アルファロメオ156JTS(5MT)【試乗記】
噛みしめる、うまさ 2003.07.31 試乗記 アルファロメオ156JTS(5MT) ……359.0万円 ジャーマンサルーンと真っ向勝負できるイタリアンカーとしてヒット中の「アルファロメオ156」。ツインスパークを捨て、直噴エンジンとなった「JTS」に、『Car Graphic』編集委員の高平高輝が乗った。
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スロウセダン
その名前と非凡なスタイリングに目を奪われがちだが、実はアルファロメオという車は乗っているうちにジンワリと美味さが滲み出てくるタイプである。
特にこの156の4気筒モデルは、その名の響きに胸をときめかせながら初めて乗ると、「えっ、意外にフツーだな」と思う人が多いはず。よりパワフルな新エンジンを積んでいるとはいえ、それほど目覚しい加速を見せるわけではないからだ。しかしアルファはそこからだ。乗れば乗るほど、きちんと打ったウドンのように、手抜きをせずに作ったパスタのように、伝統と基本に忠実な本物の旨味が濃くなってくる。流行り言葉で言えば、まさしく“スロウ”なスポーツセダンである。
グルメ向きではない
とはいっても、もちろん遅いわけではない。従来の2.0リッターTS(ツインスパーク)エンジンに代えて新たに搭載されたJTS、つまり直噴ガソリンDOHC4気筒エンジンは、排気量は同じ2.0リッターながら直噴化によって圧縮比が上がり、パワーとトルクは165ps/6400rpm、21.0kgm/3250rpm(従来比15psと2kgm増し)にアップ。当たり前だが、セレスピードよりずっと自然な5MTを駆使すれば、十分速く走れるはずだ。
それにハンドリングは相変わらず切れ味抜群。2.2回転という超クイックなステアリングホイールに対するノーズのレスポンスはセダン界随一。鈍くて甘いセダンやミニバンにしか乗ったことがない人は、縁石にホイールをこすらないよう、最初の四つ角に要注意である。
もっとも、そのステアリングのクイックさに比べると、エンジンはトップエンドがやや物足りない。ただし、誤解を恐れずに言ってしまうと、アルファのエンジンは昔からあまり回らない。いや、回さないタイプだ。
と言うと、アルファファンの中には目を剥く人もいるはずだ。しかし、かつての1.6リッターツインカムも、ボクサー4気筒も、最近のツインスパークも、ホンダの4気筒のようにリミットまで突き抜けて叫ぶように盛り上がるパワー、というタイプではなかったことを思い出してほしい。
アルファのエンジンの美点は“レスポンスとメリハリにあり”、だ。タコメーターを見なくても、6000rpmを超えたぐらいでややトルクが細くなり、シフトレバーに手が伸びるように性格づけられているのだ。だいたい自然吸気の2リッターエンジンでそんな大パワーを絞り出したら、他とのバランスが崩れてしまう。そんな欲張りなグルメには、2.5リッターV6やGTAが用意されている。
基本の気持ちよさ
というわけでこの156JTSは、4000から5000回転ぐらいのスムーズで濃密なレスポンスを、右足親指に感じ取りながら走るのが正しい接し方だろう。左ハンドルのMTは、ペダル配置も自然だし、ブレーキのフィーリングも右ハンドルモデルより良好である。やや突き上げの残る乗り心地とちょっと心許ないボディ剛性は相変わらずだが、これほど走って気持ち良いセダンは他に例がない。
パスタは具じゃなく麺である。高級レストランになればなるほど、基本に手を抜かない。でもちゃんとしたレストランに入って、いきなりしたり顔でメニューにないニンニクと唐辛子のスパゲッティを頼むのは、マナー違反ということも一応覚えといてくださいね。彼らにすれば、基本がしっかりできているのは当たり前なんですから。
(文=CG高平高輝/写真=清水健太/2003年7月)

高平 高輝
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