メルセデス・ベンツE350クーペ(FR/7AT)
穏やかにスポーティー 2013.08.05 試乗記 マイナーチェンジが施された「Eクラス クーペ」に試乗。登場から4年を経て、メルセデス・ベンツの2ドア4シーターモデルは、どのように変わったのか?より美しく、より安全に
「メルセデス・ベンツEクラス」のセダン、ステーションワゴンに続いて、クーペとカブリオレもマイナーチェンジを受け、2013年8月5日から日本での販売が始まった。“ビッグな"変更点は、「顔つきが変わったこと」「安全装備のさらなる充実」、そして「ベースグレードに新エンジンを採用したこと」である。
「すべては美しいときめきのために」。なんとなく、胸の奥がむずがゆくなるようなうたい文句が付いたクーペ&カブリオレ。顔つきは、ビックマイナー後のEクラスそのものになった。片側2つに分かれていたヘッドランプはまとめられ、代わって、くさび型に並べられた2連のLEDランプが、Eのイメージを踏襲する。
ご存じのように、Eクラス クーペのベースは、W204こと「Cクラス」。CクラスそのものにもC204ことクーペが用意されるのでややこしいのだが、2760mmのホイールベースはそのままに、ボディーはCクーペよりわずかに長い4705mm(AMGスポーツパッケージ装着車は4745mm)。幅は1785mm、全高は1395mmである。
依然として1.8リッター直4ターボ(156psと204ps、2種類のチューンがある)を搭載する「C180クーペ」「C250クーペ SPORT」に対して、「E250クーペ」には、早速新しい2リッターターボが採用された。最高出力は211ps/5500rpm、最大トルクは35.7kgm/1200-4000rpmとなる。新エンジンを使いながら、価格は据え置きの669万円。C250クーペよりは、71万円高い。
3.5リッターV6(306ps/6500rpm、37.7kgm/3500-5250rpm)を積む「E350クーペ」も価格は変わらず875万円。パワートレインのスペックにも変更はない。
4.7リッターV8ターボをパワーソースとするトップ・オブ・Eクーペ、「E550」は、35万円高の1145万円となった。最高出力408ps/5000-5750rpm、最大トルク61.2kgm/1600-4750prmのアウトプットは、同じだ。
ドライバーを信ずればこそ?
今回の試乗車は、E350クーペ。深いキャラクターライン、獣の後脚を思わせるリアフェンダーの膨らみがスポーティー。弓なりのルーフラインが、いかにもクーペだ。フロントのグリルには、キリリと太めのバーが1本入る。
少々大げさなエアダムが大口を開けているのは、AMGスポーツパッケージ装着車だからである。前後左右に専用のエアロパーツが付き、18インチのアルミホイールもAMG仕様となる。ただし、前235/40R18、後ろ255/35R18のタイヤサイズは変わらない。
車内もAMGのスパイスが利いていて、革巻きステアリングホイールはAMGタイプ。シートの座面左側には、腰の後ろのサポート位置やサイドサポートの広さ、座面の長さなどを微調整するダイヤルが、ズラリと並ぶ。汗かきのオーナーにとっては、シートにベンチレーション機能が付くのがうれしいだろう。AMGスポーツパッケージは、30万円のセットオプションだ。
いざ走りだそうとして気がつくのが、ATセレクターが、フロア式からコラムシフトになっていること。トンネルコンソールには、ナビ、オーディオなどを操る「COMANDシステム」の円筒形コントローラーが設けられる。
メルセデスがコラム式のシフターを採用し始めて久しいが、個人的には、いまだに「いかがなものか!?」と思う。操作性が悪いうえに、ほかのレバーとまぎらわしい。具体的には、ウインカーレバーやクルーズコントロールのレバーと間違いかねない。
かつてのメルセデスは、「人間は、間違える生き物」という前提に立って安全を考えていた。例えば2速発進をデフォルトにして、運転者に周囲を確認させる余裕を持たせていた。「そんな昔語り(!?)をしても仕方ないけれど……」と考えていたら、試乗車に乗って来た『webCG』の人が、「このクルマ、スピードリミッターが付いているんだね」と言った。「いつの間にかリミッターが作動していて、アクセル踏んでも加速しないんで、あせったわ」と笑う。
「アララ……」と思った。実は、前の週にEクラス セダンに乗っていて、同じ失敗をしたからだ。メルセデスの「可変スピードリミッター」は、クルーズコントロールレバーを使って設定する。ディストロニック・プラスを使うつもりで走行中にイジッていたら、リミッターを設定してしまったらしい。高速道路に入った直後、速度が上がらなくてキモを冷やした。もちろん、事前に説明書を熟読しなかった自分が悪いのだが、「昔のメルセデスだったら……」と、ちょっぴり寂しく感じた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「高級車って、こうだよな」
新型Eクラスは、5つのレーダーセンサーと一対のカメラで周囲を監視するシステムを引き継いだ。
斜め後方の死角に他車が入ったことを警告する「アクティブブラインドスポットアシスト」や、前走車との車間距離を保ちつつ追従する「ディストロニック・プラス」はもちろん、衝突の危険性を感知するとドライバーに警告する「BASプラス(飛び出し検知機能付きブレーキアシスト・プラス)」、そして、実際に自動でブレーキがかかる「PRE-SAFEブレーキ(歩行者検知機能付き)」を備える。
さらに、後方から追突される可能性があるときに、リアランプを点滅させて後続車に注意を促し、最悪の場合にはブレーキをかけて玉突き事故を防ぐ「リアCPA(被害軽減ブレーキ付き後方衝突警告システム)」に、車線から外れそうになると、ステアリングホイールを振るわせて運転者に知らせる「アクティブレーンキーピングアシスト」など、ハイテクな安全機能の充実は目を見張るばかり。これで、E350クーペの車両本体価格に変更はないのだ。
自動車メーカーを問わず、ダウンサイジング過給のトレンドに乗ったエンジンを積む試乗車が多いなか、久しぶりに自然吸気の3.5リッターV6に乗る。ピエゾインジェクターを用いた、直噴エンジンである。カタログ燃費は、12.8km/リッター。アクセルペダルを踏むに従い、豊かなトルクが次第に湧き出てきて、「そうそう、高級車って、こうだったよな」と思い出させる。
少々過剰にスポーティーな装いをしているが、ドライブフィールに運転者をせき立てるところはない。穏やかに、余裕を持ってクルージングできる。6気筒に組み合わされるのは7段AT。100km/h巡航時、トップギアでは、1600rpm付近でゆるゆる回っているばかり。足まわりの硬さは可変式で、「コンフォート」と「スポーツ」から選べるが、日本の交通事情では、前者ですべてこと足りる。いつしかスピードリミッターにまつわる失敗も笑い話にして、ディストロニック・プラスでの安楽ドライブを楽しんでいた。
(文=青木禎之/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツE350クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4745×1785×1395mm
ホイールベース:2760mm
車重:1710kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:306ps(225kW)/6500rpm
最大トルク:37.7kgm(370Nm)/3500-5250rpm
タイヤ:(前)235/40R18 91Y/(後)255/35R18 94Y(ダンロップSP SPORT MAXX GT)
燃費:12.8km/リッター(JC08モード)
価格:875万円/テスト車=905万円
オプション装備:AMGスポーツパッケージ(30万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1953km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:320.3km
使用燃料:37.8リッター
参考燃費:8.5km/リッター(満タン法)/9.4km/リッター(車載燃費計計測値)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。 -
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気
2026.1.15エディターから一言日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。 -
ルノー・グランカングー クルール
2026.1.15画像・写真3列7座の新型マルチパーパスビークル「ルノー・グランカングー クルール」が、2026年2月5日に発売される。それに先駆けて公開された実車の外装・内装を、豊富な写真で紹介する。 -
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する
2026.1.15デイリーコラム日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。

































