レクサスIS250/IS350【試乗記】
一級のスポーツセダン 2005.07.23 試乗記 レクサスIS250/IS350 8月30日から国内展開されるレクサスのニューモデル「IS」。プレミアムスポーティセダンを標榜するそのモデルに、テストコースで先行試乗。じわじわと伝わる魅力
そのスタイリングは事前に見た写真の印象より、ずっと強い存在感を放っていた。一見押し出しが弱く、繊細とすら感じられるものの、4575mmの全長に対して2730mmのロングホイールベース、1800mmのワイドな全幅など、ディメンションにはたくましさが宿り、それが短いオーバーハング、張り出したフェンダーなどによって心地よい緊張感として表面に浮き上がっている。直撃型というよりじわじわと伝わる魅力が、そこには確かにあると思う。
内装も奇をてらったところはないが、雰囲気は上々。ただし、上すぼまりのキャビン形状のため、前後席とも特に上半身は余裕たっぷりとはいえない。前席はともかく後席はもう少し寛げてもいい気がする。また些細なところだが、180km/hスケールの速度計も、何も困りはしないがちょっと物足りなく感じた。
抜群のレスポンス
今回用意されていたのはIS250とIS350の2モデルで、それぞれに標準の17インチ仕様と、スポーツサスペンションを組んだ18インチ仕様があった。まずは18インチ仕様のIS250でハンドリングコースへ出る。
自然と脇がしまる形状にデザインしたというステアリングを握って走り出すと、すぐに足が相当締め上げられていることがわかった。しかし波状のうねりを通過する際など、ボディは上下動するものの接地感はしたたかに保たれるため、クルマを信頼してペースを上げることができる。コーナリングも、ターンインは実に素直。
一方、旋回時にはスタビリティにこだわったという割に、リアの落ち着きは今一歩と感じた。もう少しどっしりした手応えがあってもいい。
続いて乗り換えたIS350は、とても刺激的だった。最高出力300ps以上とされる3.5リッターV6エンジンは、低速域からレスポンス抜群でトルクもあふれんばかり。それでいて全開にすればトップエンドまで一気呵成に吹け上がるのだ。フェラーリのF1シフトを凌ぐ変速時間の短さを謳う6段ATのシフトアップも、その言葉に偽りなく迅速。思わず全開にした右足を、一度緩めてしまうほど動力性能は強烈だ。
IS250でも充分満足できると思ったが、一度コレを味わってしまうと、「選ぶなら絶対IS350」と思ってしまう。
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期待に沿うもの
足まわりもIS350の方が好印象だった。基本的にはやはり硬めだが、その程度は軽く姿勢変化も穏やか。2.5のVSC(ヴィークルスタビリティコントロール)が安全第一なのに対して、3.5に採用されたVDIM(ヴィークルダイナミクススタビリティマネージメント)はある程度のテールスライドを許容する設定で、リラックスして運転を楽しむことができた。
この後高速周回路では、200km/hに迫る勢いでバンクに飛び込んでも、路面に吸い付くような高いスタビリティ性能を確認できた。つまり空力も相当煮詰められているのだろう。また速度域を問わず、適度に締まった手応えを示す電動パワーステアリングのできも秀逸といえる。
一級のスポーツセダンを目指してハンドリングを磨き込んだISの走りっぷりは、充分期待に沿うものだった。まだ乗り心地など粗さが残る部分もあるが、実は今回の車両は試作段階であり、実際発売されるまでにはさらに熟成が重ねられるという。
いずれにせよ、ブランド云々の前に走りそれ自体において、ISがプレミアムセグメントのライバル達と伍して戦えるだけの素性を持っていることは間違いなさそうである。
(文=島下泰久/写真=トヨタ自動車/2005年7月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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