オペル・アストラ スポーツ(4AT)【ブリーフテスト】
オペル・アストラ スポーツ(4AT) 2001.10.20 試乗記 ……280.0万円 総合評価……★★★イチローではないけれど
新型の4気筒2.2リッターは非常に強力。ビュンビュン走る。テスト車が履いていたタイヤ「ミシュランMXM」の接地感はきわめて心強い。アシもたしかに引き締められている。そういう意味ではなるほど“スポーツ”だ。クルマとしてデキが悪いということはないし、またあからさまな破綻もない。しかし、たとえばルノー・クリオRSのような痛快さをこれに期待してはいけない(それをいったらほとんどのクルマはダメということになってしまうが)。
4気筒NA搭載FF実用車の分野におけるアストラスポーツは、プロ野球選手でいうとかなりオマケしてわりと松井(読売)に近い。が、しかし、イチローでは明らかにない。いやまあ、松井もあれで実は守備とかけっこう上手そうだけど。ちなみに、そのデンでいくとたとえばカローラランクスあたりは二軍以下。所属チームこそジャイアンツだがあまりパッとしない。大器の片鱗は、出る前にはちょっと感じさせたけれど……。閑話休題。
アストラスポーツは、ごくごく普通の気持ちで買ってしまっても痛いメにはあわないだろう種類の“スポーツ”だ。ビシッとした「ドイツ車らしい味わい」や「走りの安心感」あたりが普通のアストラより濃厚だから、むしろ積極的に普通の気分でこれを選んでもいい(それをいったらクリオRSだって普通に乗って痛いクルマでは全然ないわけだけど)。旧型時代の高性能アストラは「乗りアジの洗練度」においてかなりツラいクルマだったが、今回そのへんも特に問題なし。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1997年のフランクフルトモーターショーで姿を現わした2代目アストラ。初代より97mm延長されたホイールベースに、ウェジシェイプ調のボディを載せる。リアにノッチがついた3/5ドアハッチ、4ドアセダン、ステーションワゴンがラインナップされる。派生車種として、ミニバン、ザフィーラがある。
(グレード概要)
日本に入るアストラは、5ドアハッチとワゴン(いずれも1.6/1.8/2.2リッター)、サルーン(1.8リッター)の3ボディ。ハッチ&ワゴンのグレード名は、排気量の小さい順に、「LS」「CD」「Sport」。Sportsは、エコテックユニット最強の2.2リッターツインカム16バルブ(147ps、20.7kgm)を搭載。 ホワイトメーター、フロントスポーツシートが装備され、スポーティ感を高める。アルミホイールは、16インチだ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
イグニッションキーを差し込む穴のすぐ下にハンドルのチルトおよびテレスコピック調整のロック解除レバーがある。というか、キー穴を囲む城壁状の盛り上がりの一部がそのレバーになっている。したがって、慣れればたぶん便利、かもしれない。慣れないと、あるいはそれを忘れていると、思わず左手でハンドルポストの下あたりをムナしくガサゴソ探すことになってしまうが……。
それはいいとして、しかしステアリングホイールの形状はどうもイマイチ。リムの直径がやや小さすぎ、リム自体もやや太すぎる。またリムからスポークにつながる部分のフィット感がよくない。回すのが楽しくない。ゴロンとした、あるいはむくんだような、デリカシーに欠ける造形。このクルマにかぎったことではないが、デザイン巧者のオペルなのだからそのへんも早いうちになんとかしてほしい。
(前席)……★★★★
いかにもドイツ車らしい、バンとした硬さ。衝突対策なのか運転姿勢が微妙にハンドル遠め基調ということはあるが、しかしシートじたいは悪くない。座った瞬間お尻が喜ぶようなものではないけれど、これはこれで正しい。シート全体を動かす、そしてわりと使いやすいレバー式の高さ調整機構もついている。(後席)……★★★
床から高い位置に上体をキチンと起こして座れるのが基本。旧型アストラや現行アストラでもワゴンはそこがバッチリなのに、しかし現行ハッチバックは明らかに着座環境が違う。より低い位置に座らされて、穴蔵のなかに押し込まれたような印象が少々ある。座面のサポート感が希薄になり、姿勢そのものも多少ダラケ系。ヒドいというほどのことはないけれど、実用FF車“メジャーリーグ”の一員としてはいささか残念。ルーフ後端が下り坂になっているに合わせたというのであれば、それはデザインのレベルが低すぎる。
(荷室)……★★★★
床面最大幅110cm、奥行き82cm、パーセルシェルフまでの高さ52cm。キレイに四角く、そしてデカい。リアシートを倒せば、奥行きは約145cmまで広がる。特に驚くようなところはないが、メジャーリーグの一員としてこれなら文句は出ないだろう。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
冒頭にも書いたように、このエンジンはとにかく強力。排気量を問わず活発なオペル製ユニットのなかにあって輪をかけて。ビュンビュン。グイグイ。さながら、散歩の際に飼い主を引っ張りまわす大型犬のごとし。2リッター超の4発にはなかばお約束のバランサーシャフトもちゃんと装着。ゆえにイヤな振動の問題特になし。オートマは、例によって日本人の好みをよくわかった設定。ちなみにアイシン製。全体のギア比は高めだが、そんなものおかまいなしにトルクは強力。いつでもどこでもインスタントに速い。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地は、たしかにカタいといえばカタい。が、他のアストラと較べると動き全体が落ち着きを増していて、むしろかえって一般的かも。ハンドルを切ったとたんにグラッとくるようなイヤ味も希薄になっているし。ミシュランMXMの接地感はヤワではないが、アシやボディが大負けしている印象は別にない。なにより、モノのいいタイヤを履いている充実感が濃厚。ただし、全体としていかにもスポーティな乗りアジという点では、同じアストラでもクーペには一歩ゆずる。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:森慶太
テスト日:2001年8月15日から16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:7516km
タイヤ:(前)205/50R16 87V/(後)同じ(いずれもMIchelin MXM)
オプション装備:サンルーフ(11.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8):高速道路(2)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

森 慶太
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