ポルシェ911カレラGTS(RR/8AT)/911カレラ4 GTS(4WD/8AT)/911タルガ4 GTS(4WD/8AT)/911カレラ(RR/8AT)
やはりポルシェは“最新が最良” 2024.07.10 試乗記 「ポルシェ911」にいよいよハイブリッドモデルが登場。パフォーマンス重視の「T-ハイブリッド」システムを搭載した「GTS」シリーズは、どのような走りを実現しているのか? 大幅改良を受けた「カレラ」ともども、その仕上がりをスペインより報告する。まずは「GTS」シリーズから
「911 は再び生まれ変わります。おそらく水冷エンジンを採用したときよりも大きなステップなのです」
スペイン・マラガで開催された、ポルシェ911(タイプ992)の後期型(参照)、通称“992.2”の国際試乗会。そのプレゼンテーションの冒頭で、広報担当者はそう述べた。
思えば、ポルシェのスポーツカーはハイブリッドとも無関係ではない。2010年にはタイプ997をベースとしたハイブリッドのレースカー「GT3 Rハイブリッド」を走らせていた。その後、ハイブリッドスーパースポーツカー「918スパイダー」を発売。FIA 世界耐久選手権(WEC)にはプロトタイプレースカー「919ハイブリッド」を投入し、現在もLMDh(ルマン・デイトナ・ハイブリッド)車両の「963」でシーズンに参戦中だ。プレゼンの場でも何か特定の技術についての言及があったわけではないが、今回のハイブリッドシステムはモータースポーツから得た知見をもとに設計したものと紹介されていた。
911というポルシェのコアモデルにハイブリッドを搭載するにあたり、最大の課題となったのはやはり重量だったようだ。1600kgを切ることを開発目標にさまざまなアイデアやアプローチを試み、従来モデルからの重量増は約50kgに収まっているという。ちなみに新型カレラGTSのカタログ上の空車重量(DIN)は1595kg。
なぜGTSからハイブリッドにしたのかという問いには、このような理由を述べた。「GTSはカレラや『カレラS』との差別化が進み、独立性を高めたモデルになっています。911カレラのラインナップにおいて、カレラGTS は最も高性能で最もスポーティーなモデルです。そして地域によって多少の差はありますが、多くのお客さまがカレラSよりもカレラGTSを選択してくださっています。ですからGTSにハイブリッドを搭載して、992.2のはじまりからライフサイクルの全体にわたって運用したいと考えました」
これまでGTSといえば、“遅れて登場する高性能バージョン”という存在だったが、992.2ではそうした扱いを変え、またその性能向上分をハイブリッドでカバーしようというわけだ。システムの名称は「T-Hybrid」で、“T”とはターボの意というから、エコであることよりパワーを付加するものという位置づけなのだ。ニュルブルクリンク北コースでのテストでは、先代モデルのタイムを8.7秒上回る7分16秒934をマークし、0-100km/h加速は従来モデルの3.4秒から3.0秒にまで短縮しているというから、もはやその速さは疑いようがない。
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さらばアナログメーター
試乗のスタート地点であるホテルに用意されたGTSをじっくりと眺めてみる。フロントバンパーの左右に5本ずつ配された縦長のフラップが目をひく。これは内側にも別のフラップが備わっており、ブレーキまわりやアンダーフロアでの空気の整流、またウエットモード時には雨水の流れなども統合制御するという。高速巡航時など必要なパワーが最小限の場合は、フラップを閉めてエアロダイナミクスを最適化。サーキット走行など冷却効果を高める必要があるシーンでは、フラップを開きラジエーターに空気を送り込む。ドライバーが任意で操作するものではなく、あくまで自動で作動する。
フロントまわりをじっと見ていると、何かが足りない気がする。LEDのドライビングライトがなくなっている。新しくなったマトリクスLED ヘッドライトにビルトインされたのだ。リアまわりでは、リアグリルのフィンの数を左右に5枚、計10枚と従来モデルよりも大幅に減らし、よりリアウィンドウと一連のものに見えるようになった。テールランプはポルシェのロゴを囲い込むようにデザインされている。
インテリアは基本的には従来モデルを踏襲する。大きく変わったのは、ドライバーの眼前に最後まで残されていた中央のアナログメーターがなくなり、12.6インチの曲面ディスプレイになったこと。視認性を高め、またハイブリッドシステムに対応する表示を実現するにはこれが必要だったという。レブカウンターを中央に配した、伝統的なポルシェの5連メーターにインスパイアされたレイアウトなど、最大7種類の表示が可能となっている。もうひとつ大きく変わった点は、エンジンスタート/ストップボタンが備わったことだ。992.1では始動時に、キーのかわりにノブをひねる所作が受け継がれていたが、それがなくなった。時代は流れるというわけだ。
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最高出力は541PS、最大トルクは610N・m
パワートレインの中心となるのは、単体で最高出力485PS、最大トルク570N・mを発生する新開発の3.6リッター水平対向エンジンだ。高電圧システムの採用により、エアコンをベルト駆動ではなく電動駆動にすることでコンパクト化。搭載位置を110mm低めたことで、上部にパルスインバーターとDC-DCコンバーターなどを収めている。
これに組み合わせる電動ターボチャージャーも、タービンの数を従来の2つから1つのシングルターボとすることで軽量化を実現。タービンの軸部分に電気モーターが組み込まれており、瞬時にブースト圧を高めることが可能となっている。この電気モーターはジェネレーターとしても機能し、最大11kW(15PS)のパワーを発生する。
ハイブリッド駆動のメインとなるのは8段PDKのケースに組み込まれた永久磁石同期モーターで、アイドル回転数から最高出力40kW(54PS)、最大トルク150N・mでエンジンをサポート。400Vの電圧で作動し、最大1.9kWhの電力を蓄える駆動用のリチウムイオンバッテリーは、もともと12Vのバッテリーを搭載していたフロントトランク内に配置される。いっぽう、12Vバッテリーは軽量化のため薄い板状のリチウムイオンバッテリーに代替され、ボディー後部に搭載されている。
これらを組み合わせたシステムの合計出力は541PS、合計トルクは610N・mとなり、先代比で61PSのアップを果たしている。システムとしては、電動走行するわけではなくプラグインでもない、いわゆるマイルドハイブリッドシステムだ。
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公道で実感した磨きのかかった快適性
最初に乗ったGTSは、オープントップの「タルガ4 GTS」だった。初めて911の“スタートボタン”を押す。GTSだからと身構えていたが、意外と常識的なボリュームの排気音とともにエンジンが始動する。
アクセルペダルをゆっくり踏みこむと、低速域から瞬時に加速する。中央のメーターをよく見れば、回生時にはグリーンの、アシスト時にはブルーのバーの表示が伸びる仕組みになっていた。タービン内の電気モーターも使って回生しているようで、アクセルを踏んでいても回生するシーンがある。また日常走行では2000~3000rpmまではアシストするものの、それ以上の回転域ではエンジンにまかせてアシストをやめるので、メーター内の表示が頻繁に動く。いっぽうで、「スポーツプラス」モードで全開走行を続けるようなシーンでは、可能な限り最大のアシストをするようだ。こうした制御の仕組みはとても複雑で、今回の取材では詳細を把握しきれなかった。ちなみにセンタースクリーンには、バッテリー残量のほか、バッテリー温度、瞬間のエンジン出力、モーター出力を表示することも可能だ。
新開発の3.6リッターエンジンは、4000rpmを超えたあたりから、いかにもポルシェの水平対向6気筒らしい力強い音を放つ。右足に力を込めると7000rpmあたりまでよどみなく吹け上がり、ハイブリッドとも、ターボとも、言われなければわからないかもしれない。それくらいシームレスでスムーズだ。PDKも変速ショックを感じさせず、あっという間に速度が高まる。サスペンションは新しいタイヤ(銘柄は「グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツR」)に合わせて最適化されており、乗り心地もいい。公道を走っているぶんには、よりGTカーとして快適性を高める方向性の味付けだと感じていた。
ポルシェの開発者のひとりにそう話すと、「それだけじゃないよ。ここを走ればすぐにわかるから」と笑う。ポルシェのスポーツカーの試乗会には、サーキットは不可欠だ。舞台は会員制サーキットとして名高いアスカリレースリゾート。全長約5.5kmの本格コースだ。
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走る・曲がる・止まるのすべてがハイレベル
サーキットでは、クーペボディーのカレラGTSと「カレラ4 GTS」、そしてベースグレードのカレラに立て続けに乗る。GTSには、車高を10mm下げたスポーツサスペンションと可変ダンパーシステム(PASM)、そしてこの新型からリアアクスルステアが標準装備となっている。オプションのアンチロールスタビリティーシステムである「ポルシェダイナミックシャシーコントロール(PDCC)」は、ハイブリッドの高電圧システムに統合され、システムの柔軟性と精度が高められた。
スポーツプラスモードでアクセルを全開にすると、息をつく間もなく加速していく。電動化の恩恵はアクセルレスポンスにあらわれており、ペダル操作に瞬時に反応してくれる。回頭性も極めて高く、わずかにステアリングを切り込むだけで向きが変わる。PDCCをオンにしておけばロールも少なく、何事もないようにコーナーを曲がっていく。RRと4WDとの挙動の違いは少なく、4WDだからアンダーステアが強いといったこともない。ニュートラルに旋回し、立ち上がりの際にフロントの駆動力を感じるか否かといったところだ。
ブレーキにはオプションの「ポルシェセラミックコンポジットブレーキ(PCCB)」が装着されていたが、絶大の信頼をおけるタッチと制動力をもって狙った場所にクルマをビタッと止める。聞けば992.1の「ターボS」用のブレーキを使っているそうで、フロントは10ピストン! リアだってそのままフロント用に使えそうなくらいのサイズだ(日本でのオプション価格は157万8000円。クルマが買えそうな値段ではあるけれど、それでも欲しいと思わせられるのがすごい)。
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純エンジン車の「カレラ」も進化
ベースのカレラに乗ると、なんだかホッとした。空車重量(DIN)は、RRのカレラGTSが1595kg、4WDのカレラ4 GTSが1645kgなのに対して、カレラは1520kg。最高出力は394PSと400PSにも満たないし、サーキットスピードで走るとそれなりにロールもする。けれど、やはり軽さを感じるし、それは心理的にも負担が小さい。言い換えれば楽しい。GTSの限界領域はもっともっと遠くにある。先導車付きの走行ということもあり、今回の試乗では体感しきれなかった印象が残った。
サーキットからホテルへの帰路は、「カレラ クーペ」に乗る。事前に日本で992.1のカレラに試乗してから臨んだこともあって、違いがよくわかった。出力としてはわずか9PSのアップだけれど、アクセル操作に対するツキがいい。超低速でモタつく感じがないのだ。また992.1では、登坂をゆっくりと進み、止まるか、動くかといった日常的なシーンでPDKが少しギクシャクすることがあったが、それもない。乗り心地もさらに改善され、洗練されていた。
一部には911のハイブリッド化に関して懸念を抱く向きもあったようだが、心配する必要はなさそうだ。言われなければすごくよくできた自然吸気エンジンだと思う人もいるはず。またカレラか、GTSかについては、これらはそもそも違うものなので、従来どおり、求める速さと予算でお決めになればよいかと。“最新が最良”なんて使い古された表現で申し訳ないけれど、やはり911はとてもバランス感覚に優れたクルマなのだとしみじみ感じた。
(文=藤野太一/写真=ポルシェ/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ポルシェ911カレラGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4553×1852×--mm
ホイールベース:2450mm
車重:1595kg(DIN)
駆動方式:RR
エンジン:3.6リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:485PS(357kW)/7500rpm
エンジン最大トルク:570N・m(58.1kgf・m)/2300-5000rpm
モーター最高出力:54PS(40kW)
モーター最大トルク:150N・m(15.3kgf・m)
システム最高出力:541PS(398kW)
システム最大トルク:610N・m(62.2kgf・m)
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)315/30ZR21(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツR)
燃費:11.0-10.5リッター/100km(約9.1-9.5km/リッター、WLTPモード)
価格:2254万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ポルシェ911カレラ4 GTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4553×1852×--mm
ホイールベース:2450mm
車重:1645kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:485PS(357kW)/7500rpm
エンジン最大トルク:570N・m(58.1kgf・m)/2300-5000rpm
モーター最高出力:54PS(40kW)
モーター最大トルク:150N・m(15.3kgf・m)
システム最高出力:541PS(398kW)
システム最大トルク:610N・m(62.2kgf・m)
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)315/30ZR21(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツR)
燃費:11.1-10.5リッター/100km(約9.0-9.5km/リッター、WLTPモード)
価格:2365万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ポルシェ911タルガ4 GTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4553×1852×--mm
ホイールベース:2450mm
車重:1745kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:485PS(357kW)/7500rpm
エンジン最大トルク:570N・m(58.1kgf・m)/2300-5000rpm
モーター最高出力:54PS(40kW)
モーター最大トルク:150N・m(15.3kgf・m)
システム最高出力:541PS(398kW)
システム最大トルク:610N・m(62.2kgf・m)
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)315/30ZR21(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツR)
燃費:11.0-10.8リッター/100km(約9.1-9.3km/リッター、WLTPモード)
価格:2615万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ポルシェ911カレラ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4542×1852×--mm
ホイールベース:2450mm
車重:1520kg(DIN)
駆動方式:RR
エンジン:3リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:394PS(290kW)/7500rpm
エンジン最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)/1950-5000rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)305/30ZR21(ピレリPゼロ)
燃費:10.7-10.1リッター/100km(約9.3-9.9km/リッター、WLTPモード)
価格:1694万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション/ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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藤野 太一
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