フォルクスワーゲン・ゴルフGTIの「ライバル車はコレ」【ライバル車はコレ】
コンパクトホットハッチ対決 2005.08.02 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフGTIの「ライバル車はコレ」 「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のスポーツモデル「GTI」。『GTI is back』のキャッチコピーを従えて、復活した新型のライバル車は?フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(価格=325万5000(6MT)/336万円(2ペダル6MT))
“GTI is back”――そんな事言っちゃって、これまでの「GTI」の立場はどうなっちゃうのかなぁ……と思いつつも、とにかくフォルクスワーゲン自らがそう宣言をしてしまったのが、新しいゴルフGTI。
思い起こせば確かにここ数代のゴルフGTIは、ぼくらが期待をする『GTI』という記号の持ち主とはそのキャラクターがちょっとズレていたように思う。
エンジンスペックはたいしたものではなくても、装備的には特に豪華とは言えなくても、音は喧しくても、アクセルペダルをペタンと踏み込めば“ベンツビーエム何するものゾ”という走りを味わわせてくれる――それがGTIというものではなかったのか!? となると、とかく「豪華で快適」というベクトルに走りがちだったこのところのゴルフGTIは、確かにファンが期待をするGTIとはちょっとばかり違う方向性の持ち主であったようにも思う。
実を言えばこれまでのゴルフにとっての『GTI』という名称は、トリムレベルを示す単なるグレード名称のような扱いとなっていた。ヨーロッパ仕様では同じ『GTI』というグレードの中で、ユーザーが“ピン”から“キリ”まで複数の中から好みのエンジンを選択出来たほどだった。だから“GTI is back”という今度のキャッチフレーズは、VW自身が反省を込めて(?)ブチ上げた、ゴルフGTIの再起にかける呪文でもあるに違いない。
もっとも、1976年に初代ゴルフGTIが誕生をしてからは、すでに30年近い時間が経過している。そんなわけで現代のGTIが搭載する心臓は最新の過給機付き直噴ユニット。組み合わされるトランスミッションも最新の6速MTもしくはそれをベースとした“DSG”と、こちらもいかにも現代的だ。
【ライバル車その1】BMW118i(価格=324万5000円)
■BMWらしいコンパクトハッチ
『ゴルフ』という極めて“ドイツ車度”の高いクルマに興味を示す人は、当然この国発の他の作品も大いに気になるはず。しかも、あのBMWが初めて“ゴルフクラス”のクルマを世に送り出したとなれば嫌でも俎上に載せないわけには行かないのがこのモデルだろう。
いかにも「らしい」ルックスで登場の新型ゴルフに比べると、こちらのスタイリングはかなりエキセントリック。というか、本来はスペース効率重視であるはずの2BOXカーにもかかわらず、フロントノーズが妙に長くてリアには寸詰まり感の漂うその姿は、すでにプロポーションからしてがちょっとヘン。まぁ、こんなカテゴリーなのに直列6気筒エンジンまでを搭載し、しかもフロント・ミッドシップのレイアウトを採用して、50:50の前後重量配分を成立させようというのだから、「ヘンにならない方がヘン」とも言えるのだけれど…。
お陰で、ゴルフ以上の全長とクラス最長のホイールベースの持ち主でありながら、後席スペースはちょっと信じられないくらいにタイト。ついでに、ラゲッジスペースも外観から察するよりもずっと小さい、と、あくまでもBMW車らしい“ドライバーズカー”のノリで構築されるのがこのモデルでもある。
加速力はターボ付きエンジンを用いるゴルフには到底敵わないものの、その分FRレイアウトを生かしたシュアなハンドリング感覚が売り物。パワーステの味付けが妙に重いのが残念。極めて人車一体感の強いテイストは、フロントヘビーのゴルフには見られない快感。ただし、そんなこのクルマでの“損失”は日本ではMT仕様で乗れない事。秀逸なシフトフィールが「駆けぬける歓び」を増幅させるMTを選んでもらう手段を自ら絶ってしまうなんて、日本のインポーターはどうかしている。
【ライバル車その2】フォルクスワーゲン・ルポGTI(価格=226万8000円)
■兄貴分に負けない
全長は70cmも短く値段だって100万円も違うこんなクルマを、直接のライバルと考える人は常識的には「まずいない」と言うべきだろう。けれども、今から30年前を振り返ってみれば、『初代ゴルフGTI』というのは、今日のルポGTIに近いスペックの持ち主であった事に気付く。3730mmという全長はさすがにルポよりも200mmほども長かったものの、1610mmの全幅は逆にルポよりも30mmのマイナス。車両重量が200kgほども軽く仕上がっていたのは“古き良き時代”を象徴しているが、エンジン排気量はルポと同じく1.6リッター。110psという最高出力の値も、ルポの125psに対してさして変わらないデータであったものだ。
というわけで、ルポが備える“血中GTI濃度”はすこぶる高い。見た目はショボイ(?)しノイズは喧しいけれど、走ってみれば「ベンツ/ビーエム何するものゾ」という初代ゴルフGTIが身につけていたフィロソフィをより色濃く受け継いでいるのは、むしろこちらの方ではないかとも思えるくらいだ。
あんなに角張っていて、あれほど空気抵抗が大きそうなのに、アウトバーンをフラットアウトでいけばスピードメーターの針は「200」の数字を軽々とオーバー。トラクション能力の高さや路面を問わない接地感の高さはびっくりするくらい……。というわけで、そんな魅力に負けて購入を決意し、“アウトシュタット”の納車センターに引き取りに行ってから、間もなく4年の歳月と45000kmの走行距離を刻む事になる、ドイツ置き去りの我がルポGTIクン、“back”して来た兄貴分に負けず劣らずのGTIらしさを披露しつつまだまだ元気なのでアリマス。
(文=河村康彦/写真=広報写真/2005年7月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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