フォード・エスケープ 3リッターV6(4AT)【海外試乗記】
『ドライビング・エンタテイメントSUVと、ノー・バウンダリーズ・アウトフィッターズ』 2000.11.18 試乗記 フォード・エスケープ 3リッターV6(4AT) マツダの新SUV、トリビュートの短評はすでに掲載したが、そのトリビュートはご存知の通りフォード・エスケープの姉妹車。じゃあ、トリビュートと一緒に開発され、右ハンドル版はともに山口県は防府工場で作られるエスケープとは、どんなクルマなのか? 正式には2000年12月ごろ日本市場に導入されるエスケープ、半年前のアメリカでの現地版試乗会の記憶を頭の奥から引っぱり出して、トリビュートと比べてみよう。 もちろん日本に入るエスケープは、あの時点とは多少変わっているはずだ。![]() |
限界なき世界への挑戦
エスケープも、エンジンはトリビュートと同じ2リッター直4と3リッターV6の2種だが、アメリカで乗ったのはデュラテックと呼称される3リッターV6搭載モデルのみ。
トリビュートが「ドライビング・ダイナミクス」と都会感覚を打ち出しているのに対して、エスケープを初めとするフォードSUVの新しいコンセプトは、「No Boudaries/Ford Outfitters」……いってみれば「限界や境界なき世界へ誘うフォードの道具」という精神。つまり都会に留まっているトリビュートと違って、もっと外の世界に飛び出そうとする人のためのSUVということだ。
といっても、必ずしも物理的なアドベンチュアやアウトドア志向ということではなく、精神において自分の殻をうち破る、自己限定を外すというような意味だろう。
だから、マツダが仮想ユーザーを20代後半から40代まで広く設定しているのに、フォードは25〜30歳クラスの、かなり尖ったSUVユーザーを狙うという。
気持ちのいいアメリカンテイスト
半年前の記憶からするなら、エンジンはあのサイズのSUVとしてはパワフルだけど、同時に結構うるさかったというよりは、意図的にワイルドな音を出すような感じだった。その点ではトリビュートも似ている。基本的にはスムーズだし、なんといってもトルクがあるが、決して静かではない。かといって、それが不快でもない。
ハンドリングは、アメリカのこの種のクルマとしては抜きんでて良かった。まずセパレートシャシーではなくモノコックに近い構造が効いて、シャシーとボディがゆがむような感じは一切ない。
気に入ったのはロール感覚で、高めの視点からするとこの種のクルマはかなりロールするように感じるものだが、エスケープの場合、ロールはしても前後タイヤのグリップが全身で感じられて安心感がする。フォードのSUVとしては最初のFFベースだが、前後グリップは安定しているし、特にリアの追随性がいい。
実は、これは後にトリビュートに乗ってさらに強く感じた。フォードの姉妹車は、通常の乗用車のような軽快さを持つのだ。やはりマツダのDNAは入っていた。
エスケープの場合、基本的な感覚は同じでも、もっとサスペンションストロークが長く、全般的にセッティングもソフトだった。ステアリングもトリビュートよりスローに設定してアメリカ人一般のSUVに対する感覚に合わせていると言われたが、トリビュートに乗った後では、それも理解できた。
つまりエスケープの方が、よく言えば快適でしなやか、そしておおらかな感覚(でも他のアメリカの同種のクルマよりはスポーティ)、悪く言えばやや大味でフワフワ(日本版は多少硬くなるともいわれる)。一方のトリビュートは、より乗用車的にスポーティで敏捷というところだろう。
![]() |
一粒で二度おいしければいい
あとはスタイルと内装の違い。ルーフ以外は共用パーツはないというのだから、本当は両方ともにもっと個性を出してもらいたかった。ともに新しいタイプのSUVを狙う以上、コンセプトカー的な意匠で勝負してもらいたかったけれど、それは部外者たるプレスの勝手な言い方かも知れない。
アメリカではフォードのSUVは家庭用のクルマとしてもかなり保守的な市場で受けているし、トリビュートはマツダにとって事実上初めての分野への挑戦だから、形であまり冒険したくなかったのだろう。
エスケープの価格は現時点では不明だが、直4,V6とも4WDのみで、必要な装備は最初から付けた状態で売るというらしいから、トリビュートの上級版に近い値段になると予想される。
エスケープは、かつてのオートラマのフォード車のようにマツダのバッジ・エンジニアリング版ではなく、トリビュートとプラットフォームは同じでも、日米で性格をきちんと分けている。ユーザーにとっては、選択範囲が広がっていいだろう。
(文=web CG エグゼクティブディレクター 大川 悠/写真=フォード・ジャパン・リミテッド/2000年11月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
NEW
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。








