スバル・プレオ ニコット【ブリーフテスト】
スバル・プレオ ニコット 2WD(CVT) 2001.10.11 試乗記 ……115.9万円 総合評価……★★★これもまたスバル
このクルマ、土台は旧ヴィヴィオからのものを使っている。その意味ではすでに10年選手だが、乗ってみると古いという印象はない。バブル崩壊前の、それもスバルの設計ということで、むしろ「カネ、かかってるなあ」。高級といえばたしかに高級。軽自動車という枠のなかで、かなり凝ったつくりをしている。ずいぶん前にヴィヴィオに乗ったときは、軽自動車離れした優美な身のこなしに驚いた。その驚きは2001年のプレオでも健在だった。
ただでさえ利幅の薄い軽自動車だから、ヴィヴィオ-プレオのような凝った設計はたとえばスズキだったら論外だろう。が、そこはスバル。こんなことをしていたらオイシイ商売はできないのだけれど、でもやってしまう。実にもって、愛すべきクルマ屋である。
ただ、4輪独立サスペンションはいいとして、エンジンを4気筒のみとしてしまったのは少々イタかったかもしれない。業界の現状が示しているように、660ccの4気筒は一時の流行だった。過給なしではまったく成立しないということがわかって(最初から明白だったはずだしターボ化してもマトモではなかった)、スバル以外のメーカーは手を引いてしまった。たとえばの話、660ccの4気筒を単純に2倍にすれば1320ccの8気筒。あるいは、3倍にすると1980ccの12気筒。それこそフェラーリ166の世界だ。
細分化が必ずしもベターな結果につながるわけではないというこのへんは、最近のデジカメの状況にもちょっと似ていておもしろい。1.8分の1インチ334万画素とか1.8分の1インチ412万画素とかいったCCDを使った機種で得られる絵が276万画素のニコンD1のそれに遠く及ばないのは、ひとつ非常に大きなところでは画素ひとつひとつのサイズキャパシティがきわめて、あるいは限界を超えて小さいからだ。軽自動車エンジンにコジつけていえば、2分の1インチ211万画素か2分の1 インチ150万画素あたりまでが3気筒つまり許容範囲ではなかろうか。さらなる余談として、排気量たった602ccのシトロエン2CVがぜ〜んぜん軽自動車ぽくないのは、そのエンジンが2気筒であることも要因として大きいと思う。
現状プレオの動力特性は破綻はしていないが、しかしそれとて“マイルドチャージ・コンセプト”要するに実用性重視型の機械式スーパーチャージャーあればこそ。デジカメでいえば、優れたノイズリダクションや白飛び制御があって初めてメリットを得られる感じ。メカニズムが簡潔であることの重要さがかなり高い軽自動車にあって、そうとう特殊だ。
他社が4気筒から手を引けたのはもちろん3気筒があったからで、しかしスバルの場合はヴィヴィオ前夜の2気筒を捨ててイッキにフルライン4気筒へ走ってしまった。そのへんの暴走ぶりも、やはりスバルならではか。なにせ、いまやトラック(サンバー)まで4気筒。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年の軽自動車規格改定に合わせて、オーソドックスな2ボックスタイプだったヴィヴィオに代わり、背の高いワゴンボディをまとってデビューした。ボディは5ドア1種類だが、オリジナルの他にクラシカルな外観の「プレオ・ネスタ」を設定。さらに2000年には「プレオ・バン」やほほ笑ましいデザインのフロントマスクを採用した「プレオ・ニコット」などが登場。エンジンはすべて直列4気筒で、SOHC、SOHCスーパーチャージャー、DOHCスーパーチャージャーを用意。SOHCには「マイルドチャージ」と呼ばれる低圧仕様もある。電子制御の無段変速機i-CVT、多彩な4WDラインナップ、このクラス唯一の4輪独立懸架など、スバルらしい内容を秘めたモデルである。
(グレード概要)
「ニコット」は、その名の通り、ニッコリとしたフェイスが特徴。エンジンは、658cc直4SOHC「マイルドチャージ」ユニット(60ps、7.6kgm)を搭載。トランスミッションは、CVTのみ。FFのほか、4WDモデルもラインナップされる。ニコット専用パーツとして、フォグランプ、カラードドアミラー、そして白いアルミホイールが装備されるほか、パステルブルーのシート地&ドアトリムはじめ、スピードメーター、センターパネルなどが設定される。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
天井がムヤミに高いことの違和感を除くと、あとは悪くない。オーディオやエアコン関係の操作パネルをわかりやすく囲ったうえで使い勝手のよい高い位置におき、かつシフトレバーをコラム配置としてあるため足元空間はジャマモノのない左右ひとつながり。そうじゃなきゃイカンということは別にないがこれはこれで便利なときもある。
(前席)……★★★
こちらもまた、左右ひとつながりのベンチ風。狙いは悪くない。実際、座面もまあ大きく感じられる。全幅の限られた条件下では、やはりそれなり有効な方法かもしれない。
(後席)……★★
着座位置に対してムヤミに高い天井。つまり、あまたのデメリット(重量や空気抵抗の増加や走りの悪化等々)は覚悟のうえのはずの高い全高がまったくいかされていない。しかも、背もたれリクライン機構はアップライト側2ノッチぶんがアップライトすぎて座っていられない。3段目でかろうじてOKになるが、その時点ですでにシートベルトは肩から浮きかけている。そして、4段目以降は姿勢がダラケすぎて走行中に使うのは危険。無意味。
(荷室)……★★★
後席背もたれ(2分割)を倒すと段差なしの広い積載スペースを得ることができる。逆にいえば、そのぶん最初から荷室の床はゲタを履かされている。それで余った空間を床下収納にしているのかもしれないが、イージーな手法だ。天井が高いから、それでも積む気になれば積める。絶対的な床の高さも大したことはない。が、かぎられたサイズの枠内で有効空間を必死になって稼ぎだした痕跡はみられない。それで誰もモンクをいわないのだからいいってことか。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
4気筒“マイルド”スーパーチャージャー+無断変速オートマ=i-CVTの完成度は高い。1気筒多いぶん確実に洗練度も高い。高性能だがガキッぽさや乱暴さはなし。高速道路でも余裕は余裕。軽自動車離れしているといえなくもないが、しかし逆に精巧なミニチュアっぽさが強いともいえる。あと、動力特性に不満はとりあえずないとしても実用燃費はどうなのか? ただでさえよくないマルチシリンダー(軽としては十分そう呼ぶにあたいする数だ)に過給までしているのだから。そこを考えると★★★★はちょっと……。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
これまた、パワートレイン同様洗練度は高い。いかにも4独サス然とした優雅な身のこなし。バネ下の重さやドタつきを感じさせないリアサスまわり。過給エンジン搭載の軽自動車としては当初ちょっと驚くくらいアシの設定はソフトめだし、背が高いこともあってロールあたりも深めだが、だからといって破綻しているわけではない。とはいえ、全体としてはいささか甘口が勝ちすぎている。ハンドルもイヤに軽いし。大きなクルマのマネをしているような。そこもまたちょっとミニチュア風。精巧といえば精巧だが、どことなく頼りなげなのはスバル車らしからず。もっとこう、レガシィやインプレッサみたいな骨太な感じの軽自動車をつくってくれ。どうせなら。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:森慶太
テスト日:2001年8月23日から24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年モデル
テスト車の走行距離:4718km
タイヤ:(前)155/65R13 73S/(後)同じ(いずれもヨコハマ S-217F)
オプション装備:---
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:---
テスト距離:208.0km
使用燃費:21.0リッター
参考燃費:9.9km/リッター

森 慶太
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