ポルシェ911タルガ4/911タルガ4S 【海外試乗記(前編)】
華やかさと良心と(前編) 2007.01.04 試乗記 ポルシェ911タルガ4/911タルガ4S2006年冬、「ポルシェ911」シリーズのオープン「911タルガ4」「911タルガ4S」のリリースが各国で始まった。名前のとおり4WD化された新型に、ポルトガルで試乗した。
ポルシェだったらどれにする?
「宝くじが当たったらアレが欲しい」とか「クルマが2台持てるならコレがいい」とか、クルマ好きが集まって買えもしないクルマについて荒唐無稽に語り合うのは楽しいものだ。
もしあなたがスポーツカー好きなら、「ポルシェだったらどれにする?」というテーマで盛り上がったことがあるかもしれない。
新車に限らず中古車やヒストリックカーまで範囲を広げれば選択肢は膨大だから、ここはひとつ、どのボディタイプにするかという話題に絞ろう。
「911」に特別なこだわりはないけれど、興味はあるというスポーツカーファンなら「ひと粒で二度おいしいカブリオレもアリだな」と考えるかもしれないが、純粋な911マニアは「スポーツ性を追求したクーペしかありえない」と断言するに違いない。
最も軽く、最も強固なボディを持つクーペが運動性能の面で有利なのは誰の目にも明らかだ。
タルガならではの贅沢
しかしそんなピューリタンの決意も、我々が訪れたポルトガル南部のリゾートのような広く開けた空の下、新しい「911タルガ」に接すれば揺らいでしまうかもしれない。
クーペ用スライディングルーフの2倍の開口部面積を持つグラスルーフを開け放つのもいいし、ルーフを閉じ風切り音を遮断した室内で、頭上に降り注ぐ陽の光がもたらすウィンターガーデンのようなムードを楽しむことができるのは、タルガならではの贅沢だ。
リアウィンドウが前方を支点に開閉し、テールゲートとして機能することも見逃せない。後席背後にあるスペース自体はミニマムながら、バックレストを倒すことで生まれるスペースは思いのほか広い。数字上は230リッターにすぎないものの、ルーフ近くの高さまで使うとすればそれ以上の使い勝手がある。
開口部が高い位置にあるため重い荷物を積む気にはならないとはいえ、前席を倒しドアから出し入れするよりよほど楽だし、スマートだ。
ソフトトップとポップアップ式ロールオーバー・バーの収納スペースを確保するため、バックレストが垂直に近い角度になってしまった「911カブリオレ」より後席の居住性がずっと高いことも記しておきたい。
タルガの後席はひざ元の余裕こそ皆無だが、頭上は身長171cmの乗員でも辛うじて収まる空間を確保している。ただしリアウィンドウの下に潜り込む仕組みのグラスルーフを開けた状態では、頭上空間が侵食されてしまうことを断っておく。
車重はクーペ+60kg
タルガのルーフ・モジュールはカブリオレのソフトトップ・システムと同様、現在ではポルシェの100%子会社となったCTS社により生産されアセンブリーとしてツッフェンハウゼンのポルシェ・ファクトリーに納入される。
グラスルーフは、厚さ2.6mmの合わせガラス2枚の間に1.1mmの樹脂シートを2枚挟んだ頑丈な構造だが、従来型よりトータルで1mm薄く1.9kgの軽量化が図られている。
いっぽうガススプリングで支持されるリアウィンドウは、厚さ3.8mmの単層安全ガラスとなる。これらを組み合わせたルーフ・モジュールの重量は52kgで、16本のボルトによりボディに固定される。
ルーフ部の重量増に加え、Aピラーに内蔵される30mm径の高張力鋼パイプなど、安全性と剛性を確保するボディ補強が施された結果、「タルガ4」の重量は「カレラ4」と比べ60kg増加し1550kg(ティプトロニックS)に、タルガ4Sは1575kg(同)になった。ボディサイズはクーペとまったく共通で、4427×1852×1310(4S/1300)mmである。
パワートレーンもカレラ4/4Sと変わりはなく、タルガ4の3.6リッターフラットシックスは325ps/6800rpmと370Nm/4250rpm、3.8リッターのタルガ4Sは355ps/6600rpm、400Nm/4600rpmを発揮する。
ギアリングはMT、ティプトロニックSともクーペと同一。発進加速性能は若干重量増の影響を受け、メーカーが主張する0-100km/hのデータはタルガ4ティプトロニックSが5.8秒、タルガ4SティプトロニックSが5.4秒と、クーペに比べそれぞれ0.2秒と0.1秒遅くなるが、0.29〜0.30の空気抵抗係数や前面投影面積は変わらないため、最高速はそれぞれ275km/h、280km/hとクーペと同一の値をマークする。(後編へつづく)
(文=CG田中誠司/写真=ポルシェジャパン/『CAR GRAPHIC』2006年12月号)

田中 誠司
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