アルファロメオ・アルファGTV(6MT)【ブリーフテスト】
アルファロメオ・アルファGTV(6MT) 2004.06.03 試乗記 ……520万8000円 総合評価……★★★★★ マイナーチェンジにより、3.2リッターV6エンジンを得た、生粋のイタリアンクーペ「アルファGTV」に、自動車ジャーナリストの森口将之が試乗。同じエンジンを搭載する「147」や「156」の「GTA」と比べるとどうなのか?濃密な官能
クーペとセダンは違う乗り物だということを、「これでもか!」と思い知らされた。いくらセダンをスポーティに味付けしたところで、パッケージングの段階で既にその面を突き詰めたクーペには、ドライビングの楽しさという点ではかなわない。3.2リッターV6エンジンを手に入れた「アルファGTV」に、そのことをあらためて教えられた。
アルファの3.2リッターV6というと、「156」&「147」の「GTA」を思い浮かべる人が多いかもしれない。GTVに搭載されるV6は、それをすこしデチューンしたものだ。
その昔、GTVはGTの高性能版、GTAはそれをもとに大幅な軽量化を施した、レース用ホモロゲーションモデルという位置付けだった。現在のアルファにおいては、そういった“格”の違いは名称ではなく、スペックで差別化されているのかもしれない。
走り始めると、絶対的な加速はともかく、エンジンの存在感はGTAよりこちらのほうが上。しかもシャシーの基本設計は156や147より古いのに、ハンドリングはそれらを凌ぐようにさえ感じる。極端に短いリアオーバーハングは、ボディが自分の背中のあたりで終わるような感触を与え、エンジンと自分だけが疾走するが如き、強烈な一体感を味あわせてくれる。
“FFのフェラーリ”、あるいは“4輪のドゥカティ”とでも呼べそうなパフォーマンスは、スポーツカー以外のなにものでもなかった。スペックでクルマを評価する人たちは、GTAこそが現在のアルファの頂点にあると考えるかもしれない。でもそんな人たちには目もくれず、ひとり、GTVの濃密な官能を味わうというのは、ジウジアーロが手がけた156のスタイリングに負けないぐらいカッコいいのではないか。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1994年のパリサロンでデビューしたスポーツクーペ。スパイダーが2シーターなのに対して、こちらは2+2の4名乗車が可能。1996年1月から日本に導入された。マイナーチェンジの度にエンジン拡大が行われ、2リッターV6 SOHCターボ→3リッターV6 DOHC→3.2リッターV6 DOHCと変遷。2003年6月のフェイスリフトでは、アルファのシンボルである盾型グリルがボンネットからバンパーまで縦に貫くタイプに変更された。同時に走りの面では、駆動力制御を行うASR(アンチスリップ・レギュレーション)システムが追加された。
(グレード概要)
GTVは3.2リッターV6 DOHCエンジン搭載のモノグレード。3リッター時代から6段MTを引き継いだが、右ハンドル仕様は消滅し、現在は左ハンドルのみ。着座位置はマイナーチェンジによってさらに低くされた。レザー内装にはセンターコンソール一体型デザインのオーディオが組みあわせられ、10連奏CDチェンジャー、イモビライザーなどがすべて標準装備される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
ドライバーの目の前に円形のタコメーターとスピードメーターを置き、水温計や燃料計などそれ以外はセンターにまとめ、そこからセンタートンネルにかけてゆるいスロープでつないだ造形は、イタリアンGTらしくスポーティ&セクシー。前回のマイナーチェンジで、センターパネルがシルバーになるなどの変更が行われたおかげで、華麗な雰囲気がさらにアップした。今回の3.2リッター化に際しては、スイッチのデザインが変わった。
(前席)……★★★★
GTVはレザーインテリアがスタンダード。カラーリングはベージュとレッドが用意され、試乗車は後者だったが、これがまた絶妙に渋い赤で、イタリア人の色センスはやっぱり違うと思わされた。GTVは3.2リッター化と同時に、日本市場では左ハンドルに戻った。同時にヒップポイントが下げられ、ヘッドスペースに余裕ができた。クッションには厚みがあり、シートバックの張りもあるが、上半身のサポートはルーズで、コーナーではもうすこしタイトにサポートしてほしい。ドライビングポジションは、チルトとテレスコピックが付いたステアリングを調節しても、ペダルが近くステアリングが遠いという、いまや懐かしいイタリアンポジション。その昔ジュリア・クーペの「2000GTV」に乗っていた自分にはなつかしく思えた。
(後席)……★★
身長170cmの自分が理想的なドライビングポジションをとった状態で後ろに座ろうとしたが、ひざが前席のシートバック、頭がルーフにそれぞれにつかえてしまった。前席と同じレザーで表面を覆ってはいるが、子供用かラゲッジスペースとして割り切ったほうがいい。でも、ここまで狭いと、そのいさぎよさに好感を抱いてしまう。
(荷室)……★★
タイヤ補修キットが積まれたことで、ラゲッジルームからスペアタイヤが消滅した。それでも奥行きは30cmほど。深さはけっこうあるが、それ以外は軽自動車並みといっていいかもしれない。後席と荷室がここまで狭いのは、マルチリンク式リアサスペンションのレイアウトを最優先したためもある。この後ろ足がもたらす高次元の走りを体感してしまえば、狭さが気にならなくなるかもしれない。トランクオープナーがリッドにはなく、室内にあるのは156などと同じ。GTVはオープンボディのスパイダーと基本設計が同じなので、そのレバーはロック可能なグローブボックスのなかにある。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
3.2リッターV6の最高出力は240ps、最大トルクは29.4kgmと、GTA用ユニットと比べると10psと1.2kgm下まわるが、乗った感じはほとんど変わらない。一発一発の鼓動をドライバーの体に伝えながら、1420kgのボディをグイグイ前に引っぱり、このうえない滑らかさでレッドゾーンが始まる7000rpmまで一気に回りきる。スロットルレスポンスはまさに動物的で、踏んだときのグォッという響きは猛獣の唸りのようだ。そして3000rpmを越えると、1000rpmごとに音色を変えながらクライマックスへとのぼりつめ、ドライバーを誘惑していく。しかもこういった一連のドラマが、147や156のGTAよりもはるかに近いところで展開されているような臨場感がある。ギア比までGTAとまったく同じ6段MTは、コクコクというタッチが心地よく、ストロークもほどほどで、官能的なエンジンにふさわしいパートナーだった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
GTVのタイヤは225/45ZR17とGTAと同サイズだが、車体側に地道な改良が行われているためだろう、乗り心地はマイルドなタイヤを履いていた初期型よりもむしろいい。ボディ剛性がアップしていることもあって、硬めではあるがダイレクトなショックはほとんど伝わらず、予想以上に快適だった。
ハンドリングはとにかくダイレクト。ロック・トゥ・ロックはわずか2.25回転で、切ってから車体が曲がるまでの反応がまた素早い。サスペンションは147や156とは違い、路面が荒れていてもしなやかに接地してくれるので、自信を持ってペースアップできる。タイトコーナーでパワーを与えすぎるとフロントが外にふくらんでいくが、それ以外は不思議と前の重さは感じなかった。直進安定性も文句なし。とにかく飛ばすほどに輝きを増すクルマだ。
(写真=峰昌宏/2004年6月)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2004年1月26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年
テスト車の走行距離:1万615km
タイヤ:(前) 225/45ZR17(後)同じ
オプション装備:パールペイント(28万3500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(4)
テスト距離:331.4km
使用燃料:57.5リッター
参考燃費:5.7km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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