スバル・フォレスター2.0XT EyeSight(4WD/CVT)【試乗記】
ドライバーズSUV 2013.02.27 試乗記 スバル・フォレスター2.0XT EyeSight(4WD/CVT)……316万6850円
5年ぶりのフルモデルチェンジを受けて、2012年11月にデビューした新型「フォレスター」。パワフルな直噴ターボエンジンや、人気の「EyeSight」を備えた最上級グレードを駆り、その魅力をあらためて検証する。
グレード名で装備がわかる
森閑とした空気の中で木々をバックにたたずんでいると、力強さが際立って見える。昨年11月に5年ぶりのフルモデルチェンジを受けた「スバル・フォレスター」は、明快にスタイルを変えてきた。控えめな表情だった先代と比べると、アグレッシブさがはっきりと前面に出ている。さわやかなマッチョともいうべき、スバル独自の美意識がみなぎったエクステリアデザインだ。
4代目となっても、コンセプトは変わらない。1997年のデビュー以来、乗用車の走りとSUVの走破性を両立させるということでは一貫している。最近新しくなった2リッターの4気筒水平対向エンジンを搭載していて、自然吸気とターボ仕様がある。駆動方式は全車4WD。スポーティーな走りと低燃費が売りとなっている。“ぶつからないクルマ”を一気にメジャーにした衝突回避システムの「EyeSight(アイサイト)」は、上位グレードに装備される。というか、それがグレード名そのものになっている。システムが付いているかどうか、ひと目でわかるのだ。
試乗したのは、ターボ版でEyeSight付きという最上位モデルだ。それでも車両価格は300万円を切っている。価格もうれしいが、ほかにこのクルマの秀逸な点を、2つ紹介したいと思っている。1つは明快でわかりやすく、もう1つは言葉にしにくい美質だ。まずはわかりやすい取り柄から話を進めるのが常道だろう。
山道で楽しい「S#」モード
試乗時間が限られていてロングドライブが難しかったので、箱根でテストすることにした。SUVで山道メインというのはどうかと思ったのだが、案に反して実に楽しかった。その立役者が、ドライブアシストシステムの「SI-DRIVE」である。エンジンとトランスミッションを統合制御する仕組みで、ボタンひとつで走行性能を変化させることができるのだ。「インテリジェントモード[I]」が自動的に選ばれている。燃費を優先したモードで、出力特性は穏やかな設定だ。スポーティーな走りをしたい時は、ステアリングホイールに設けられたスイッチで「スポーツモード[S]」に切り替えればいい。
ターボ版にはさらに「スポーツシャープモード[S#]」が設定されていて、よりパワフルな走りを楽しめる。よくある機能ではあるが、これが望外の出来だった。[S#]を選ぶと、アクセルの入力に対する出力の上がり方が明確に変わる。足先とエンジンが直接つながっているかのようなダイレクト感を味わえるのだ。少々あざといのではないかと思えるほどに、ガラリと性格を変える。
伝わってくるエンジンの音量も大きくなり、気分が高揚するのも演出の一環だ。箱根の険しい坂をぐんぐん登っていくさまが頼もしく、コーナーに向かって加速を続けていきたくなるのは仕方のないこと。心強い感触のブレーキで確実に減速すると、ガタイからすると少なめのロールで腰のすわったコーナリングを見せてくれるのだ。
パドルを使ってシフトすれば、一段上の楽しみが待っている。ブレーキ操作と連動させて下りでも安心してメリハリのある加減速ができるのは、レスポンスの良さがあってのことだ。先代ではATも使われていたが、自然吸気モデルの一部でMTが選べるのを除けばトランスミッションはすべてCVTになっている。細かな統合制御をすることで、低燃費と[S#]のスポーティーさを両立させているわけだ。
走りも内装もナチュラル
山道が楽しかったのは、SI-DRIVEだけの手柄ではない。箱根に到着する前の街や高速道路でも、すでにこのクルマの素性の良さは存分に味わっていた。これがもうひとつの美質なのだが、なかなか言葉にしづらい。要するに、このクルマに備わっている基本的な値打ちということになる。ほんの少し乗っただけで、理屈もわからず「いいなあ〜」と思わされるものがあった。
それは、アクセルでもステアリングホイールでも、操作に対するナチュラルな反応ということになるのだろう。特別な素早さとかパワフルさというのではなく、自分とクルマとの関係性の心地よさのようなものが感じとれる。理由を探るならば、水平対向エンジンのなめらかなフィールや低重心がもたらすものなのかもしれない。ただ、それはもともとスバルが得意としてきた技術であって、今回感じた心地よさは、ひとつステージが上がったように思えたのだ。
もうひとつ感覚的な言い方をすれば、スピード感のあるクルマだったということになる。最近では、いくらアクセルを踏んでもさほどの速度が出ているとは思わず、メーターを見て驚くというケースが多い。50km/hでもそれなりのスピード感をもたらしてくれるというのは、久々の感覚だった。危険を感じるという意味では、もちろんない。低速であろうともクルマは大きな運動エネルギーを持っているわけで、それを如実に伝えてくれているということだ。ナチュラルな運転感覚ともつながる話だろう。
インテリアにも、ナチュラルさは貫かれている。一見して、目を驚かされるところのないオーソドックスなデザインだ。それだけに、使い勝手は上々だ。ありそうなところにスイッチがあり、目につくところにディスプレイがあるから、何も知らずに乗っても戸惑わずにすむ。
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運転席に座りたい
内装の質感は、着実に上がっている。派手さはないものの、ドアトリムなどの素材が上質になっているし、メタリックな加飾も上手になった。最近の傾向に従い、「マルチファンクションディスプレイ」も装備されている。車両の状態やエコドライブのための情報を表示するもので、ステアリングホイールのスイッチで操作する。
悪路走破性を高める「X-MODE」の作動状態もここに表示される。センターコンソールにあるやたらに目立つ大きなスイッチを押すと、4WD のシステムが作動したことをグラフィカルに知らせる。一般路では使えないので、脇道に入り込んでスイッチをオンにした。写真では結構な山奥に見えるかもしれないが、撮影地は東京からさほど離れた場所ではない。本格的なラフロードがあるわけもなくてVDCが機能していることを確認しただけだったが、いざという時にはありがたい機構となるはずだ。
470kmあまりを走って、燃費は満タン法でリッター8.8kmだった。高速道路5、山道3、市街路2ぐらいの割合である。箱根で存分に走ったことを考えれば、悪くはない。いいことばかりのようだが、後席のカメラマン氏からクレームがついた。乗り心地をどうにかしてくれ、と言うのである。
運転していて特に不満を覚えることはなかったので、確かめるために交代してもらった。広々としているし、視点が高くて気持ちいい。気楽に構えていたのだが、走りだすと確かにこれは腰に響く。フォレスターは、運転席に座るに限る。これは、まぎれもないドライバーズカーなのだ。
(文=鈴木真人/写真=河野敦樹)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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