クライスラー300Cラグジュアリー(FR/8AT)【試乗記】
落ち着きのある大人のセダン 2013.01.27 試乗記 クライスラー300Cラグジュアリー(FR/8AT)……538万円
クライスラーのフラッグシップセダン「300」シリーズがモデルチェンジを受け、4年ぶりの新モデルとして日本市場に導入された。内外装ともに洗練された新型はどんな風に進化したのか?
ほどよくあくが抜けたエクステリア
クライスラーのフラッグシップセダン「300」シリーズはモデルチェンジしても相変わらずのこわもてだ。全長×全幅×全高=5070×1905×1495mmと存在感あふれるボディーに、大きく口を開けたラジエーターグリル、そしてにらみ付けるようなヘッドライト。これが後ろから迫ってきたら、無意識に道を空けてしまうに違いない。
しかし、新しくなった300を落ち着いて眺めると、旧型のギラギラとした印象が影を潜め、分別のある大人の雰囲気に変わっている。以前に比べると少しカドの取れたデザインがそう感じさせるのか? 旧型よりも全長が60mm長くなったにもかかわらず、むしろ新型のほうが小さく見えるのも、そのあたりに理由があるのかもしれない。
ひと目でそれとわかるデザインを受け継ぎながら、ほどよく灰汁(あく)が抜けた新型「クライスラー300」。さらにうれしいのは、すっかりあか抜けて上質になったインテリアだ。正直なところ、先代の300はエクステリアとインテリアのギャップが大きかった。
見違えるほど上質になったインテリア
旧型のインテリアは、そっけないデザインと車格の割には上質さに欠けるつくりが残念だった。そのあたりは作り手も痛感していたようで、新型は見違えるほどに上質さを増し、より温かみのあるデザインに進化していた。特に目を引かれるのが、ダッシュボードやメーターナセルなどに、伊ポルトローナ・フラウ社製のレザーとステッチが施されたところ。これだけでもドライバーからの眺めは実に心地よいものになる。
「Uコネクト」と呼ばれるインフォテインメントシステムを中心にデザインされたセンタークラスターもうまくまとまっている。個人的には、サファイアブルーに輝くメーターパネルがかわいらしすぎるのが気恥ずかしく、ホワイトに変えられたらいいのに……と思うのだが。
今回借り出したのは「300Cラグジュアリー」。前述のレザートリムやナッパレザーシート、20インチのタイヤ&ホイールが装着される上級グレードだ。日本ではベーシックグレードの「300リミテッド」も用意されるが、搭載されるパワートレインは1種類、すなわち、3.6リッター“ペンタスター”V6エンジンと8段オートマチックトランスミッションである。プラットフォームを旧型から受け継ぐクライスラー300、当然のことながら駆動方式はFRとなる。
エクステリアから受けるイメージとは裏腹に、運転した印象は実に落ち着いている。至ってまっとうなセダンだった。
ストレスのない走りが楽しめる
通常のラインナップからV8の“HEMI”が消え、可変バルブタイミング付きの3.6リッターV6DOHCのみが用意される日本の300シリーズ。1900kgの車両重量に対して、286ps/6350rpm、34.7kgm/4650rpmのV6で果たして大丈夫なのか? と心配したが、ZF製の8段オートマチックとの組み合わせでは力不足を感じる場面はなかった。
エンジンは特にトルクのピークを感じる回転域がない代わりに、全域で十分な力強さを発揮する扱いやすい特性。スムーズに吹け上がるとともに、やはりスムーズにシフトアップ/ダウンするトランスミッションのおかげで、ストレスのないドライブが楽しめる。ただ、“バイ・ワイヤー”を採用するセレクターレバーは、はじめのうちは意図したのとは違うポジションに入れてしまうことがあり、慣れるまではかえって煩わしいかもしれない。
一方、300Cラグジュアリーの走りはFRセダンのお手本みたいな行儀の良さだ。特にスポーティーなわけではないが、ステアリング操作に対してクルマは素直に反応し、高速走行時のスタビリティーも優秀。乗り心地にはドイツ車的な落ち着きがあって、快適さもまずまず。
唯一残念なのが、245/45ZR20サイズのタイヤが、目地段差を越える際のショックや細かい路面の荒れを伝えてくることで、その点、235/55R18を履く「300リミテッド」はマイルドな印象だったから、乗り心地に限れば300リミテッドのほうが好ましいと思った。
まあいくつか気になるところもあるが、セダンとしての魅力は確実にアップしているクライスラー300。このサイズだけに後席やトランクのスペースも十分。そのうえ、価格がリーズナブルだから、押しの強いエクステリアがお気に召せば、なかなか良い買い物になるのでは?
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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