プジョー2008シエロ(FF/5AT)
アーバンクロスオーバーという価値 2014.02.19 試乗記 群雄割拠のコンパクトセグメントに登場した、プジョー期待のニューモデル「2008」。新パワーユニット「PureTech」を搭載する、アーバンクロスオーバーの使い勝手と走りを試した。ドロくささはいらない
機能的でスタイリッシュ! コンパクトなアーバンクロスオーバーが登場した。2012年秋にデビューしたコンパクトハッチ「プジョー208」をベースにした「2008」がそれ。
「ホンダ買うボーイ。」こと初代「ホンダCR-V」や、キムタクが宣伝していた「トヨタRAV4」が発売されたのが1990年代半ばだから、ほぼ20年をかけて、日本発のトレンドが、欧州の自動車市場を席巻したわけだ。ムネアツ。ちなみに、208のワゴン版「SW」は、開発されていないらしい。
プジョーのクロスオーバー系を表す「00」系の末弟となった2008は、208のホイールベース2540mmはそのままに、全長を200mm延ばして4160mm、全高を80mm高めて1550mmにしたクルマ。1740mmの全幅は変わらない。
「ホンダ・フィット」ベースの「ヴェゼル」、「ルノー・ルーテシア」のクロスオーバー版と位置づけられる「キャプチャー」などと似たようなサイズだが、2008は、三者の中では、最も細く、低い。都市部での取り回しのよさが期待でき、入庫できる立体駐車場が多い点も、まさにアーバンカーボーイ……じゃなくて、アーバンクロスオーバー。
広告のキャッチフレーズは、「いつもの街が違って見える」だとか。街乗り主体なので、ドロくさい(!?)4WDモデルは用意されない。駆動方式は、FFのみとなる。
注目は新しいトランスミッション
日本に入るプジョー2008の動力系は、1.2リッター直列3気筒(82ps/5750rpm、12.0kgm/2750rpm)と、2ペダル式5段MT(オートマチックモード付き)との組み合わせのみ。
1.2リッター3気筒「EB2」ユニットは、先行して発売された「208アリュール」(5MT)と同じもの。一般的な4気筒エンジンより、シリンダー1本分、コンパクトで軽量。同じ1.2リッターでも、ルノーの4気筒直噴ターボ「H5F」ユニット(120ps、19.4kgm)と比較すると、ずいぶんショボ……、地味なつくりで控えめなスペックだが、実際に乗ると、ライブリィで適度なトルク感があり、また(燃費にはよくないが)フルスケール回しても楽しいエンジンだ。個人的に、好き。
注目は、「ETG5(Efficient Tronic Gearbox 5)」と名づけられた2ペダル式5段MTのトランスミッション。シングルクラッチをアクチュエーターで操作するロボタイズドタイプで、もちろん、オートマモードあり。
ETG5は、「プジョー206」時代から使われる2トロニックを発展させたもので、プログラム関係がブラッシュアップされ、特にオートマチックモードで走る際に、進化を実感できる。トルコン式AT並みにペダル操作に頓着しないで運転しても、ギアチェンジがスムーズだ。
これは、従来、運転者がシフトするタイミングでフッとアクセルを緩めていた、その操作を、クルマが自動でやってくれるようになったから。つまり、ギアボックスとエンジンの協調制御が(ようやく)採り入れられたためだ。
「シングルクラッチの2ペダルMTは、シフトのたびに船をこぐように上体が揺れるのが、どうもなァ……」と、ご不満を感じていたアナタ。ぜひ、新しい「ETG5」をお試しください。
スペックはライバル車に劣るけれど……
プジョー2008の、日本でのラインナップは、「Premium(プレミアム)」と「Cielo(シエロ)」の2種類。名前だけではどちらが上級版なのかわからないが、車両本体価格は、プレミアムが246万円、シエロが270万円である。
シエロでは、パノラミックガラスルーフが天井に広がり、シートがアルカンターラ+レザーになるのが主な違い(プレミアムのシートは、ファブリック+レザー)。205/55R16のタイヤサイズを含めて、機関面での差はない。
ホンダ・ヴェゼルが、1.5リッター+CVTで219万円から。ルノー・キャプチャーが1.2リッターターボ+デュアルクラッチ式6MTで249万8000円から。冷静にスペックだけを見比べると、2008は不利かもしれない。けれども、この手のコンパクトなクロスオーバーは、かつての2ドアクーペのようなもの。極めてパーソナルな車種だから、姿カタチが気に入って、運転して不満がなければ、あまり他者を気にする必要はないだろう。
ドライバーズシートに座ると、見慣れた(!?)208のインストゥルメントパネルが目の前にある。センターコンソールには、7インチのディスプレイが無理なく埋め込まれる。純正のナビシステムを組み込むのは、17万8500円のオプション(工賃別)となるものの、“後付け然”としたナビを装着して平然としている最近のドイツ勢を考えると、プジョー(ジャポン)の努力は立派だ。
フレンチコンパクトらしい軽快感は健在
プジョー2008用インテリアのハイライト、飛行機のレバーを模したパーキングブレーキを下ろして、走り始める。ステアリングホイールは、いかにもプジョーらしい小径タイプ。
2008の車重は、プレミアムが1140kg、シエロで1160kgと、ハッチバックの208より大人1~2人分重くなっているが、いかにもフレンチコンパクトらしい軽快感は損なわれていない。ステアリング操作に対する反応が機敏で、運転が楽しい!
前述の通り、ETG5のシフトはスムーズで、時にパドルを使ってギアを落とすと、控えめにブリッピングしてキレイに回転を合わせてくれる。しばらくするとオートマモードに回帰する。一方、マニュアルモードでは、たとえ回転計の針がレブリミットにブツかっても、選んだギアは固定したままだ。
ETG5を搭載した2008は、坂道発進時には自動でブレーキをかけて、ブレーキからアクセルペダルに踏み換える際に後退するのを防いでくれる。また、疑似的にトルコンATのようなクリープも発生させる。停車時にブレーキペダルから足を離すと、クラッチをミートして、意外なほど力強くジリジリ進む。ちょっとした登り坂なら、そのまま登ってしまうほど。ETG5のギア比は3ペダル式MTのそれと同じだが、ファイナルを落としてあるのだ。
プジョー2008では、信号待ちなどでストップすると、エンジンが自動で停止する「ストップ&スタート機構」も採用された。カタログ燃費は、プレミアム、シエロとも、18.5km/リッター(JC08モード)と記される。
アーバンカーボーイを気取りたい方。ハッチバックより荷物が積めるフレンチコンパクトが欲しい人。いつもとは違った街を見たい人。プジョー2008を検討してみてはいかがでしょう?
(文=青木禎之/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
プジョー2008シエロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4160×1740×1550mm
ホイールベース:2540mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:5段AT
最高出力:82ps(60kW)/5750rpm
最大トルク:12.0kgm(118Nm)/2750rpm
タイヤ:(前)205/55R16(後)205/55R16(ミシュラン・エナジーセイバー)
燃費:18.5km/リッター(JC08モード)
価格:270万円/テスト車=270万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(-)/高速道路(-)/山岳路(-)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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