アウディS3(6MT)【ブリーフテスト】
アウディS3(6MT) 2001.01.22 試乗記 ……420.0万円 総合評価……★★★★クールでホット
「S3」は、スペシャルな「A3」。空力バンパーとフォグランプで表情キリリ。225/45R17と、インチアップされたホイールと薄いタイヤで、足もとを引き締める。太く丸い握りのギアレバーのシフトパターンには、「6」まで数字が振られる。つまり6MT。
A3クワトロより60ps(!)アップの1.8リッター5バルブターボは軽々と回り、油断すると、たちまち4000、5000rpmに。直線的な、しかし過給器の加勢を感じる力強いパワーの盛り上がり。加速はクールだが、フィールはホット。ライブリィなエンジンサウンドと排気音が、「運転している」気にさせる。
回転落ちの遅さは、細かく刻んだギアレシオでカバー。小気味よく走れる。すこしでもスロットルペダルを踏み込むと、「ヒーン」とタービン音が響いて、ドライバーを奮いたたせる。
硬めの足まわり。高い速度域に合わせたのか、制動力の立ち上がりが早いブレーキ。革とアルカンタラの華やかなインテリア。ステアリングホイールを握るヒトに、常に「S」を意識させるプレミアムコンパクト。そうでなければ、A4の6気筒モデルに迫る価格のハッチバックを、手に入れる意味がない。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アウディの「Sモデル」は、各「Aモデル」を、よりスポーティに仕立てたもの。S3、S4、S6、そしてS8がラインナップされる。いずれも、高出力エンジン、「クワトロ」こと4WDシステム、豪華な内装、を特徴とする。S3はA3より遅れること3年、1999年のジュネーブショーでデビューした。
(グレード概要)
S3は、A3「1.8Tクワトロ」の5バルブターボをチューン、150psから210psにパワーが引き上げられた。ギアボックスには、1速多い6段MTが奢られる。「レカロ」スポーツシート、革巻きステアリングホイール、8スピーカーのステレオなど、装備も贅沢。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
37cmとやや小径なステアリングホイールのせいか、水平基調のインストゥルメントパネルが、やたら幅広に感じる。整然と配された、メーター、ブロワー、センターコンソールのスイッチ類。ゲルマンの「整理整頓」。ちょっと冷たい印象が……。夜間、ライトをつけると、赤いバックライトがキレイだ。
(前席)……★★★★
外観よりよほど魅力的な室内。Recaroシートには、革とアルカンタラがふんだんに使われる。見た目より硬い座り心地で、バックレストのサイドサポートも、スポーツモデルらしくシッカリしている。ハイト、リクライニングは電動だが、前後スライドは手で行う。
(後席)……★★★
ダブルフォールディング可能なリアシート。背もたれは立ち気味で、後席の住人は、背筋を伸ばして座ることになる。サイドがえぐられており、ヒジを置くことが可能。足もと、頭上とも充分なクリアランスがあるが、絞り込まれたグリーンハウスゆえ、頭斜め上は、やや圧迫感あり。
(荷室)……★★★
床面最大幅100cm、奥行き76cmと、やや小ぶりなラゲッジルーム。しかし、スクエアな形状で、使い勝手は良さそうだ。後席のバックレストを倒すと、奥行きが140cmになる。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
アウディ自慢の5バルブユニット。TTクワトロの225psをわずかにデチューン、それでも210psと、ハイパワー。過給機付きエンジンながら、スムーズに回転を上げ、ターボバンのない、力強く直線的なアウトプットを見せる。0-100km/hのカタログデータは、わずか6.9秒だ。シフトは軽くスムーズ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
「スポーツプレミアムコンパクト」と謳われるだけに、乗り心地は硬い。しかし、直接的な突き上げは抑えられるので、(すくなくともステアリングホイールを握っているかぎり)不快に感じることはない。ハンドリングは明快で素直。運転が楽しい。個人的には、TTクワトロより好ましく感じた。
(写真=阿部ちひろ)
【テストデータ】
報告者:web CG 青木禎之
テスト日:2001年1月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:2753km
タイヤ:(前)225/45R17 91Y/(後)同じ(いずれもMichelin Pilot SX)
オプション装備:-
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:362.7km
使用燃料:41.5リッター
参考燃費:8.7km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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