「ならし運転についてもっと詳しく教えてください」
2001.05.13 クルマ生活Q&A エンジン「ならし運転についてもっと詳しく教えてください」
新車(日本車・ワゴン・AT)を購入予定です。ならし運転の仕方によってその後のクルマの調子が決まっちゃうなんて聞きますが本当ですか? それが本当なら、どんなならし運転が良いんですか? メーカーが言わないならしの裏技なんてありますか? (KSさん)
お答えします。ほかにも、ならし運転の仕方をもっと具体的にという意見もいただいたので、メーカーが行っているエンジンのならしの方法を含めて解説していきたいと思います。
メーカー(ディーラー)はならしをしなくても大丈夫と言いますが、エンジン出力試験では必ず何らかのならし運転をおこなってから測定をします。
彼らのやりかたはたとえば以下のようなものです。まずエンジンをロード(負荷)なしで暖めます。簡単にいえばアイドリング状態ということです。その後、「1000回転で1時間、2000回転1時間......」といった具合に1時間単位で7時間から9時間かけて適切なロードとともにエンジンに「馴染み」をつけていきます。その間オイル交換はしません。そして設定した出力が得られるか確認します。
一般の人は新車のならし運転をどう行えばよいのでしょうか。上記のようなならしを公道で行うことは不可能に近いと思います。エンジンが嫌うのはストップアンドゴー(青信号で発進して赤信号で止まる)の繰り返しなどによる回転が安定せず、水温の上がり下がりが多い運転です。そのことだけは意識したほうがよいでしょう。そこで理想に近い条件を満たした道路といえば高速道路です。
アップアンドダウンが少ない高速道路で、アクセル開度をできるだけ一定にするということが重要です。まず走行距離500キロぐらいまでは、オートマチックトランスミッションの場合スピードを80キロぐらいに、マニュアルトランスミッションではトップギヤで80キロぐらいになるようにゆっくりと加速していって下さい。
次に1000キロまでは時速100キロを目安にむりな加速をせずに走って下さい。1000キロを走行した後、エンジンオイルの交換をお勧めします。そのとき高級オイルを使う必要はありません。メーカーがリコメンド(推奨)しているグレードで良いでしょう。その後2000キロまではエンジンが唸るような無理な加速はやめ、流れに沿った走行を心がけるとよいでしょう。後は第1回の「やさしい運転のしかた」に書いたことを参考にしていただければ良いと思います。
余談ですが、メーカーがならしを行なったエンジンは往々にして設定値よりも高い出力を発生することがあるそうです。これは馴染みがつきフリクションが少なくなったからだと思います。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。