フォルクスワーゲン・ゴルフGT TSI(FF/2ペダル6MT)【試乗記】
主力に新たな“力” 2007.02.06 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフGT TSI(FF/2ペダル6MT)……330万2000円
フォルクスワーゲンの主力車種「ゴルフ」。全6種類となったゴルフシリーズの最新作、噂の新コンセプトエンジンを搭載した「ゴルフGT TSI」に試乗。その実力は。
噂以上の実力派
わずか1時間の試乗だったが、感服である。VWの新コンセプトエンジン「TSI」を搭載した「ゴルフGT TSI」は驚くばかりの仕上がりで、今後、ゴルフの主力モデルになることを予感した。
TSIは、ターボとスーパーチャージャーというふたつの過給器によって、小さな排気量から大きな出力を得ながら、同時に、排気量相応の低燃費を目指したエンジンである。実際、ゴルフGT TSIに搭載されるTSIエンジンは、1.4リッターの排気量で、最高出力170ps/6000rpm、最大トルク24.5kgm/1500-4750rpmを生みだし、一方10・15モード燃費は14.0km/リッターを実現している。
クルマの概要は、先に公開されたブリーフテストでお伝えしているので、さっそく私の印象を報告しよう。まず驚いたのは、低回転での力強さ。1.4リッターという排気量が頭にインプットされているからだろう、2000rpm以下の力強さは私の想像をはるかに上回っていた。しかも、アクセルペダルに対するレスポンスが実にいい。右足をわずかに動かすと、すぐにフッとクルマが前に押し出される感じ。それは排気量に余裕のある自然吸気エンジンの感覚だった。「2.4リッター並みの性能」というVWの言い分は、誇張ではなかったのだ。
必要なときに必要なトルクを発揮する
もちろん、低回転だけのTSIではない。高速道路の追い越しなど、鋭い加速が必要な場面も得意としている。アクセルペダルを思い切り踏み込むと、シフトダウンが起こり、即座にエンジンの回転ははねあがる。そこはターボの守備範囲ということになるが、ここでも期待を超える力強い加速をともなって、レブカウンターの針はストレスなくレブリミットに向かっていった。
その中間の回転域では、ターボとスーパーチャージャーの両方で過給圧を高めている。その結果、ターボラグとは無縁の素早いレスポンスと豊かなトルクがもたらされる。
つまり、TSIは回転数にかかわらず、必要なときに必要なトルクを発揮してくれるのが特徴というわけだ。しかも、常用する低中回転域で実用的かつ頼もしい。燃費についてはなんともいえないが、面白がって高回転を多用したにもかかわらず、ドライブコンピューターによる表示は9km/リッター台を示していたことを考えると、期待していいのかもしれない。
足まわりに関しては、先のリポートにもあるように、GTIほどではないがスポーティに仕上げられていて、ワインディングロードを気持ちよく駆け抜ける実力を備えている。それでいて快適さが損なわれていないのも、このクルマのいいところだ。
というわけで、ちょっとスポーティなゴルフがほしい人にとっては、まさにぴったりのゴルフGTI TSIである。
どのゴルフを選ぶ?
GT TSIの追加発売にともない、ゴルフのラインアップは価格の安い順から、1.6リッターFSIの「E」(242万円)、2リッターFSIの「GLi」(282万円)、1.4リッターTSIの「GT TSI」(305万円)、2リッターターボFSI(T-FSI)の「GTI」(MT:329万円/DSG:344万円)、「GTX」(371万円)、そして、3.2リッターV6の「R32」(2ドア:423万円/4ドア:443万円)になった。これだけのバリエーションが揃うと、「どれを買ったらいいのかわからない」という人も少なくないだろう。そこで、元ゴルフオーナーでもある私が独断で、お勧めのモデルをアドバイスしよう。
まず、パワーはあまり気にせず、ゴルフらしさ、すなわち、コンパクトなのに大人4人が快適に移動できるパッケージングや重厚な乗り味を手に入れたければ、ゴルフEが断然お勧めである。価格は安いが、ヨーロッパのベーシックな仕様に比べると装備も充実。1.6リッターながら、エンジン性能も必要十分な実力を備えている。ゴルフのなかではもっとも堅実な選択である。
反対に、クラスを超えた動力性能とスポーティさを望むなら、R32という選択肢がある。自然吸気V6エンジンの胸の空くような吹け上がりやレスポンスの良さは、とても魅力的だ。
まだまだ選べます
ワインディングロードやサーキットなどでスポーツドライビングを楽しみたいなら、パワフルなエンジンとスポーティな足まわりを持つGTIがいいだろう。「あのフロントマスクは派手すぎる」という向きにはGTXもある。ただし、GTIとGTXでは足まわりが違い、GTXの場合は足まわりもおとなしいセッティングとなることをお忘れなく。
サーキットを攻めるまではいかないが、スポーティな運転を好むならGT TSIで決まり! 動力性能と快適性がうまくバランスされていて、どんな場面でもストレスなく運転を楽しめるはずだ。充実の装備も魅力である。
そして残ったのがGLi。GT TSIに比べるとエンジントルクは確かに見劣りするけれど、低回転域のトルクは十分だし、アクセルペダルを踏み込めんだときスムーズに回転を上げていくさまは意外にスポーティ。VWの2リッター直4自然吸気エンジンとしては、完成形といっても過言ではない。そのうえ、トルコンATと組み合わされることもあり、クリープやシフト時の滑らかさはDSG以上だ。足まわりは、スポーティなGT TSIに対し、こちらはコンフォート指向のセッティングで、乗り心地が実にマイルド。それでも、高速走行時のフラット感や、ワインディングロードでの軽快感など、ゴルフらしさは失われていない。トータルバランスではラインナップ中トップの実力を誇る。ファミリーユーザーにはGLiをお勧めしたい。ただし、TSIの登場で近い将来ラインナップ落ちは必至なので、「ぜひGLi」という人はこのチャンスをお見逃しなく!
(文=生方聡/写真=菊池貴之/2007年2月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。





























