「ターボタイマーは必要か?」
2001.08.25 クルマ生活Q&A エンジン「ターボタイマーは必要か?」
タ−ボ車に乗っている人のなかには「タ−ボタイマ−」を着けているひとが多いようです。私が聞いたところによると、今のタ−ボは精密に組んでいるため、ターボタイマーの必要がないと聞きました。実際のところはどうなのでしょうか?(八王子 TSさん)
お答えします。「精密に組んであるからターボタイマーは必要ない」というよりもターボタイマーを必要としないような構造になっているものが多くなっている、といったほうがよいでしょう。
ターボタイマーとは、イグニッションを切っても一定時間、エンジンがアイドリング状態で動きつづけるようにする装置です。
ターボチャージャーは加給圧がかかると、高回転まで回ります。高速走行時などは毎分10万回転以上にまで上がります。少し前のターボチャージャーはタービンの潤滑をエンジンオイルの油圧に頼るところが多かったので、突然エンジンを止めると潤滑オイルの供給がなくなり主軸に傷がついてしまったり、ひどい場合は焼き付いたりしました。ですからしばらくアイドリングをして、タービンの回転を落としてからエンジンを止めなければなりませんでした。この作業をターボタイマーがおこなっていたわけです。
最近のターボエンジンはターボタイマーを必要としないものが多くなってきています。理由のひとつとして、タービン主軸のベアリングの性能が上がったことがあります。主軸のベアリングにオイルを染み込ませたり、ボールベアリングを使用することによってエンジンを止めても多少潤滑できるようになっているからです。
とはいっても、ターボエンジンのクルマの場合、高速走行後などは20〜30秒アイドリングして回転を落としてから止めるようにしたほうがよいでしょう。そのほうがタービンやベアリングへの負担が軽減されます。
最近、トラックでターボチャージャーを装着している車両において、タービンの加熱が原因で火災を起こしたという事件が報道されていました。トラック運転手のなかにはターボチャージャーを改造して加給圧をあげパワーアップをはかっているひとも多いようです。そうなるとオイルの温度が上がり、劣化が早く、粘度も下がってしまうので、所期の潤滑性能を発揮できなくなります。乗用車と違って、トラックのタービン軸のクリアランスは大きいため、潤滑油への依存度が高いので、重大な故障につながりやすいわけです。もちろん、すべての故障がこれだと決め付けることはできませんが。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。