第246回 世界で最も偉大な“草レース”
ニュルブルクリンク24時間レース観戦記
2014.07.01
エディターから一言
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普段はのどかで美しい緑の丘と深い森がもうもうたるバーベキューの煙と歓声に包まれている――ADAC24時間、通称ニュルブルクリンク24時間レースの週末、アイフェル丘陵はまるでロックフェスティバルさながらのお祭り騒ぎとなる。今年(2014年6月19日~22日)は「アウディR8 LMS ultra」が新記録で制覇、日本勢ではクラスウィン奪還を狙った「スバルWRX STI」がクラス4位に入った。
ハイアマチュアの晴れ舞台
1970年に始まり、今年で42回目を迎えた“ニュル24時間”はメインレースの参加車だけで175台、20万人以上もの観客が詰めかける一大イベントである。近年ではメーカーのサポートを受けた事実上のワークスチームも多数参加し、トップグループにはアウディやメルセデス・ベンツ、ポルシェ、BMWなどの地元勢に加え、マクラーレンやアストン・マーティンのGT3マシンがずらりと並ぶが、いっぽうで“名物”ともいえるグループB時代の古い「オペル・マンタ」(とはいえ「トヨタ86」と遜色ない速さを見せる)まで、多種多様な車両が集うのがニュルブルクリンクの特徴だ。
地元の腕自慢にとって年に1度の晴れ舞台という図式は、かつてのモンテカルロ・ラリーやルマン24時間と同じだが、高度にプロフェッショナル化したそれらとは異なり、依然としていわゆるハイアマチュアの目標でもあり続けているのが、最も偉大な“草レース”、世界最大のツーリングカーレースの大祭典といわれるゆえんである。
“本当の姿”は北コース沿いにあり
もっとも、その代わりに性能差のある車と混走するリスクを受け入れなくてはならない。例えば今年、8分10秒台のレコードでポールポジションを獲得した「マクラーレンMP4-12C GT3」とトヨタ86のラップタイム差は2分にも及ぶし、ドライバーの腕も千差万別だ。F1などが行われるグランプリコースと、有名なノルドシュライフェ(北コース。旧コースとも言う)を合わせて1周25km余り(25.378km)のコースを、多数の車とともに24時間走り続けるレースの過酷さはルマン24時間とはまた違った意味で世界一と言えるだろう。1周20kmあまりの北コース部分は、ご存じのように原生林のような森の中にコーナーとアップダウンが果てしなく続くタフなサーキットであり、ベルギー国境に近いこのアイフェル丘陵は天候の急変も茶飯事で、長いコースの一部だけ豪雨という状況も珍しくない。
参加175台ともなれば、コース上だけでなくピット/パドックも大混雑。ひとつのピットガレージの中に最大7台もの競技車が詰め込まれるほどである。
ただし“ニュル24時間”の本当の姿は北コース沿いにある。北コースサイドの人気スポットには何日も前から大勢のファンが陣取る、というより棲(す)みついて、自前の観戦スタンドや“ロッジ”を建設し、長期滞在できるように自分たちで整備してあるのだ。ちょうどワールドカップ期間中でもあり、コースを見下ろす丘に大きなTVを据え付けて皆でドイツ戦を観戦する人たちもいた。人出という点では比肩するイベントもあるが、この自由さおおらかさでは、やはりこのイベントの右に出るものはない。
「アウディR8 LMS ultra」が新記録で制覇
予選日以降は天候が安定していた今年のレースでは、土曜日午後4時のスタートから最後までハイペースで熾烈(しれつ)なバトルが繰り広げられた。ポールシッターのマクラーレンがトラブルで早々と姿を消した後は、有力チームが何度もリーダーの座を交代しながら接戦が続き、結局総合優勝を果たしたカーナンバー4の「アウディR8 LMS ultra」と、3分弱の差で2位の「メルセデス・ベンツSLS AMG GT3」はともに159ラップを走破、優勝車の走行距離(約4035km)は新記録である。
新しい「WRX STI」でクラスウィン奪還を狙って参加したスバルは、夜の間に一時トップに立ちながらも、接触によるトラブルで後退しSP3Tクラス4位(総合32位)にとどまった。またGAZOO Racingから出場した「レクサスLFA」は、同クラスに有力なライバルが少ないこともあり53号車がSPプロトタイプ、48号車がSP8クラスで、トヨタ86もSP3クラスでそれぞれクラスウィナー(総合では各11、13、54位)に輝いた。
(文=高平高輝/写真=廣本 泉<photo=Izumi Hiromoto>)

高平 高輝
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