フォルクスワーゲン・トゥアレグ V8(6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・トゥアレグ V8(6AT) 2003.07.23 試乗記 ……673.0万円 総合評価……★★★★ 「3 cars in 1」を謳うフォルクスワーゲンのSUV「トゥアレグ」が日本上陸を果たした。さっそく元『CG』記者にして、現フリーランスのモータージャーナリスト生方聡が、一般道&モビリティパークでテストした!すべてをこなせる
2002年、フォルクスワーゲンは新しいカテゴリーのモデルをふたつ発売した。ひとつは、ラグジュアリーサルーンの「フェートン」。そしてもうひとつが、高級SUVの「トゥアレグ」である。小型車から高級車まで手がけようとするVWにとって、この2台の高級モデルは“変革のシンボル”といっても過言ではない。
このうちの1台、トゥアレグが、2003年7月7日に日本上陸を果たした。今回、静岡県は伊豆の「モビリティパーク」で開催された報道試乗会では、一般道での試乗に加え、急な坂での登坂、降坂性能や、悪路走破性などが確認できるオフロードコースも用意されていた。高級SUVをそんな状況で使うことはめったにないだろうが、本格オフローダーとしての高い実力が、大きな安心感を与えるのは事実だ。そんな“タフイメージ”の部分をどう膨らませるかが、このクルマの販売の成否に影響を与えるだろう。
全長×全幅×全高=4755×1930×1710mmという大きなボディのおかげで、リアシートもラゲッジルームも十分広く、本格的な4×4のポテンシャルだけでなく、快適な高級ワゴンとしての資質も備える。狭い東京で使うには多少覚悟が必要だが、1台ですべてをこなせるクルマとして「買えたらいいなぁ」と思える。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
フォルクスワーゲン「トゥアレグ」は、2002年の「パリサロン」でワールドデビューした、同社初の高級SUV。日本では、03年7月7日に発表された。VWは昨今、従来の大衆車メーカーから、高級車も手がけるフルラインメーカーへの転換を図っている。トゥアレグは、日本の高級車市場に初めて参入する、VWにとって重要なモデルでもある。ちなみに、ドイツ本国では高級サルーン「フェートン」が、同車に先駆けてリリースされた。
トゥアレグは、ポルシェ初のSUV「カイエン」とプラットフォームなどの基本コンポーネンツを共用。ボディパネルやエンジンなどに、独自のものを採用して差別化を図った。コンセプトは、オフロードでの走破性、“スポーツカー並”を謳うオンロード性能、そして高級サルーンのような乗り心地を1台で味わえるという「3 cars in 1」。
日本でのラインナップは、3.2リッターV6(220ps、31.1kgm)と、4.2リッターV8(310ps、41.8kgm)搭載モデルの2種類。いずれも、6段ティプトロニックが組み合わされ、電子制御の副変速機付き4WD「4XMOTION」が、路面や走行状況に合わせて4輪にトルクが配分される。4WDシステムのみならず、ディファレンシャルや、急坂で自動的に停止する「ヒルホルダー」機能、坂を下る際に速度を制御する「HDA」(ヒルディセントアシスト)など、オン&オフの走行をアシストする多彩な電子デバイスが標準で備わる。
ちなみに、本国には4.9リッターV10ツインターボディーゼル(313ps、76.5kgm)モデルもあるが、日本には導入されない。
(グレード概要)
トゥアレグV8は、日本におけるトゥアレグのトップグレード。減衰力や車高調節、セルフレベリング機能をもつ「CDCエアサスペンション」がオプション設定(28.0万円)されるのは、このモデルのみである。V6の油圧式サスペンションの場合、最低地上高は280mmの固定式だが、エアサス仕様は160mm〜300mmの範囲で調節可能。ジマンのオフロード性能も高められる。「スポーツ」「オート」「コンフォート」、3つの減衰力パターンを任意に選択でき、コンセプトの「3 cars in 1」をもっとも体現した仕様といえる。
エアコンやオーディオなどの装備にほとんど差はないが、V8のインテリアはフルレザー(V6はクロス)。シートはV6の8Way電動調節式に対し、12Way+ランバーサポート付きとなる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
メーターパネルは、アナログ6連丸形タイプを採用。大径のレヴカウンターとスピードメーターはシンプルかつ上品なデザインで、他のVW車同様見やすいのがいい。メーター中央に設置されるカラー液晶ディスプレイは、シフトインジケーターのほか、車高やダンピングといったエアサスの状態や、デフロックの状況を表示する。表示内容は別にして、メーターパネルのレイアウトはVWの最高級車「フェートン」と同じだ。ウォールナットとアルミが組み合わさたパネルも似合っていて、高級感とスポーティな印象を上手に演出している。エアコンは、運転席と助手席で別々に温度設定ができるデュアルゾーンのオート式になる。温度設定ダイヤルの操作感が、やや安っぽいのが惜しい。
(前席)……★★★★
天井のグリップに手をかけなくても、なんとか乗り込めるフロントシートは、フルレザーのパワーシート。スライドやリクライニングはもちろんのこと、ランバーサポートやヘッドレストの調節も可能で、最適なポジションを取れるのがうれしい。ステアリングホイールには、オーディオや画面表示を切り替えるスイッチが配されるほか、ステアリングから手を離さずにシフト操作可能なパドルがステアリングホイール後方に備わる。日本仕様の場合、イグニッションキーがステアリングコラムの左側にあり、最初のうちは左手で操作することに戸惑いもある……。
(後席)……★★★★
2855mmと余裕あるホイールベースのおかげで、リアシートのレッグスペースは余裕がある。身長167cmの私なら、足が組めるほどの広さだ。高いルーフが後方まで延びるため、ヘッドルームは十分すぎるほど。シートは、座面を前に持ち上げてシートバックを前に倒すダブルフォールディング式。シートバックは長さが十分とられ、肩までカバーしてくれる。シートクッションも張りがあって、座り心地はよい。日本で販売されるVW車のなかで、後席に陣取るなら、文句なくこのクルマを選ぶ。
(荷室)……★★★★
リアシートを起こした状態で約98cm、倒せば約167cmの奥行きを誇るラゲッジスペース。トリムによって、幅が116cmに抑えられるものの、十分すぎる広さである。容量はリアシートを起こした場合が555リッター、倒すと1570リッターに拡大。リアシートは6:4の分割可倒式で、スキーバッグも標準で搭載できる。テールゲートには、独立開閉式のガラスハッチが付き、狭い場所ではテールゲートを開けなくても荷物にアクセスできるのが便利だ。ただし、車高の高いSUVだから、小柄な人は背伸びしないと開けたハッチに手が届かないかもしれない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ノーズに積まれる8気筒エンジンは、VW自前のW8ではなく、アウディ製の4.2リッターV8。大排気量だけあって、低回転域から豊かなトルクを発揮する。通常は2速からの発進だが、2390kgの重量級ボディをものともしない逞しさだ。アクセルペダルを踏み込んだとき、低回転域ではエンジンからのノイズがやや耳障りだが、3500rpmあたりから5バルブエンジンの心地よいサウンドに変わり、さらにスムーズで力強い印象になる。組み合わせられる6段オートマチックはシフトショックが小さく、マニュアルシフト用パドルの使い勝手もいい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
試乗車は、V8モデルにのみオプション設定される「CDC」(無段階可変減衰力制御)エアサスペンションを装着していた。CDCは、車高とダンピングを調整することにより、オンロードでの快適性とオフロードでの走破性を両立するものだ。
ふだん使ううえでは、ダンピング調整機能が役に立つ。スイッチで、「スポーツ」「オート」「コンフォート」の3つのモードから選択可能。ワインディングロードや高速走行時にスポーツを選択すれば、背の高いSUV特有の姿勢変化を抑えることができる。一方、一般道などではオートにしておけば、硬すぎず、柔らかすぎない乗り心地を得られる。ただし、ややフラット感に欠けるコシの弱さがあり、そのわりに目地段差を越えたときのショックを遮断しきれない。このクルマの位置づけを考えると、エアサスペンションは必須アイテムといえるだけに、今後の熟成を期待したい。直進安定性は優れており、軽快とまではいかないが、ハンドリングも素直な印象だ。
(写真=峰昌宏)
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【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年7月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)255/55R18 109Y(後)同じ(いずれもブリヂストン TURANZA ER30)
オプション装備:CDCエアサスペンション(28.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):山岳路(7):オフロードコース(1)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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