ボルボS60R/V70R【海外試乗記】
“強力”というより“強烈” 2003.02.14 試乗記 ボルボS60R/V70R レモン色の「850T5R」で衝撃のデビューを果たしたボルボの「R」。以後、散発的に市場に投入された「R」は、ボルボらしからぬジャジャ馬ぶりが、魅力のひとつでもあったのだが……。自動車ジャーナリスト河村康彦が、最新のRに乗った!
拡大
|
拡大
|
低いハッタリ度
最新ボルボの「R」は本気だ−−「S60R」「V70R」の国際試乗会に参加して、ぼくは心底そう思った。ターボチャージャーの助けを借りて1リッター当たり100ps以上の出力を発生させるのは、いまやさしたるニュースではない。だから新しい「R」に積まれる2.5リッターの心臓が、「ボルボ史上初の300psを達成!」と聞いたときも、実は大した驚きを感じなかった。
が、ちょっとばかり失礼な先入観を抱いて、プレス試乗会が開かれる南仏入りをしたぼくを待っていた2種類の「R」は、しかし“これまでのボルボのR”とは一線を画す乗り味のもち主だった。簡単にいえば“スポーティ”と表現するより、ズバリ“スポーツ”といった方が合っている、そんな走りのテイストをもっていたのだ。
セダンのS60R、ワゴンのV70Rともに、エクステリア・デザインはベース車からさほど大きく変化してはいない。もちろん、ファットで薄いタイヤや開口面積の大きな専用のフロントマスクなどから、これらのクルマが何らかの高性能モデルであることは、見る人が見ればすぐにわかるだろう。ただし、ボディパネル形状に変更があるわけでも、派手な空力付加物が与えられるわけでもないので、見た目のインパクトはさしたるものではない。2台のハッタリ度(?)は、まァ、それほど凄いものではない。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
台数限定でもいいから……
一方、プレミアムな雰囲気を高めるためのインテリアの化粧は、外観より念入りに施された。間接照明によってほのかに浮かび上がるメタリックブルーのメーターは、このクルマがスペシャルなモデルであることを無言のうちにアピールするし、「ダークブルー」「ゴールドベージュ」もしくは「ナチュラルアリニン」というレザー色が選択できるシートは、それぞれがドアトリム部分とコーディネートされ、なかなか質感が高い。いくつかの部分に配されたアルミニウム製のパーツも、スポーツ性とプレミアム性の双方を同時に高めることに一役かっている。「年間生産台数7000台」という両車の内装は、かくもエクスクルーシブな雰囲気を醸し出す。
2.5リッターの排気量とDOHC4バルブのヘッドメカニズム、そしてKKK製ターボチャージャーをアドオンし、300psの最高出力と40.8kgmの最大トルク(AT仕様は35.7kgm)を発する5シリンダーに火を入れる。ハイチューン・ユニットとはいえ、アイドリング付近、あるいはアクセル開度の小さい領域では「凄さ」を意識させることはない。
が、アクセルペダルを深く踏み込みエンジン回転数が高まってくると、そこからの加速力は“強力”というより“強烈”。そのインプレッションは5段AT仕様より6段MT仕様、V70Rより重量が軽いS60Rの方が鮮烈だ。ただし、日本への導入が予定をされているのは、「さしあたってオートマモデルのみ」とのこと。たしかにいまの日本は、ATが圧倒的な優位に立つが、これらのクルマが、今後のボルボの新しいスポーツイメージを牽引するモデルであることを考えれば、たとえ台数限定でもいいから、マニュアル車の導入も検討すべきではないだろうか……。
まるでレース仕様
すばらしい加速を披露するハイパワーユニットに加え、新しいボルボ「R」で注目すべきポイントは、フットワークの仕上がり具合だ。現地に用意されていたテストカーはすべて、乗り心地には不利に働きがちな18インチのオプション・シューズ(標準は17インチ)を装着。が、それにもかかわらず、「ひょっとしたら、あらゆるボルボ車のなかでトップクラスなのでは……」と思えるほど、乗り心地がよかった。嬉しい驚きである。
さらに、可変減衰力ダンパーを「スポーツ」モードに切り替えても、快適性は十分に保たれたままだった。このショックアブソーバーは、「操舵角」「ボディ/サスペンションの上下G」「エンジントルク」「車高」などをセンシングして、電子制御でダンピングがコントロールされる。
一方、サーキット走行をも意識した「アドバンスト・スポーツ」を選択すると、今度はまるでレース仕様のごとき乗り味に変身することにも、ビックリさせられた。あたかも大幅なローダウンをしたかのようなリニアな動き。そのスパルタンな走り味は、ハッキリいって「まるでボルボらしくない」。電子制御で前後輪にトルク配分するハルデックス・カプリングを採用した4WDシステムによる強力なトララクション能力とあいまって、現在はトヨタF1のホームコースとしても知られるポールリカールのサーキットを、自在に走りまわることができたのである。
(文=河村康彦/写真=ボルボカーズジャパン/2003年2月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。

































