ルノー・メガーヌ2.0(4AT)【ブリーフテスト】
ルノー・メガーヌ2.0(4AT) 2004.01.08 試乗記 ……253.0万円 総合評価……★★★ 「アヴァンタイム」「ヴェルサティス」に続く、驚きのデザイン・シリーズ第3弾「ルノー・メガーヌ」。フランス版「カローラ」「サニー」はどうなのか? 『webCG』コンテンツエディターのアオキが乗った。
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恐れ入る
コンセプトモデル「イニシアル」の3女。明るい未来を信じたくなる斬新なデザイン。これで純然たる大衆車だから恐れ入る。ルノー、捨て身の企業戦略か。
日本にはまず2リッターモデルが入る。ステキな見かけとはうらはらに、一言でいって大したことないエンジン。いまひとつやる気が感じられないオートマチックトランスミッション。これまた大したことないと思うと、意外な底力にオドロク、日産との共同開発第2弾となる手堅いシャシー。つまりは、フランス車の文法通り(?) 自動車にかける夢と、「クルマなんてこんなもの」が同居した、都会的イメージをもつ農業国の作品。「ルノー・メガーヌII」は、たとえば「フォルクスワーゲン・ゴルフV」渾身の右ストレートをさらりとかわして、ノンシャランと走り去る。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年のパリサロンでデビューを果たした2代目メガーヌ。通称メガーヌII。ルノーのCセグメントカーとして、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」「オペル・アストラ」「トヨタ・カローラ」などと、覇を争う。
当面、ボディは3/5ドアの2種類だが、追って「ワゴン」「クーペ・カブリオレ」「セニック」「グランドセニック」「ルノースポール」がリリースされる予定。ユーロNCAPで最高評価の5ッ星を獲得した衝突安全性能の高さもジマンだ。
(グレード概要)
日本では、2リッターモデルの販売が、2004年1月10日から始まる。ベーシックな「2.0」と、17インチアルミとレザーシートなどが奢られた上級版「2.0プレミアム」がラインナップされる。2月初旬からは、1.6リッターを搭載するモデルも導入される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
アイボリーと黒でシックにまとめられたインテリア。樹脂類の質感が向上して「プラスチッキー」という言葉が使えなくなったことは一般的には喜ばしいが、“ちょっと古い”フランス車好きには、すこし寂しいかも。
インパネまわりの操作系には、見ただけ、触っただけで機能が理解できる、ルノーのデザイン担当副社長パトリック・ルケマンいうところの「タッチ・デザイン」が採用された。実際、スイッチ類はシンプルでわかりやすく、使いやすい。
ステアリングコラムから向かって右に生えるワイパーレバーの先端を押すことで、メーター内のディスプレイに「平均燃費」「瞬間燃費」「平均速度」「走行距離」「トリップ」などを表示することができる。左にあるライト関係のレバー先端には、ライトを自動的に点灯/消灯する「AUTO」モードボタンが備わる。
センターコンソールのふもとには、コインを置いても音が出ないようフェルトを敷いた小物置きと、二人分のカップホルダーあり。
(前席)……★★★★
弟分「ルーテシア」ほどではないと感じたが、それでも「ルノーのシートはいい」の定評に恥じない、メガーヌのシート。特にやんわり背中を抱いてくれるバックレストのできは絶品。座るだけでウレシイ。ただし、本国では圧倒的に多いマニュアル操作を意識してか、座面の長さは短めだ。
運転席には、レバー式の上下調整機能と、バックレストの横に、腰の後ろを押すランバーサポート用ダイヤルが付く。側面衝突を考慮した厚いドア内張のために、ドアとシートクッションとの隙間が狭い。そのためだろう、リクライニングとスライドは、座面前端下の左右のレバーで行う。ケチを付けると、これではドッチがどちらの機能か直感的にはわからないではないか。ま、一度試せばいいことですが。
カップを挟める出っ張りをもつ実用的なドアポケットのほか、肘かけにフタ付きの小物入れが設置される。航空機のスロットルレバーのようなパーキングブレーキが楽しい。
(後席)……★★★
前席同様、クッションのたっぷりした座り心地のいいシート。バックレストは立ち気味で、ちゃんとした姿勢で座れるのがいい。3人分の頑丈そうなヘッドレスト、3点式シートベルトが用意される。センターシートにも大人が座れる。
ただ、荷室の奥行きに配慮したためか、後席の絶対的なスペースは、ボディサイズのわりに、いまひとつ。特に膝前空間に余裕がない。また、背筋を伸ばして座ってもヘッドクリアランスが確保されるのはリッパだが、サイドウィンドウが意外に内向きに角度がついているのが気になるヒトがいるかもしれない。スペース的には★★。居心地のよさでプラス★。
(荷室)……★★★
ハッチに電磁式のオープンボタンをもつメガーヌII。ラゲッジルームの床面最大幅は116cm、奥行き79cm、パーセルシェルフまでの高さ52cm。開口部が大きく、使いやすそうな荷室だ。フロアの下には、スペアタイヤの中心部を利用した、不思議な三日月型のモノ入れがある。深さ14cm。
なお、リアシートは分割可倒式。座面を前に倒すダブルフォールディングが可能だ。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
いかにも21世紀的な、先進風内外装を誇るメガーヌII。しかし走りだすと、ツインカム16バルブが、“20世紀の恋人”つまり“クルマ”であることを声高に主張する。せっかちに走らせると、ウルサイ。基本構造を先代からキャリーオーバーした2リッター直4のアウトプットは、最高出力133ps/5500rpm、最大トルク19.5kgm/3750rpm。2000rpmで最大トルクの90%を発生する実用エンジンだ。
トランスミッションは、マニュアルモード付き4AT。日本車の懇切丁寧なシフト作法と比較すると、シフトダウン時にショックが大きかったり、ギアを落とすタイミングが早すぎたりする。まぁ、実用上問題ないレベルではありますが。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
フランス大衆車の「ふんわりした乗り心地」を期待すると、「意外に硬い」と感じる足まわり。とはいえ、“筋骨隆々”といったドイツ車のそれと比較すると、まだ相対的にソフトに仕上げられる。個性は薄まったが、高速巡航時のフラットさも併せ、快適性は高い。
電動式の可変パワーアシストを採るステアリングは、特にアシストの強い街なかで、太いゴムの棒をねじるような不自然さがつきまとう。加えて、ブレーキは硬いゴムボールを踏むような感触で、利きもオーバーサーボ気味。一般的なユーザーが、「慣れの問題」と割り切れるか?
山道ではルノーらしい、柔軟な“走り”を見せる。「クリオ(ルーテシア)」のようなエクサイトメントはないけれど、それなりに楽しい。
(写真=荒川正幸)
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【テストデータ】
報告者:『webCG』青木禎之
テスト日:2003年12月26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2372km
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)同じ (いずれもMICHELIN PRIMACY)
オプション装備:−−
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:250.2km
使用燃料:27.0リッター
参考燃費:9.3km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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