第455回:「ふさ」の原点はだんじりにあり!! オートサロン2013で考えさせられた祖国ニッポン
2013.01.18 小沢コージの勢いまかせ!第455回:「ふさ」の原点はだんじりにあり!!オートサロン2013で考えさせられた祖国ニッポン
ずっと気になっていたVIPカーブランドの老舗
いやはやごぶさたしております小沢コージです。はや10年以上は年始の幕張メッセに通い詰めてますけど、久々、いやもしや初めてオートサロンの神髄に触れてしまった気がしましたですよ。というのも、まずは長年気になっていた「ジャンクションプロデュース」さんの“ふさ”の秘密の解明で!!
ジャンクションプロデュースっていうのは、俺が通い始めた頃には既に存在していた老舗のVIPカーブランドで発祥は大阪の河内。正直、小沢とは微妙にテイストが合わないだけに、ダイレクト取材はしてきませんでしたが、前々から気にはなってました。
というのもこちらは国産車中心のVIPカーブランドとして始まったにもかかわらず、いち早くロールスやベントレーなど欧州超高級車のエアロを取り扱い、その上オートサロンでは10年以上前からまさにファッションブランドさながらの展開!
クルマ以上にファッションに割くスペースが広く、扱ってるアイテムも振るってて、ホイールやエアロに交じり……いやそれ以上にジャケットやらトレーナーやらスリッパやら座布団などを販売。それが時には飛ぶように売れている。不肖小沢としては「いったいこれはなんなんだ?」と。「本当に自動車のビジネスなのか?」とずっと思っていたわけです。
欧米にはない、日本独自の“不良性”
中でも気になっていたのは、今回直撃した代表取締役の武富孝博さんが「最大のヒット商品のひとつ」と教えてくれた“ふさ”だ。
バックミラーなどにぶら下げるモノで、門外漢からすると「ええ! 何コレ?」という感じだが開発秘話を聞いてビックリ。
「発想の原点は、祭りです。大阪南部にはだんじり祭りってのがあって、使うタスキの端っこにふさが付いてるんですね。で、ある時『これを祭りをまっとうしたクルマにかけよう』と思って。23〜24年前に商標登録しました」
ふ、ふさをドレスアップアイテムとして商標登録!! 凡百のプランナーやファッションリーダーには思いも付かない発想だが、論理には意外に説得力がある。
「今までの日本のドレスアップってどれもヨーロッパかアメリカのマネじゃないですか。ドレスアップブランドの日本代表はどこですねん、と。海外の猿まねをしててもしょうがないでしょう。僕はそれになろうとしたんです」
なにかとドイツのブラバスなど欧米流に影響されがちな日本ブランドにとって、微妙に耳が痛い話だ。
「いわゆるチバラギ的なヤンキーカルチャーってのは世界のどこにもない、あれは日本独自の自動車カルチャーなんです。僕らには僕らの悪いクルマの文化がある。それを合法的に発信しようと。そこが僕らの原点です」
うーん、確かに! 世界のどこへ行ってもクルマ趣味、それもチューニングカーに関しては独自の不良性を抜きに語れない。そういう意味で日本独自の“ふさ”で世界に打って出るってのはアリなのかもしれない。
というか今やトヨタに日産にホンダ……と大メーカーの情報発信基地として使われているオートサロンだけど、そもそもは日本独自の不良自動車カルチャーに原点があった。どっちがその本流かといえば……疑う余地はない。オートサロンはまさしく祭りであり、ショップはその出店みたいなものなのだ。
狙うは成長著しい巨大市場・中国!
それと今回、実は小沢が注目して取材したのがオートサロン初出展の「www.3rong.com」だ。というのもこれは不肖小沢の旧知の日本人が始めた中国語のチューニングカーサイトで、基本は日本チューニングブランドの発信基地。編集長の高畑尚樹さんいわく、
「小沢さん。今後、中国で何が伸びるって知ってますか? 中古車ですよ。新車が2010年に1800万台、2011年に1850万台ってレベルで伸びていて去年2012年は2000万台弱。でも今後本当に伸びるのは中古車で、2011年は450万台でしたけど、2020年には新車が3000万台レベルで、中古車は4000万台って話になってるんです。実際、アメリカでもヨーロッパでも新車より中古車市場の方が大きい。これからの中国はユーズドカーです」
これは本当の話だ。今、実は中国は他のアジアやロシアと違い、中古車の輸入が禁止されている。つまり、中古車市場は新車で入ったクルマが古くなって初めて形成されるわけで、それも中国の場合、年に2000万台やそれ以上で新車が増えるからあっという間に中古車だらけになる。
その時に重要になるのがチューニングなのだ。
「中国はご存じの通り見栄(みえ)の文化、メンツの国ですから。単に古いクルマじゃ満足できない人が多いし、そうなると重要になってくるのがチューニングなんです。マジメに日本のVIPカーみたいな見栄えの利くエアロなんかがはやる可能性があるし、実際に一部のお金持ちの間で、はやり始めてる。そこに着目したのが『3rong.com』なんです」
このままではチューニング界でもドイツに負ける?
しかもここで恐ろしいのが既に欧州のチューニングブランド、特にドイツ系が中国に入り始めていることだ。メルセデスと一心同体のAMGは言うに及ばず、ブラバスは既に中国国内に工場を持ち、コンプリートカーを造ってるし、カールソンやハーマン、ハルトゲ、アルピナなんかも入っている。
さらにすごいのは、今回著名チューナーの「VeilSide(ヴェイルサイド)」の横幕社長から聞いた話だが、
「特にドイツ系はオートグレーブ(カーボンを焼く窯)をチューナーレベルで持っていて、ドライカーボンでエアロを作っちゃうんです。それもFRPと同じ価格レベルで。普通にやってたら日本はかないません」
そう、尖閣問題や政治問題で日中関係が停滞している間に、ドイツを中心とするヨーロッパ勢は現地にドンドン進出。それも新車だけでなく、今後チャンスが広がる中古車やカーチューニング市場に手を伸ばしている。
もちろん日本と中国の関係は隣国同士だし、歴史も複雑でヨーロッパのようにスッキリとは行かない。だが、まさしく隣同士で、今後ずっと無関係でいられるわけはないし、このチャンスを見逃す手はないのだ。
ってなわけで、今回は自動車本体だけでなく、チューニングカー界における「日本」の存在まで考えさせられた東京オートサロン。
つくづく世界は狭くなっている。本当にそう思わされた今日この頃ですわ!
ところで長年ご愛読いただいた「小沢コージの勢いまかせ」は今年リニューアル。いったん小休止し、4月には新装開店、リフレッシュして大々的に展開いたしますので、こうご期待です!!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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