フォルクスワーゲン・ゴルフワゴン「Exclusive」(4AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフワゴン「Exclusive」(4AT) 2002.07.13 試乗記 ……280.0万円 総合評価……★★★★実用の二段重ね
ゴルフといえばハッチバック……、と思っていたら、昨2001年にはハッチバック約1万5000台に対し、ワゴンの販売が約1万台と、ゴルフファミリーの太い柱になっていた。ちなみに、メーカー全体で見ると、ニュービートルが約1万4000台、ポロもほぼ同数ということで、フォルクスワーゲングループジャパンのモデル別販売内訳は、他の輸入車メーカーがうらやむ健全な分散ぶり。「年10万台!」の長期目標が、あながちかけ声だけではない現実味を帯びてきた。
久しぶりに乗ったゴルフワゴンは、2リッターSOHCを積む「GLi」をベースにした特別仕様車「Exclusive」。外では16インチのアルミホイールが、内では3本スポークの革巻きステアリングホイールがちょっぴりスポーティ。「2リッターで116ps」と、いささかカタログアピールに乏しいエンジンは、依然として静粛性が高いとはいいかねるが、しかしゴロゴロいう音を聞きながら、「たくましく実用的」と思わせるところが、積み重ねてきた実績というもんでしょう。
実際、ソフトウェアを含めて絶え間なく手を入れられるパワープラントは、「ことさらにドライバーをもてなすこともないかわり、失望させることもない」といったレベルを超えてよくなった。無愛想な「インテリア」「シート」も、地味だけれど運転手を疲れさせない。ただでさえ働きモノのゴルフハッチに、長いトランクルームを加えて、実用の二段重ねをしたゴルフワゴン。渋い働きぶりは、「オリバー・カーンみたい」……というのは、サッカー熱に浮かされすぎ?
なお、ベース車GLiより5.0万円高の「Exclusive」は、1000台の限定販売だ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ヨーロッパでは「ゴルフ・ヴァリアント」の名で親しまれているゴルフワゴン。3代目ゴルフの時代に追加されて以来、日本でもハッチバックに匹敵するほどの人気を博している。現行モデルは、ゴルフIVがベースの第2世代で、日本では2000年2月から販売が開始された。
日本では、1.6リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載する「ゴルフワゴンE」と2リッターの「ゴルフワゴンGLi」の2グレードがラインナップされる。両者の差は、エンジンの他、GLiではアルミホイール、アームレスト、ボディ同色のモールとドアハンドルが標準装着になること。FM/AMラジオ付きMDプレーヤーやリモコンドアロックはE、GLiともに標準である。
(グレード概要)
テスト車の「Exclusive」は、2リッター「GLi」ベースの特別仕様車。「オートエアコン」「クルーズコントロール」「ダークティンテッドガラス」「16インチアルミ」「革巻き3本スポークステアリングホイール/ハンドブレーキグリップ」「シフトノブ」そして「スポーツシート」が与えられ、価格上昇は5.0万円に抑えられて280.0万円となる。販売予定台数は1000台。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ブラック一色のトリム。速度、回転計のメーター盤まで黒い。うんざりするほど実務的。とはいえ、樹脂類、シボ付きのフェイシア、ステアリングホイールを巻く革、そしてファブリックまで、黒の色調が揃えられているのが立派だ。インストゥルメントパネル中央上部にエアコン吹き出し口が並ぶところに、電子装備満載の日本車になじむリポーターは若干の古さを感じる。最新モデルなら、ナビゲーションシステムほかのディスプレイが埋め込まれるところだろう。
(前席)……★★★★
サイドサポートが固く張り出したファブリックのスポーツシート。大きく盛り上がったサイドサポートをもつ。座り心地はフォルクスワーゲンの伝統通り(?)硬め。粗い織りのシート地は、手触りがザラつき、夏場は暑苦しく感じるだろう。運転席、助手席ともレバー式のハイトコントロールが備わる。背もたれのリクライニングはダイヤル式。微小な調整ができるのはいいが、急速にバックレストを倒したいときは面倒だ(いうまでもなく)。
(後席)……★★★
座面が窪んでいて太股あたりが膨らんでいるので、お尻をはめ込むようにして座るリアシート。バックレストも凹んでいるので、自然とキチンとした姿勢になる。しっかりしたヘッドレストが左右に設けられる。つまり、ふたり用として実用的なリアシートだ。足先は前席下に入り、ヘッドクリアランスも不足ない。ダブルフォールディングが可能だが、前に倒した座面を戻すときに、シートベルトのキャッチーがクッションの下に挟まれてしまうのは困りもの。細かいことですが。
(荷室)……★★★★
電磁式のオープナーが備わるハッチゲイト。ラゲッジルームの床面最大幅は118cm、奥行き103cm、パーセルシェルフまでの高さは43cm。無駄な張り出しのない使いやすそうな荷室形状。シンプルなスイングビーム式サスペンションの利点を活かして、床下にはフルサイズのスペアタイヤが備わる。フロアは手前25cmほどが折れて上に開くようになっており、深さ28cmの床下収納部へのアクセスが楽にできる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
5200rpmで最高出力の116ps、2400rpmで最大トルクの17.3kgmを発生するシングルカムユニット。スウィートでも速くもないが、フラットな出力で黙々と働く頼もしいエンジン。余談だが、ゴルフの日本導入当初は、“先進の”1.8リッター5バルブユニットを用意したのだが、ストップ&ゴーの多い国内道路事情にあわせて、ふたたび2バルブ(!)の2リッターエンジンをラインナップした、という経緯がある。今後は、動力性能アップより、環境性能への対応がハードルとなろう。コンベンショナル4段ATは、「DSP(Dynamic Shift Program)」と呼ばれる学習機能付き。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
前マクファーソンストラット、後トーションビームというサスペンション形式はもとより、小型車のスタンダードとなった乗り心地は健在。街なかでは硬めだが、一方、高速巡航では高い直進安定性を誇る。ロングドライブでもドライバーのアゴを上げさせない、タフなクルマだ。
ハンドリングはいうまでもなく安定指向だが、不思議なのは、だからといって決して運転が退屈ではないこと。ステアリングやペダル操作へのレスポンスが、控えめだけれど、確実なためだろう。開口部が大きなワゴンボディながら、“走り”の面でのハッチバックとの差異は、同時に乗り較べないとわからないレベルだ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年5月29日から31日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:1479km
タイヤ:(前)205/55R16 91W/(後)同じ(いずれもMichelin Pilot HX)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)テスト距離:396.9km
使用燃料:50.2リッター
参考燃費:7.9km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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