メルセデス・ベンツCLA180(FF/7AT)
新しい時代の“顔” 2013.11.14 試乗記 欧州はもちろん、日本市場に対しても積極的にニューモデルを投入し、攻勢をかけるメルセデス・ベンツ。続々と登場するニューフェイスの中から、今回は従来とは異なる顧客層の獲得を担うFFセダン「CLAクラス」に試乗した。新規開拓はブランドの至上命題
2013年に入ってからのMBJ(メルセデス・ベンツ日本)の勢いが止まらない。1月に発表した「Aクラス」は前年末から例の「スペシャルアニメ」による積極的なティザーキャンペーンで確実なスタートダッシュを果たし、2月には「SLK200」にMTを追加。4月には「GLクラス」をフルモデルチェンジ。そして7月には今回の「CLAクラス」、さらに最高級セダンである「Sクラス」も11月上旬に販売を開始している。このほかにも大幅な改良を行ったモデルを加えると、毎月「これでもか!」という位、話題を提供し続けているのだ。
プレミアムブランドであるメルセデス・ベンツではあるが、従来までの顧客だけでは次の時代を生き抜いていくことは難しい。そんなことは百も承知でこの層を維持しつつ、新規顧客を獲得しなければならない。ビジネスである以上当然の考えである。
ではその新規顧客とはどのような層を指すのだろうか。単純に年齢などで区分けするのは最近のマーケット手法ではある意味ナンセンスという声も聞こえてきそうだが、それでもメルセデス・ベンツが資産として持つ「ロイヤルカスタマー」の若返りは必至だろう。昔ながらの、階段を登るようにクルマのクラスを上げていくのではなく、国産高級車からのダウンサイザーや輸入車の他ブランドからの積極的な移籍も当然視野に入る。
とにかく目立つスタイリング
先に結論を言ってしまうと、良くも悪くも「目立つ」スタリングであることは間違いないだろう。
2004年に、従来のセダンの概念を覆す「4ドアクーペ」というカテゴリーを確立した「CLS」のコンパクト版と見る向きもあるだろうし、素直に新しいデザインのクルマ、と感じる人もいるだろう。
参考までに「Cクラス」と比較してみると、「C180」が全長×全幅×全高=4595×1770×1445mmなのに対し、こちらは4640(AMGライン装着の場合は4685)×1780×1430mm。見た目以上にコンパクトに見えるのは、全高がCクラスより低いことと後端に向かって流れるように傾斜したボディーラインによる、視覚的な影響が大きい。もちろんこのデザインは空力的にも優れており、Cd値0.23はベースとなったAクラスを大きくしのぐ。
また何よりもインパクトがあるのはフロント周辺の造形だろう。中央に組み込まれたスリーポインテッドスター、LEDポジショニングライトなどにより、とにかく目立つ。取材中にこのクルマがルームミラーに映った時、思わず車線を譲ろうとしてしまった自分がいた位で(情けない)、とてもこのカテゴリーのクルマには見えないほど迫力がある。
インテリアに目を向けてみると、昨今のA/Bクラスに共通したトリムを立体的にあしらった新世代モデルにふさわしい造形。言い換えれば丸型のエアアウトレットなどは「SLS AMG」的(本当はそこまで精緻なデザインにはなっていないが)でスポーティーな演出もうまい。
フロントシートに関しては適度なホールド感、体全体、特に腰椎や臀部(でんぶ)を面で支え、長距離走行時の疲労も抑えてくれる構造など出来の良さは一級品である。一方、外から見ただけで予想がつくリアシートのヘッドクリアランスまわりは、身長170cm以上の人ではさすがに厳しい。乗降時にも頭をぶつけないように注意が必要だし、足元は見た目以上に広いのに、サイドウィンドウの傾斜やルーフの低さは結構な圧迫感である。ただCLAの肩を持つわけではないが、大人2名、または大人2名+子供2名といった若年層やセミリタイア層、さらにニューファミリーなどがターゲットカスタマーと考えれば、十分納得がいく。
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気持ちがいいのは高速域
いまさら説明は不要かもしれないが、CLAは先行するA/Bクラスから導入が始まったメルセデス・ベンツの新しいFF用プラットフォーム「MFA(Modular Front Architecture)」を採用している。今回試乗した「CLA180」は、1.6リッター直4直噴ターボ(122ps、20.4kgm)やトランスミッションも含め「A180」「B180」と基本共通。このプラットフォームはすでに発表されているSUVの「GLAクラス」や、いずれ発表されるであろうステーションワゴン版CLAにも使われる予定だ。
Aクラスもそうであったように、このCLAクラスも全体としては味付けはスポーティー路線を狙っていることがわかる。しかしステアリングの「軽さ」に対し、低速から中速にかけての突っ張ったようなフロントサスの動きはやや気になる部分だ(タイヤの太さにも原因はあるはず)。また7段デュアルクラッチ式ATの「7G-DCT」と「DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)」との協調制御に関連しているのだろうが、全体的に走りだしがマイルドすぎる。エンジン回転数を一定まで(2000rpm程度)上げつつ過給が付いてくれば、自分のイメージする加速感覚とズレがないのだが、クルマのスムーズさ、見方によっては上質感を走りの領域で演出するとなると、これ以上過敏にするとギクシャク感が伴う可能性があるかもしれない。
また、これが顕著なのは「ECOモード」の時で、「SPORTモード」にすればだいぶ感覚は改善される。ただそのためにモードをいちいち切り替えるというのも本末転倒。実用燃費を従来以上に高めたいという狙いはわかるが、この辺の制御はもう少しストップ&ゴーの多い日本の道路事情にミートさせてくれるとありがたいと感じた。
一方でステージを高速に移すと印象はかなり良くなってくる。あれほど市街地で突っ張っていた(特に交差点の右左折などで顕著)足まわりの動きは逆に路面追従の方向へうまく作用しているし、ステアリングの軽さに連動して付いてきた細かな振動もうまく吸収され、操舵(そうだ)フィーリングは明らかに向上する。
戦略的な価格は魅力的だけれど……
装備面に関しては、やはり昨今話題の先進安全技術に注目したい。衝突警告を行う「CPA(衝突警告システム)」は全グレード標準装備だが、これに緊急ブレーキ機能を加えた「CPAプラス」は、レーンキーピングアシストやディストロニック・プラスなどと組み合わせた「セーフティーパッケージ」として「CLA45 AMG 4MATIC」以外には19万円のオプションとなる。ここが非常に難しい所で、「CLA180で335万円」という抜群のお値打ち感は理解できるのだが、結局このパッケージはほぼマストアイテムとして装着すべきだと考える。ならば見た目のお買い得感よりも、標準装備化して「メルセデス・ベンツは安全も一流である」という部分をアピールした方がよいのではないだろうか。
また余談だが、ディーラーオプションのHDDカーナビの性能も昔に比べれば向上しているが、地図の精度や更新に関しては国産車に比べて見劣りする。実際「ナビは付いていればいい」という声も筆者のまわりで聞く。昨今アウディが「A3スポーツバック」で国産車に迫るテレマティクスサービスを開始したように、先進安全装備との協調制御も含めてこの領域も進化させることが今後の課題になってくるのではないだろうか。
メルセデス・ベンツの新しいアプローチとして注目のCLAクラスだが、最後に理解しておきたいのは、このクルマがCクラスに代わるわけでもなんでもないということである。Cクラスとは価格はもちろん駆動方式、さらに走り味も全然違う。つまりCLAはまったく新しいモデルなのだ。欲しい人は、従来の熱心(!?)なメルセデス・ベンツ ユーザーに「これはメルセデス・ベンツではない」などと言われても、そんなことは意に介さず買ってしまえばいい。だって外見はどう見てもメルセデス・ベンツなわけだし、逆に言えばまったく新しいスキーム(枠組み)で開発されているわけだから、これまで手を伸ばしづらかった若年層や子育てを終えた夫婦など、新しい市場を開拓できる高いポテンシャルを持っているはずだ。
(文=高山正寛/写真=森山良雄)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツCLA180
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1780×1430mm
ホイールベース:2700mm
車重:1470kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:122ps(90kW)/5000rpm
最大トルク:20.4kgm(200Nm)/1250-4000rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92W/(後)225/40R18 92W(グッドイヤー・イーグルF1)
燃費:17.4km/リッター(JC08モード)
価格:335万円/テスト車=412万3000円
オプション装備:セーフティーパッケージ<ブラインドスポットアシスト+ディストロニック・プラス+レーンキーピングアシスト+CPAプラス+プレセーフ>(19万円)/バリューパッケージ<バイキセノンヘッドライト&ヘッドライトウオッシャー+LEDウィンカー+LEDポジショニングライト+LEDリアコンビネーションランプ+LEDリアフォグランプ+アームレスト(後席)+カップホルダー(後席)+パークトロニック+アクティブパーキングアシスト+トランクスルー機構+メディアインターフェイス(iPod/AUX/USB)>(20万円)/エクスクルーシブパッケージ<本革シート(前席シートヒーター付き)+クライメイトコントロール(左右独立調整)+コンビニエンスオープニング・クロージング機能+メモリー付きフルパワーシート(前席)+リバースポジション機能付きドアミラー(助手席側)+電動ランバーサポート(前席)+レザー調インテリアトリム+レザーARTICOダッシュボード+フロアマット>(32万円)/ボディーカラー<ユニバースブルー(メタリックペイント)>(6万3000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3703km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:241.0km
使用燃料:20.1リッター
参考燃費:12.0km/リッター(満タン法)/12.5km/リッター(車載燃費計計測値)

高山 正寛
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