第225回:最新のポルシェが大集結
ポルシェ フルモデルレンジ試乗会(後編)
2014.02.06
エディターから一言
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最新のポルシェがずらりと並んだ「ポルシェ フルモデルレンジ試乗会」。
前編に引き続き、4台のポルシェに試乗した。
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ポルシェ・パナメーラ(FR/7AT)……価格=994万円/テスト車=1199万2000円
「パナメーラ」に試乗する前は、「ステーキ食べ放題におけるデザート」くらいに考えていたのだが、それは大変な誤りであった。
これまでパナメーラを町で見かけるたびに、「フロントエンジンで、ドアが4枚もついているポルシェなんて……」と心のどこかで思っていたのだが、それはまさしく食わず嫌いの最たるもので、青春ドラマだったら「お前、いいヤツだったんだな。ゴメンよ!」と、夕焼け空の河原で熱い握手と抱擁を交わしているところである。
4シーターサルーンなどという、軟弱者のいでたちでありながら、そのくせいざ走りだしてみると、大きすぎると思っていたボディーサイズはふた回りくらい小さく感じるほど、しっかりスポーティー。
目の前にある5連のメーターはコックピット感たっぷりで、この点でも「諸般の事情によりスポーツカーには乗れないんです」というお父さんの気持ちを満たしてくれるだろう。
こんな大きくてドアがたくさん付いているクルマなのに、ちゃんとその気にさせるあたりにポルシェのスゴさを感じる。
森田健作だけが「男」ではないように、911だけがポルシェではないのだと、あらためて感じた次第だ。
ポルシェ・カイエン ターボS(4WD/8AT)……価格=1977万円/テスト車=2285万円
「走るなまはげ」と個人的に命名している「カイエン ターボS」。
高速道路でこのクルマがミラーに映ると「泣く子はいねがー!」という声が聞こえてきそうで、すぐに車線を譲ってしまう。
これだけの押し出しの強さは、そう簡単に醸し出せるものではない。
例えば「日本の若者が週末夜の国道を低速で集団走行するための改造車」の類いだと、やりすぎてどこか滑稽になってしまっている症例が多く見られる。
けれども、カイエン ターボSの場合は、最大限押し出しを強めながらも、一線を越えてはいない。この「そんじょそこらのワルじゃない」雰囲気には、付け焼き刃ではない、ある種伝統の風情すら感じる。
初代の「カイエン」がデビューしてまだ12年ほどしかたっていないのに、この風情を身に付けるなんて、すごい。
500psを発生するV8ターボエンジンの実力は、今回の試乗コースでは、スーパーの総菜コーナーの味見に使われたつまようじの先ほども体験することはできなかったが、ほんの少しアクセルに力を込めると、もうほとんど「泣く子はいねがー!」状態で突進してゆく。
けれども、そのパワーは決して扱いにくい、暴力的なものではなく、「なんかみなぎっちゃってるなー、俺」と客観的に感じる余裕があるから困ったものだ。
どうにも手に負えない暴れ馬でない、私のような乗り手にさえも余裕を感じさせるなんて、このクルマただのワルじゃないぞ。
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ポルシェ・パナメーラ ターボ エグゼクティブ(FR/7AT)……価格=2415万円/テスト車=2551万4000円
これはかなり「ヘンなクルマ」だ。
「フロントエンジンで、ドアが4枚もついているポルシェなんて……」というのがパナメーラに対する印象だったことは、先ほど述べたが、この「エグゼクティブ」は、ただでさえ5mを超える長いパナメーラのボディーを、さらに15cmも延ばしちゃったのだ。
なんのために! それはもちろん、エグゼクティブな後席住人のために! だ。
中国市場では、こういったボディーを延長したクルマが必要とされていると聞いてはいるが、なにもポルシェでやらなくても……、というのが率直な感想だった。純粋に後席の快適性を求めるなら、もっとほかのクルマがあるではないか、と。
けれども、いざ運転してみるとその印象は一変した。ポルシェのやることだから、ホイールベース延長に伴うボディー剛性の確保なんかはしっかりとなされているのは当然だろうけど、長くなった分だけ鈍になったという感覚はなかった。
以前、仕事で「日産セドリック」のボディーをオーテックが15cm延長したクルマのハンドルを握っていたことがあるのだが、アレはお世辞にも運転して気持ちいいといえるクルマではなかった。
その印象をこのクルマに持ち込むべきでないのはもちろんだが、「長いこと=悪」であると思っていた私にとっては、目からウロコだ。
例えば運転手付きでの移動と自らハンドルを握る機会が半々くらい、というような人であれば、このクルマはとても魅力的だろう。
そんな人はメルセデスの「Sクラス」との911の両方を所有すればよさそうなものだが、「ポルシェ以外のクルマになんか、乗りたくないもんねー」というエグゼクティブもきっといるに違いない。
昨今話題の「ネオヒルズ族」のように、いつでもアクティブでアグレッシブな自分を演出するためのクルマとしては、ちっとも「ヘン」じゃない、むしろ大本命なのだろう。
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ポルシェ911カレラ4Sカブリオレ(RR/7AT)……価格=1774万円/テスト車=2015万9000円
さて、本日の試乗会で最後に乗ったのが「911カレラ4Sカブリオレ」である。
用意されたクルマは、「コニャックメタリック」という個性的なボディーカラーに身を包んでいる。ハッキリ言ってかなり地味である。それにレッドの幌(ほろ)が組み合わされているものだから、赤いちゃんちゃんこを着た還暦のお祝いみたいに見えなくもないが、個人的にはこのシブい感じがとても好みだ。
インテリアカラーも、80年代の日本車みたいな色味で、そうなってくると最新の素材であるはずのカーボンパネルも、当時流行していた市松模様のチェッカードフラッグ風装飾(ほら、ステアリングホイールに巻くメッシュのカバーなんかがあったでしょ?)みたいに見えてくるから不思議だ。
もし購入するなら、このまんまの仕様で欲しい。
走りだす前からすっかり気に入ってしまったが、走ってもカレラ4Sカブリオレというクルマはお気に入りの一台だった。
最初に乗った911カレラよりも、ドライブフィールが全体的にギュッと引き締まっているように感じた。それが後輪駆動と四輪駆動の違いなのか、エンジンパワーの差によるものなのか、悲しいかな私にはその理由を感じ取ることはできなかったが、カレラ4Sカブリオレのほうが「おいしい」と感じた。
ただ、ひとつこのカレラ4Sカブリオレで物足りなさを感じたのが、ブレーキだ。
最初に乗った911カレラにはオプションのPCCB(150万2000円)が装着されていた。これがとっても気持ちいい。
無論、カレラ4Sカブリオレのブレーキが悪いというわけではなく、ノーマルでも何ら問題ないわけではあるが、あちらを経験してしまうと、やっぱり欲しくなってしまう。
150万円超という、高額なオプション装備だが、車体価格1774万円ということから考えると、ラーメンに「煮タマゴ」をトッピングするくらいのものだ。
私はラーメン屋の券売機の前でいつも「ちょっと待て その煮タマゴは 必要か」という標語を唱え、不用意にトッピングを追加してしまわないように心がけているが、PCCBはトッピングすべき煮タマゴと言っていいだろう。
というわけで、思う存分ポルシェを味わうことができた。
食べ過ぎてお腹いっぱいになるかと思いきや、まだまだ余裕がある。
「もう一杯、おかわり!」といきたいところだが、残念ながら「食べ放題タイム」は時間切れ終了だ。
これだけ多様なラインナップを持ちながら、どのクルマにもしっかりとポルシェのDNAが刻まれており、あらためて自動車の歴史にさんぜんと輝く「ポルシェ」というブランドのすごさを目の当たりにした一日だった。
(文=工藤考浩/写真=田村 弥)
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工藤 考浩
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