トヨタ・MR-S Sエディション(シーケンシャル6MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・MR-S Sエディション(シーケンシャル6MT) 2002.10.01 試乗記 ……219.8万円 総合評価……★★★★★大事に育て中
「MR2」の後を受け継いでデビューした「MR-S」が、丸2年を経てマイナーチェンジを受けた。フロントバンパー・デザインの変更など一部に化粧直しが施されたものの、見た目の基本的な印象は従来と同じ。一方で、トランスミッションを6段化、リアタイヤを「大径&ワイド化」するなど、もともと非凡だった走りの「ポテンシャル&質感」を、より一層高める工夫がなされた。セリカと基本コンポーネンツを共有するモデルであるが、同じ1.8リッターながら、向こうには存在する190psのハイパワー版ユニット(2ZZ-GE型)の搭載は、今回もなされなかった。エンジンのハイパワー化に邁進したため、結局はシャシーとのバランスを崩すことになってしまった前モデル「MR2」で学んだ教訓が活きているのだろう。個人的にも、190psユニットのMR-Sへの搭載を見送ったのは、「このクルマを大事に育てていきたい」というトヨタの見識であると評価したい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)MR2の後を継いで、1999年10月12日に登場した2座オープン。ミドに積まれるエンジンは、1.8リッターの「1ZZ-FE」ユニット(140ps)のみ。トランスミッションは、通常のHゲイトかシーケンシャル(2ペダル)、2種類の5MTが選べた。2002年8月2日にマイナーチェンジを受け、ギアボックスが5段から6段になり、リアタイヤのサイズが「205/50R15」から「215/45R16」にアップされた。
(グレード概要)
ベースとなるのは、「MR-S」。パワーウィンドウ、エアコン、オーディオ類などを省略した素のクルマ「Bエディション」、アルミペダル、リモコンキー、ラジオ連動オートアンテナなどを装備する売れスジ「Sエディション」、そして革内装の豪華版「Vエディション」がラインナップされる。ソフトトップの色が「タン」になるのはVエディションのみ。ほかのグレードは「ブラック」だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
メーターや空調パネルの目盛りが細分化されたり、ドアグリップにメッキのアクセサリーが加えられたりしたが、マイナーチェンジによるインテリアのリファインは最小レベル。注目したいのは、シーケンシャル車のブレーキペダルだ。従来の小型タイプから、新型ではAT車ばりの大型タイプへと変えられたのだ。「坂道発進などでの利便性を考えて……」というのがトヨタの公式コメントだが、ぼくは従来型で否定していた“左足ブレーキ”も視野に入れた変更と受け取っている。もっとも、取扱い説明書で「ブレーキは右足で」と指示しているのは、従来通り。
(前席)……★★★
いわゆるハイバック・タイプで、いかにもスポーティな見た目が特徴。ただ、オープンモデルでありながら、ヒーター付きシートが用意されないのはちょっと寂しい。今は軽スポーツの「ダイハツ・コペン」にすら、オプション設定されるというのに……。
テスト車の「Sエディション」は、シートカラーとして「黒」を標準とし、「赤」「グレー」も選択可能。ちなみに、MR-Sの豪華版「Vエディション」には、レザーならではの香りを発散させる本革シートが標準で装備される。
(荷室)……★
MR-Sの荷物用スペースは、事実上、シート後方に用意された鍵付きリッド付きの「ラゲッジスペース」のみ。フロントのフードを開くと、そこにはステアリング・ギアボックスやらブレーキ配管やらが収まり、それらを通して地面が丸見え。ちょっと驚く。オプション設定で「フロントラゲージボックス」や「フロントラゲージトレイ」もあるが、いずれにせよ、もともとスペアタイヤが鎮座しているので、たいしたものを積むことはできない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
新しいMR-Sの走りは痛快そのものだ。何より、新たに採用された6段トランスミッションが、絶大な効果を発揮している。通常のH型ゲートとシーケンシャル仕様があるが、絶対のオススメは後者。ステアリングスイッチを“クリック”するだけで瞬時に変速が終了してしまうこのメカは、6段MTと組み合わされて、さらにメリットを発揮するようになった。通常のゲート式と異なり、前後に順番にギアを変えていくシーケンシャル方式では「1→3」、あるいは「4→2」といった“飛ばし”のシフトができないと思われるかもしれないが、さにあらず。MR-Sのシステムは、“ダブルクリック”や“トリプルクリック”を問題なく受け付けてくれる。電子制御スロットルによるエンジンの回転合わせも抜群の上手さ。現在、世界の同種のシステムのなかでは最先端をいっている、と絶賛したい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
MR-Sのフットワークは、「ミドシップ」らしい機敏さと「ロングホイールベース」による安定感が同居する。サスペンションの動きは微少ストローク域から滑らかで、全般的な乗り心地も従来型から大きくレベルアップされた感を受ける。
ボディ剛性感は、さすがにもともとオープンカーとして開発されたものらしく高い。それでも「ホンダS2000」や「ポルシェ・ボクスター」といった世界最高峰のモデルと比べると、わずかにダウン。これが「★ひとつマイナス」の要因となった。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2002年9月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:−−
タイヤ:(前)185/55R15 81V(後)215/45R16 86W
オプション装備:ヘリカルLSD(3.0万円)/MD・CD付きラジオ+4スピーカー(6.3万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8):山岳路(2)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:−−

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。






























