プジョー207 GT(FF/5MT)【海外試乗記(後編)】
すべてが大人っぽくなった(後編) 2006.10.14 試乗記 プジョー207 GT(FF/5MT) 世界的大ヒットとなったプジョーのハッチバック「206」の後継車「207」。BMWと共同開発したターボエンジン搭載のニューモデルに試乗、その走りの印象を報告する。レベルアップしたインテリア
フランス南西部、ピレネー山脈の麓にあるカストルという街の空港で、実車と対面する。
全長はついに4メートル、全幅は日本の小型車枠の1.7メートルを超え、このクラスでは最大級のサイズとなったが、実際にはそれ以上に大きく見える。それだけ存在感のあるデザインということなのだろう。しかし実寸は依然コンパクトであり、狭い山道でも持てあますことはなかった。
インテリアは開放的だ。フロントウィンドウを前に出したことでインパネの奥行きがたっぷりしていることと、プジョーのよき伝統でウエストラインが低く抑えられていることが効いている。
中央と左右のルーバーでプジョー顔を表現したインパネはスポーティな印象で、仕上げは「206」より格段に向上した。装備ではオートエアコンが左右独立タイプになるなど、こちらもレベルアップしている。
試乗車ではハーフレザーとフルレザーが用意されていたシートは、クッションは硬めになったものの、サイズはたっぷりしており、乗り手を包み込むようなやさしいサポート感がプジョーらしい。リアはボディサイズの拡大の恩恵を受け、このクラスでトップレベルの広さをモノにした。
リアだからといってサイズを小振りにすることはなく、クッションの高さや傾きも確保されているから、長時間の乗車でも不満はなさそうだった。270リッターのラゲッジスペースを拡大するための手法が、クッションを起こしてから座面を前に倒すダブルフォールディング方式となっているのは、「205」以来の伝統だ。
5段MTのみのスポーツモデル
プジョーは、ターボエンジンをスポーツユニットと位置付けており、トランスミッションは5段MTのみとなる。軽いペダルと、206よりしっとりしたタッチのシフトレバーを操って走り始める。
ターボは2000回転以下からなだらかに効き始めるので、トルクの段つきを感じるのは発進直後だけ。その後は自然吸気2リッター級のダッシュでぐんぐん速度を上げていく。そのときの静かさとなめらかさは、206に積まれていたエンジンとは別物で、やはりBMWが絡んだエンジンは違うと思ってしまった。
上は吹け上がりの勢いや音からすると、6000rpmあたりまでが実用域。そのかわり、フレキシビリティはすばらしい。高速道路は5段、山道は3段に入れっぱなしで、アクセルを踏み込むだけで必要な加速が手に入る。このあたりも、排気量の大きな自然吸気エンジンのマナーに近い。
207はプラットフォームも206と違う。「1007」やシトロエン「C2」「C3」と同じで、PSAプジョー・シトロエンの「プラットフォーム1」を使う。フロントサスペンションはマクファーソンストラットだが、リアサスペンションはトレーリングアーム+トーションバーから、トーションビーム+コイルに変わっている。
安定性が向上したハンドリング
乗り心地はスポーツグレードということもあって硬め。ガッシリしたボディとの組み合わせはちょっとドイツ車風だが、ショックの角をうまく丸め込んでくれるあたりにはプジョーらしさを感じる。
パワーステアリングは電動式になったが、1007がそうであるように、電動式としては自然な感触。ハンドリングは安定性が向上していて、身のこなしは206ほど過敏ではなくなったかわりに、コーナー途中でアクセルを緩めても挙動は簡単には乱れない。
高速での直進安定性は、速度が上がるほど信頼感が増していく印象だった。
前作206はデザインで売れたといっていい。それゆえにユーザーのなかには、内装などのクオリティに不満を抱く人もいた。よりアグレッシブになった外観に対し、中身はキャビンの仕上げからエンジンの回りかた、ハンドリングのマナーまですべてに大人っぽさを感じる207は、そんなユーザーの声にプジョーが真摯に耳を傾けた結果の作品ということができるだろう。
(文=森口将之/写真=プジョー・ジャポン/2006年10月)
・プジョー207 GT(FF/5MT)(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018726.html

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.20 本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは?
-
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.18 2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。
-
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.4.17 アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
NEW
第868回:ウエット路面での実力は? ブリヂストンの新スタンダードタイヤ「フィネッサ」を試す
2026.4.22エディターから一言2026年1月に発表されたブリヂストンの「FINESSA(フィネッサ)」は、次世代の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する最新のスタンダードタイヤだ。ドライ路面での試走報告に続き、今回は自慢のウエット性能をクローズドコースで確かめた。 -
NEW
日産アリアB9 e-4ORCE(4WD)【試乗記】
2026.4.22試乗記「日産アリア」のマイナーチェンジモデルが登場。ご覧のとおりフロントマスクが変わったほか、インフォテインメントシステムも刷新。さらに駆動用電池の温度管理システムが強化されるなど、見どころは盛りだくさんだ。400km余りをドライブした印象を報告する。 -
NEW
第867回:ハイエースオーナー必見! スマホで操作できる可変ダンパー「KYBアクトライド」を試す
2026.4.22エディターから一言KYBからスマートフォンのアプリで操作できる可変ダンパーシステム「ActRide(アクトライド)」が登場。まずは「トヨタ・ハイエース/レジアスエース」用からの展開となるこのシステムの仕上がりを、実際に試乗して確かめた。 -
NEW
「ノイエクラッセ」は工場も専用 BMWが社運を賭けた最新の設備群を見る
2026.4.22デイリーコラム「iX3」に続いて「i3」も発表され、BMWの「ノイエクラッセ」プロジェクトがにわかに活気づいてきた。クルマが新しいのはもちろんのこと、実はそれに合わせてまっさらな新工場まで用意されている。BMWが社運を賭けたニューモデルはどんな環境で生産されるのだろうか。 -
「洗車でボディーにキズがつく」って本当ですか?
2026.4.21あの多田哲哉のクルマQ&Aマイカーは常にきれいな状態で維持したいものの、クルマ好きの間では「洗車することでボディーにキズがつく」「洗いすぎは害になる」という意見もある。実際のところ、どうなのか? 元トヨタの多田哲哉さんに聞いてみた。 -
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは?































