フォルクスワーゲン・ゴルフGTX(4AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲンゴルフGTX(4AT) 2001.04.26 試乗記 ……340.0万円 総合評価……★★★★小さなアルピナ
ギャンギャン走るだけがスポーツモデルではない。「大人のGTI」ことGTXは、ゴルフ?最大の持ち味である「しっとり感」を前面に押し出し、速さと快適さが小さなハッチバックでも両立可能なことを証明した。いわばフォルクスワーゲン版アルピナ、といったらホメ過ぎか。それが実現したのは、強力なターボエンジンとそれによくマッチしたオートマチックトランスミッション、乗り心地と操縦性のバランスがうまくとれた足まわり、そしてミドルクラスの高級車に匹敵する豪華なインテリアゆえである。むろん前提として、ゴルフ本来の美点である「優れたパッケージング」と「ボディ剛性の高さ」があるのはいうまでもない。欲張りな家族持ちのスポーツマン(特に都会住まいの)には理想に近い1台と映るだろう。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
御存知ドイツを、いや世界を代表するボリュームセラー。いまや単なる量産車の域を超えてドイツ民族系なるがゆえの一種プレミアムな雰囲気と格式を備えるに至った。初代のデビューは、1974年。ビートルの後を襲って26年、4世代にわたる生産累計はすでに2000万台を超え、最近それらを記念して「25 Jahre」や「TM(=ツヴァイ・ミリオネン)」なる限定モデルがリリースされた。日本仕様のラインナップはいずれも4ドア+テールゲートの、下からE(1.6リッターSOHC/4AT=229.0万円)、CLi(2リッターSOHC/4AT=253.0万円)、GLi(同/4AT=270.0万円)、GTI(1.8リッターDOHCターボ・インタークーラー付き/5MT=290.0万円、同/4AT=299.0万円)、GTX(同/4AT=340.0万円)の5種が用意される。
(グレード概要)
初代ゴルフ?に設けられて以来、常にホットハッチの代表格として知られてきたGTIに、GTXとして、いまやアルピナに似た豪華・快適仕様が用意される。すでに「スタンダード」のGTIでも安楽なオートマチックが選択可能になっているが、GTXではむしろそれ1本に限られた。1.8リッターDOHC5バルブターボをはじめとするメカニズムの基本こそGTIそのものだが、同じレカロのスポーツシートでも全面革張りになるほか、フロント・センターアームレストやオートエアコンなどを独自に備える。タイヤ/ホイールは乗り心地向上の目的でひとまわり細身だ。GTI(4AT)に比べて41.0万円高。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ゴルフ?になって高級感が一気に増したのは事実。好みにもよるが、ブルーのバックライト付きメーター(全車共通)や渋い雰囲気のブラックウッド(GTIと共通)などで、独自の雰囲気づくりに成功した。合理主義一本槍でいかにも実用車然としていたかつての面影はない。標準装備のカーナビは立ち上がりが遅く、精度、使い勝手とも今日では水準以下。
(前席)……★★★★
サポートに優れるシート形状と仕立ての良さでひとクラス上のアメニティを実現。シートヒーターは上級クラスの象徴。スペースは横方向に余裕があり、小型車であることを意識させない。
(後席)……★★★
居住空間そのものはごく常識的。膝周りの余裕と天井高はどうにか不満が出ない程度。クッションは大型。バックレストともども強くシェイプしていて、定員5名だがリアは事実上ふたり乗り。
(荷室)…★★★★
ハッチバックの鑑。単に330リッター(ISO方式。分割可倒式のリアシートを畳めば1184リッター)の容量が大きいだけでなく、テールゲートがバンパー高までガバッと開き、荷室自体も床面が低くフラットで使い勝手に優れる。ドアと一緒にトランクもリモコンキーで施錠/開錠でき、便利。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
マニュアルのGTIしか知らなかった筆者には嬉しい驚き。たしかにこういうGTカーもありだなと納得させるだけのものがある。僅か1750rpmで2リッターオーバー級のピークトルクを発生するターボエンジンは、ボトムエンドから6400rpmのリミットまで全域にわたってトルキーかつレスポンスに優れる。必要な時に必要なだけのパワーが取り出せて(それもごくスンナリと)、ストレスがない。ターボ+オートマチックの効果は絶大、大排気量車並みのパワー感とイージーさである。ギアリングそのものは標準的で、100km/hクルージングはDレンジで2800rpmに相当、おとなしく走れば充分に静かだ。シフトショックは軽いが、皆無ではない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地とハンドリングのバランス、そして4輪のバランスがとてもいい。荷重の大きなフロントは、ストローク初期に比較的大きな動きを見せて足の柔らかさを予想させるが、実はダンパーがそれなりに効いて、揺れは一発かせいぜい一発半で収まる。段差を強行突破しても、ボトミングする気配はなかった。ことしなやかさの面では、スポーツモデルとしてなかなかのものなのである。ハンドリングのよさも同様に、この種のしなやかさやスムーズさに支えられる。そのせいか、歴代ゴルフに特徴的な、ハードコーナリングで演じられるイン側リアホイールをリフトさせての「3輪車」状態が少なくなったように感じられた。スタビライザーが効果的なのか、ソフトなわりにロールもあまり目立たない
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:二玄社別冊単行本編集室 道田宣和
テスト日:2001年4月9から10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:2360km
タイヤ:(前)195/65R15 91V/(後)同じ(いずれもMichelin Pilot Primacy)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:486.6km
使用燃料:58.0リッター
参考燃費:8.4km/リッター

道田 宣和
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。


































