グレード「Z」の4WDモデルを試す。
-
ホンダ・レブル250 SエディションE-Clutch(6MT)【レビュー】 2025.9.9 クラッチ操作はバイクにお任せ! ホンダ自慢の「E-Clutch」を搭載した「レブル250」に試乗。和製クルーザーの不動の人気モデルは、先進の自動クラッチシステムを得て、どんなマシンに進化したのか? まさに「鬼に金棒」な一台の走りを報告する。
-
NEW
スズキeビターラ
2025.9.17画像・写真スズキの電動化戦略の嚆矢(こうし)となる、新型電気自動車(BEV)「eビターラ」。小柄でありながら力強いデザインが特徴で、またBセグメントのBEVとしては貴重な4WDの設定もポイントだ。日本発表会の会場から、その詳細な姿を写真で紹介する。 -
NEW
第844回:「ホンダらしさ」はここで生まれる ホンダの四輪開発拠点を見学
2025.9.17エディターから一言栃木県にあるホンダの四輪開発センターに潜入。屋内全天候型全方位衝突実験施設と四輪ダイナミクス性能評価用のドライビングシミュレーターで、現代の自動車開発の最先端と、ホンダらしいクルマが生まれる現場を体験した。 -
NEW
アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】
2025.9.17試乗記最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。 -
NEW
第85回:ステランティスの3兄弟を総括する(その3) ―「ジープ・アベンジャー」にただよう“コレジャナイ感”の正体―
2025.9.17カーデザイン曼荼羅ステランティスの将来を占う、コンパクトSUV 3兄弟のデザインを大考察! 最終回のお題は「ジープ・アベンジャー」だ。3兄弟のなかでもとくに影が薄いと言わざるを得ない一台だが、それはなぜか? ただよう“コレジャナイ感”の正体とは? 有識者と考えた。 -
NEW
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代
2025.9.17デイリーコラムトランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。 -
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。