ポルシェ911カレラ4S(6MT/5AT)【試乗記】
大バーゲン 2001.12.21 試乗記 ポルシェ911カレラ4S(6MT/5AT)……1170.0/1250.0万円 いわゆる“996”のターボルックが、ポルシェ911カレラ4S。ターボの足まわりとブレーキをもつNAモデルに、自動車ジャーナリスト、河村康彦がイタリアで乗った。
インテイクダクトがあるかないか
のっけから私事で恐縮ではあるけれども、ぼくが個人的にポルシェ911を購入するとしたら、それは「クーペのヨンク」しかないと思っている。同じオープンでも、剛性感がボクスターよりもはるかに劣るカブリオレのボディでは物足りないし、ハイスピードゾーン(911の場合「およそ160km/h以上」といった領域になる……)での走りの安定感は、いうまでもなくRRモデルより4WDの方がずっと高いからだ。
そんなぼくにとって、ポルシェ社が「これが現行911最後の追加モデル」というカレラ4Sは、大いに気になるモデルだった。そして、先頃イタリアで開催された国際試乗会でその走りを堪能したいま、「選ぶならこれしかないカモ……」と、そんな風に思っている。
ノーマルヨンクモデルたる「カレラ4」と「カレラ4S」との違いは、まず“S”のボディが、いわゆるターボルックになっていることだ。リアスポイラーは「911ターボ」ほど派手なデザインではないし、合わせて空力バランスを取るために、フロントのスポイラーリップも一部小型化されているといった違いはある。
けれども、リアフェンダー部分がオリジナルのカレラシリーズより60mm膨らまされたボディは、ちょっと遠目にはやはり「ターボ」そっくり。ターボとカレラ4Sを識別するポイントは、「リアフェンダー上に(インタークーラー冷却用エアのための)インテイクダクトがあるかないか」、ココに集約される。
S化のプラスとマイナス
ワイド化されたボディやホイールの大径化などで、車両重量はカレラ4より65kg重い。けれども、MT仕様でもAT(ティプトロニック)仕様でも、加速力は世界第一級のスポーツカーに相応しい鮮烈さだ。伝統のフラット6は、200ccの排気量アップと可変バルブタイミング&リフト機構「バリオカムプラス」の採用をメインメニューとした先日のマイナーチェンジで、その出力を驚くほどに向上させたものだ。アウトプットは、最高出力320ps/6800rpm、最大トルク37.7kgm/4250rpm。
カレラ4Sで嬉しいのは、ブレーキシステムも「ターボ」から譲り受けていること。もちろん、通常のカレラシリーズのブレーキのポテンシャルもハンパなものではない。が、さらに剛性感に富んだペダルタッチをもち、より強力なストッピングパワーを生み出す。「これだけでも4Sが欲しいな」、そう思わされる。
フットワークテイストは、街なかを流すような領域ではノーマルのカレラ4より少々かたい。「ボディワイド化に伴う空気抵抗の増加をキャンセルすべく」10mmダウンのシャシーが与えられていることと、大幅にファット化(特にリア)された18インチタイヤを標準で履くことが、主要因と考えられる。タイヤサイズは、フロントが225/40ZR18、リアはなんと295/30ZR18!
ワイドなフェンダーと295幅の太いタイヤを見せつけるリアビュー。そのたくましさは、当然、Sでないカレラ4をしのぎ、高速域では過剰なまでの(?)フラットな乗り味を提供してくれる。S化の「プラス」と「マイナス」を天秤にかけると、オリジナルのカレラ4に加えること80.0万円(MT、ATとも)というエクストラコストは「むしろ大バーゲンではないのか」というのがぼくの意見となる。
(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン/2001年12月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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