BMW530i(6MT&6AT)【海外試乗記】
ハイブリッド、AFS、ランフラット…… 2003.06.07 試乗記 BMW530i(6MT&6AT) BMW5シリーズがフルモデルチェンジを果たし、5代目に突入! 大柄に、しかし軽くなったニューモデルに、自動車ジャーナリストの河村康彦が乗った。新型5シリーズのハイブリッドボディとは? 注目のAFS(可変ステアリングギア)はどうなのか?
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“アルミ効果”による軽量化
大幅な軽量化の実現……と耳にすると「それはデビュー間もない新型レガシィか、日本発売となりたての新ジャガーXJシリーズのキャッチフレーズだな」と連想してしまうのが、ちょうど今のタイミング。けれども、「走り」「曲がり」「停まり」のすべての運動性能に加え、燃費の低減にも直接の効果を上げる軽量化というテーマを、よそのメーカーも考えていないはずはない。鉄とアルミの“ハイブリッドボディ”というユニークな手法でそれを実現させた最新モデルが、新しいBMW5シリーズ(E60型)だ。
「バリエーションにもよるが、軽量化は最大で75kg。うち36kg分が、Aピラーよりも前のセクションに採用した“アルミ効果”による」というのがBMW側の説明。
ちなみに、その部分の重さはボディ全重量の15%の割合に当たるという。そういえば、研究実験の意味合いも込められた(?) オールアルミのボディ構造を採用した2シーターオープン「Z8」は、この7月をもって生産にピリオドをがうたれると伝えられた。となると、新5シリーズが一部とはいえボディ構造にアルミを用いたのは、そんなZ8生産用の“余剰設備”を活用したということになるのだろうか(まさか!?)
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アクティブ フロント ステアリング
まずは新しい5シリーズのルックスを、国際試乗会の場であり、同時に世界発表の場となった地中海はサルディニア島でじっくりと眺めてみる。写真で見ると少々奇をてらったようなデザイン・ディテールが感じられるかもしれない。けれども、実物の方が写真で見るより遥かに違和感が小さい。アグレッシブなルックスのなかに、7シリーズのような「こなれていない」雰囲気が漂わないところが、なかなか好感の持てるところ。個人的には、いまだに7シリーズのルックスには「ちょっとついて行けないナ……」というところがあるが、こちら5シリーズならば大丈夫だ!
テスト車の530iにはもう一つ、BMWが新設定した秘密兵器がオプション装着されていた。“AFS”と省略される最新ウェポンの正式名は「アクティブ フロント ステアリング」。
ステアリングシャフトの中間に挿入された遊星歯車の一部を必要に応じてモーターが駆動し、走行状況に応じてステアリングのギア比を可変化する。具体的には車速がゼロか極めて低い場合、ギア比がステアリングホイール上のロック・トゥ・ロック1.7回転(!)相当まで増速されるという。
ちなみに、同様のコンセプトを持つ「ホンダS2000」の“VGS”(こちらは最小時のロック・トゥ・ロックが1.4回転)に対するアドバンテージは? と担当エンジニア氏に尋ねると、
「一番はスタビリティコントロールシステムとネットワーク接続されているため、切れ角の強制補正を行った走行安定性の向上を図ることができる。一方、こうした制御を行うために、スタビリティコントロールの介入頻度自体を減らせる」とのことだった。
そんな新しい530iで走り出してみる。
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高度なフラット感
軽量化を図ったとはいえ車両重量は1.5トン超。加速フィーリングは正直、予想していたほどに強力無比という印象ではなかった。ATは7シリーズ同様の6段AT。もちろん実用上はこれでも十二分な加速力だが、「試しに」とMT仕様に乗ってみたら、同じはずのエンジンがさらに活発にまわるではないか!
BMW車のMTは、それ自体が「エクストラコストを支払ってでも選びたくなる」好フィールを味わわせてくれるもの。日本の“ヨーロッパ車乗り”の多くが、こうしたMTと最新ディーゼルのテイストを知らないのは不幸なことだ。インポーターもせめて「受注生産」扱いでよいから、これほどに秀逸なMT仕様をカタログに載せることはできないのだろうか?
注目の“AFS”が生み出すフィーリングは……、やはりその効果を大きく発揮する低速域を中心に「違和感がないといったらウソになる」ものだった。確かに、Uターン時の切り返しや微低速での駐車操作では、素早く動く前輪が取りまわし性向上の大きな武器になる。しかし、同じRのコーナーを抜けて行く際に「速度によって必要操舵角が変化する」のは、ドライビングスキルが高いヒトほど違和感をおぼえるのではないだろうか。だから、この装備を標準ではなく、希望する人が選択できる注文装備として設定するのは適切だろう。
そうそう、注文装備といえば、バイキセノン式のヘッドライトの照射方向を左右に自動コントロールする「アダプティプヘッドライト」と、パンク後のある程度の走行(満載状態80km/hまでの速度で最低150km)を可能とする「ランフラットタイヤ」の設定も、新型5シリーズのトピックスに数えられる。
軽やかな脚の動きで高度なフラット感を演じるフットワークは「さすがBMW!」。ただし、特にフロント側が凹凸を乗り越えた際に「ショック」と「音」がやや敏感にボディに伝わる感触が認められた。これは、テスト車のシューズが標準よりも1インチ増しの245/45R17サイズのランフラット仕様であったことや、あるいはフロントセクションがアルミ製という例の“ハイブリッドボディ”の辛いところなのかもしれない。リアシートでの居住性アップ……特にレッグスペースの拡大は、「BMWが目論んだ通りの効果が実感できる」と評してよい。
ということで、7月のヨーロッパ発売(国内は今年2003末の導入を予定)と同時に、またまた全世界で「新型Eクラスとの直接対決必至!」の新5シリーズ誕生である。
(文=河村康彦/写真=BMWジャパン/2003年6月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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