トヨタ・アリオンA18 Sパッケージ(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アリオンA18 Sパッケージ(4AT)【ブリーフテスト】 2002.02.19 試乗記 ……227.4万円 総合評価……★★★日本のカガミ
ヘッドランプ、グリル、バンパーなど、「プレミオ」より若づくりなフロントフェイスを与えられた“All in one sedan”こと「アリオン」。かつての上級車種「ビスタ」のプラットフォームに、5ナンバーサイズの3ボックスボディを載せた。長いホイールベースを活かした広いキャビン、に加え、ミニバン並に豊富なシートアレンジを誇る。特にリアシートの大きなリクライニング機構(20度)を実現するため、トランクルームとの隔壁を無くすという、トヨタの伝統的ミディアムセダンとしては革新的な試みに挑戦。ボディ剛性を落とさないためフロアブレースと呼ばれる補強材を通したり、荷室内の遮・吸音材を厚くしたりと、ご苦労なことです。
メイングレードと目される1.8リッターモデルは、コンベンショナルな4段ATと組み合わされた手堅いつくり。ほどよいつくりのインストゥルメントパネル、ちょっと贅沢な漆黒調パネル、自発光するオプティトロンメーター、さらに走らせても、トルキーなエンジン、静かな室内、100km/hまではフラットな乗り心地と、買った人に「リーズナブル」を納得させる。いまやセダンの範疇を超えて、後席の乗員までグッスリ眠らせる必要があるから、まぁ大変。クルマは世につれヒトにつれ、いつのまにかミニバンはおろかセダンも動く小部屋に。最新モデルは、現代日本交通事情のカガミである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
プレミオ/アリオンは、2001年12月25日から販売が開始されたトヨタのミディアムセダン。プレミオはコロナ、アリオンはカリーナの後継モデルとなる。グリル上下やドアハンドル、細いモールなどにメッキ調の“光りモノ”を使用したのがプレミオ。アリオンはボディ同色となる。5ナンバー枠内のサイズながら、長いホイールベースによる広いキャビンと豊富なシートアレンジを実現。特にリアシートは、荷室との隔壁をなくすことで、背もたれを大きく後にリクライニングできるようになった。エンジンは、いずれも1.5、1.8、2リッターの3種類。FFのほか、1.8リッターモデルには4WDも用意される。
(グレード概要)
アリオンは排気量によって小さい順に「A15」「A18」「A20」と分けられる。メイングレードとされる1.8リッターモデルは、4WDも用意される。「Sパッケージ」は、ディスチャージヘッドランプ、スポーツオプティトロンメーター、本革巻きステアリングホイールなどが奢られる豪華版。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
保守本流、インパネまわりはオーソドクスにまとめられた。とはいえ、ダッシュボードをウッド(調)パネルで上下にわけ、エアコン吹き出し口、各種ボタン類をフェイシアと面一にしているところなど、トレンドははずさない。クルマに乗り込んだ際の“値段のわりに豪華”感高し。「Sパッケージ」はステアリングホイールも革巻きだ。
(前席)……★★★
「縫製ライン表皮の深吊り化」、つまり座面中央部とサイド部のクッションを表面からわずかに潜ったところで縫い合わせ「立体的な造形を実現し、高級感あるシルエット」(プレス資料)にしたのが、プレミオ/アリオンのジマン。ただし、言われないと気づかない。サイズ、座り心地とも中庸をいく。運転席側には、シートクッションとシートバックの角度を一緒に調整するダイヤルが付く。
(後席)……★★★★
座面、背もたれをとも前に倒して荷室を広げるダブルフォールディングはもちろん、後席後ろの「可動式パッケージトレイ」を折れば、大きくシートバックをリクライニングさせることもできる。足もとの広さと合わせ、行楽疲れの家族にはうれしかろう。目を開けるとリアガラスから空が見えたり、ドア側に残るクッションがややジャマだったり、路面からの突き上げが意外に背中にきたりもするが、寝てしまえば関係ない。
(荷室)……★★★
リアシートをダブルフォールディング(座面、背もたれとも前に倒す)すると、奥行きは1.7mに! 大きなセールスポイントだ。とはいえ、荷室の高さ約50cmは変わらないから“ワゴン並の使い勝手”とはいかない。なお、プレミオ/アリオンは「キャビン-トランク間」の隔壁がない分、ボディ剛性確保のためフロアに各種補強材が追加される。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
「VVT-i」こと可変バルブタイミング機構を備えたオールアルミ1.8リッターツインカム16バルブ搭載。132ps/6000rpmの最高出力と、17.3kgm/4200rpmの最大トルクを発生する。スロットルペダルの踏み始めから感じるトルキーさ、が印象的。しかしパワーソースの存在を意識するのはその一瞬だけで、反応よく、シフトプログラムの熟成も進んだ「スーパーインテリジェント」4段ATと合わせ、アリオン18Aのドライブトレインは黒子に徹する。ファミリーセダンとして“あらまほしき性格”とはいえる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
街乗りおよび高速道路において、法定速度までの乗り心地はフラットで安楽。ドメスティックユースオンリー。ステアリングの軽い、労力いらずのドライブによって、いつしかクルマに乗っていることをも忘れさせる。アリオンはプレミオよりヤングな層をねらったモデルだが、それは外観とイメージにとどまる。足まわりのセッティングに、プレミオとの差はない。
(写真=河野敦樹/荒川正幸(トップ))
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年1月18日から21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:1552km
タイヤ:(前)195/65/R15 91S(後)同じ(いずれもブリヂストン B390)
オプション装備:DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーションワゴン+バックガイドモニター(32.4万円)/音声案内クリアランスソナー(4.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:200.1km
使用燃料:18.5リッター
参考燃費:10.8km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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