スズキ・スイフトスポーツ(FF/6MT)【試乗記】
ホットハッチのど真ん中 2011.12.21 試乗記 スズキ・スイフトスポーツ(FF/6MT)……174万3000円
ホットハッチ受難の時代に、一人気を吐く「スイフトスポーツ」。新型はいかなる進化を遂げたのだろうか。箱根のワインディングロードで試した。
タイヤひと転がりで「オッ!」
晴れわたった箱根スカイラインから料金所を抜け、試乗会場へと戻る。「スズキ・スイフトスポーツ」のステアリングホイールを握り、ギアを変えながら、「年末に、ずいぶんといいクルマに出会っちゃったなァ」とニンマリする。
ベースとなる「スイフト」がモデルチェンジをしてから1年余り。新旧の外観の違いは、よほどのマニアが見ないと区別がつかないような地味なものながら、内容の充実は著しい――そんなスイフトの変わりぶりが、エンジンをパワーアップし、足まわりをチューンした同シリーズきってのホットバージョン、スイフトスポーツでも踏襲された。
「WRC(世界ラリー選手権)」のエントリー部門とでもいうべき「JWRC」に出場していたスイフトスポーツ。「チャンピオンイエロー4」と名付けられた、ラリーカーのイメージカラーにペイントされた試乗車に乗り込む。ざっくりとした生地のスポーツシートは、座面、背もたれとも大仰なサイドサポートが生えていて、「ウレタンの厚みで大きな横Gを受けとめん」といわんばかりの、少々武骨な形状だ。赤い「Sport」の刺しゅうとステッチがスペシャル感を高める。
「タイヤひと転がりでクルマがわかる」とは某大家の言葉だが、新型スイフトスポーツもステアリングホイールを握って走りだしたとたん、「オッ!」と思わせるものがある。ステアリングの剛性感が高い。ゆるゆると動き出した段階でも、ステアリング操作とクルマの動きとの直結感が明確で、これからの「走り」に大いに期待を持たせる。実際、新しいスイフトスポーツは、山道を走らせてもすばらしいものだった。
高まったスタビリティー
スイフトスポーツの動力系は、1.6リッター直4エンジンと6段MT、またはCVTを組み合わせる。ノーマルスイフトに搭載される1.2リッターエンジンが最高出力91ps、最大トルク12.0kgmであるところ、スイフトスポーツの「M16A」型パワーユニットは136ps、16.3kgmと、排気量アップに見合ったアウトプットを発生する。
吸排気バルブの可変化に加え、吸気管路をエンジン回転数に応じて切り替えるシステムを搭載。先代モデルと比較しても、100rpm高い6900rpmで11psアップのピークパワーを獲得し、一方で最大トルクは400rpm低い4400rpmで得るという骨太の4気筒だ。バルブのリフト量も増加させたスポーティーなパワーユニットで、チューンされた自然吸気エンジンらしく、スロットル操作に合わせて元気よく吹け上がる。これで燃費(10・15モード)も、旧型14.6km/リッター(5MT)から15.6km/リッター(6MT)に向上しているのだから立派なものだ。
特筆すべきは、足まわりの良さである。今回のような山道を主体にしたプレス試乗会では硬めのサスペンションに高評価を与えがちだが、その点を差し引いても、スイフトスポーツのハンドリングは完成度が高い。「Kei改」とでもいうべき初代スイフトの、曲がりながらスロットルを抜くと途端にリアが滑るややトリッキーな走りも、それはそれで楽しかったが、最新は次元が違う。
しっかりしたステアリングに支えられて、速度を上げていってもステアリング操作とフロントタイヤの動きは素直に同調し、リアの追従性もいい。安易なスライドが抑えられ、また、コーナリング中にバンピーな路面に遭遇しても破綻の気配を見せない。安心して山道を楽しめる。旧型から1段階アップした17インチタイヤのグリップ性能を、十二分に引き出している印象だ。
ひとしきりドライブしたのち、カメラマンが待つパーキングスペースへ。あらためてフロントバンパーがブラックアウトされ、シングルグリル風になったスイフトスポーツを見ながら、ちょっぴり皮肉な感想が浮かんできた。それは……。
演出がない“素”の楽しさ
スイフトスポーツの走りは、「フォルクスワーゲンのようだ」と思った。ガッシリしたボディー、ライブリーなエンジン、素直なハンドリング。一昔前の……というのは「遅れている」という意味ではなく、「立派になって恰幅(かっぷく)が良くなる前の」ゴルフに似ていると、記憶の底から運転感覚をひっぱりだしてきて感じた。ことさら演出されたものではない、「実用」の延長線上にある、素の楽しさがいい。
「フォルクスワーゲンとは、ああいうことになっていましたから……」とスズキのエンジニアの方は笑った。スイフトスポーツの開発が本格化したころ、すでにフォルクスワーゲンとの提携にはヒビが入っていたというから、直接的な技術導入はほとんどなかったのだろう。ちなみに、欧州では3ドアの6MTモデルだけが用意され、ハンガリーの工場で生産される。「ルノー・トゥインゴRS」「アバルト500」あたりをライバルと目しているようだ。
日本で販売される5ドアのスポーツは、標準型スイフトと同じ、静岡県の相良工場製である。リアフロアパネルの一部が強化され、専用のリアアクスルがおごられる。スイフトシリーズのリアサスペンションは2本のトレーリングアームをトーションビームでつないだ形式だが、スイフトスポーツでは特にアームが強化されている。また特別なブッシュを使用して、コーナリング中にリアタイヤが左右に向くのを抑えた。より高い速度域でのファン・トゥ・ドライブを狙ったわけだ。
「GTI」に憧れた世代へ
もちろん、パーツの強化だけでなく、軽量化にも意が注がれた。アルミホイールはインチアップしたにもかかわらず、リムを薄くして旧型より軽量化し、45扁平(へんぺい)率のタイヤは、1本につき1.7kg(!)軽いという。リアキャリパーのアルミ化によって、片側1.5kgの重量軽減も果たした。
フロントまわりのしっかり感は、ステアリングギアボックスをブラケットで上下から挟んで固定し、またダンパー径を45øから50øにアップすることで得ている。スイフトスポーツの、17インチを履かせた足まわりは、だてではない。
(かつての)走り好きには、21世紀のハチロクこと「トヨタ86」もいいかもしれないが、スイフトスポーツは、「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」に憧れた世代、ハッチバックボディーに若々しさを感じた人たちにピッタリだ。現在の競争相手は「ルポ」や「ポロ」かもしれないが、新型スイフトスポーツの、全長×全幅×全高=3890×1695×1510mmのボディーは、初代ゴルフGTIがスッポリ入る大きさなのだ。なろうことなら、(限定モデルでいいので)マロンとかベージュといった“大人の”ボディーカラーを出してくれるといいのだが。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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