トヨタ・ランドクルーザー“70”シリーズ ピックアップ(4WD/5MT)
いいぞナナマル!! 2014.11.24 試乗記 10年ぶりの「トヨタ・ランドクルーザー“70”シリーズ」復活に際し、「バン」と合わせてラインナップされたダブルキャブ ピックアップトラック。30年の歴史の中で、これが日本初導入となる「荷台付きのナナマル」の走りを試した。運転に気難しいところはなし
第一印象@助手席は「あ、ホッタ君(webCG編集部員)が特に苦労なく運転してるっぽい」。皇居のお壕(ほり)のすぐ外、道路(その名も桜田通り)の向こう側には警視庁というような場所で拾ってもらったのでした。といって別に出頭したあとだったわけではなくて、神谷町で「ディスカバリー」の広報車を返却してからwebCG編集部に電話して(以下略)。
鎌倉橋あたりでホッタ君とサヨナラして自分で運転して、第二印象は「やっぱり」。というのはこのクルマ、運転しやすい。シートの前後スライドとバックレストの角度と、あとたしかハンドルのチルト調整。足元にABCペダル。全然フツー。左手でギアチェンジ……の操作感はシブい。というかゴリっと。次のギアのほうへカルく押しながらクラッチペダルを踏んでいくとクラッチが切れたところで勝手に動きはじめて……まではいいとして、その流れで最後までスッとはいってくれない。ヨイショとやってやる必要あり。バット、それがどーした。
エンジンは、こりゃもうエンストしようがない感じ。2速発進上等系。アイドリング静か。踏むとズワァァン。排気音のビートの感じはああV6。
どこから乗ったか忘れましたが首都高1号横羽線を横浜方面へ。継ぎ目の段差やアンジュレーションの上を走るたび、上屋がキツく速めのピッチで揺すられる感じあり。乗り心地は「空荷のトラック」……と思ったところでちょっと待て。実際これ、空荷のトラックじゃん。最大積載量600kg。試乗させる際は最大積載量ぶんオモリを積んどくのがトラック界の常識。いやまあこれ、ランクルなんだけど。ランクルのトラック。
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ステアリングフィールは格別
そんなことより、ワンオブ特筆点として舵感(だかん)がスバラシイ。エンジンフード開けてノゾきこまなくてもわかる油圧アシスト……もそうだけど、リサーキュレーティングボールのステアリングギアボックス!! 真ん中付近の手応えは、これはもう誇張でなくスルッスル。そこから動かしていってタイヤが横力を出しはじめるあたりの手応えの変化もバッチリ明瞭。滑らか。ということで、いわゆるN感や微舵感、ありまくり。パワステつきでここまでイイやつ乗ったの、何年ぶりか。ていうか広報車で。レーンの真ん中をキープして走るのが、だからナンとまあラクなこと!!
フロントもいわゆるリジッドアクスルなのでアクスルステア、つまりバネ下の上下動にともなって左右両輪のトー角がアクスルごと変わってしまってハンドルをとられる感じは、これはゼロではない。そりゃゼロにはできない。ただしもちろん、実用上問題にならない範囲におさまってはいる。ということで、風情です。
考えてみるまでもなくこのクルマ、ハンドル系のギア比はクイックのハンタイ。でかつ、履いてるタイヤはドライの舗装路上でのグリップのキョーレツさを重視していないタイプ(ちなみにサイドウォールにはTUBE TYPEとあり)。ボール循環式+油圧パワステにくわえてそれらだから、よい舵感ができあがる条件がバッチリ整っている。順番アレだけどブレーキペダルのタッチもナイスで、わっはっは!! いいぞナナマル!!
そして気がつくと、いつの間にやら乗り心地も。ダンパーにちゃんと熱が入ったのか、キツく速めのピッチで揺すられる感じが消えた。あとに残るは、長~いホイールベースのおかげと考えられるゆったりした揺れ。というか快適さ。これまたワンオブ特筆点としては、キャビン内に低周波のこもり、筆者が勝手にそう呼んでいるところの“トヨタおばけ”がでてこない。車内の空気がドヨ~ンとよどんでアタマがボーッとしてくる感じがなくてスッキリ。いいぞナナマル!!
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1000rpm以下が使える
いかにも出やすそうなところに風切り音が出てるのは、こういうカクいカタチのクルマならではか。それがどーした。5速100km/hのときのエンジン回転数は、計算すると2500rpm弱ぐらい? メンドくさいので2500とすると、5速は1000rpmあたりで40km/h。もしやと思ってやってみた……のは、料金所のETCゲートを5速のままで抜けてみよう作戦。もちろん、ちゃんとスピード落として。落とすところでは、20km/hぐらいまで。結論としては、フツーに可。あるいは、なんとか。さすがにスルドい出口加速は望めない、という程度。
ということでエンジン的にはこれ、500rpmが常用域(笑)。いまのディーゼルエンジンにはちょっとできない芸当、といっていいでしょう。例えば2速で発進して、2000rpmぐらいまで回したら、5速へ。中原街道や環七あたりでなら、そういう運転もフツーに可。あるいは、なんとか。この組み合わせしか試してないのでアレだけど、ナナマルのトラックに4リッター自然吸気V6はよく似合う。歴史的なことでいっても、デカいガソリンエンジンが載っかってるのはナイス。
どんだけヘンテコな物件かと思ったら、あまりにステキに運転しやすくて快適で拍子抜け……と書いたらこれはちょっとウソで、ある程度かもっと予測はできていた。いたけれど、実際に運転してみるとやっぱうれしい!! プレジャー!!
普通のクルマもこうあってほしい
借りてた最中、困ったらしきところとしては、例えば最小回転半径。そのデカさ。セマいカドを曲がろうと思って曲がりきれなくてフルロックまで→やり直し、が一度か二度。それと、後ろの視界。キャビン背後にとめてあるスペアタイヤがジャマで、アオリの上端のラインが見えない。ので、コインパーキングにとめた際はクルマを降りて車両後部と障害物とのクリアランスを確認(二度ほどw)。でそれら以外は、いわゆる取り回し方面も概してラク。全然ラク。
とにかく、ワケわからんところのないクルマ。正直なクルマ。誠実なクルマ。もっというと、ぜーんぜんフツー。デカいトラックのマックス積載状態と比べたら、これはもう誇張でもナンでもなく、あっけないことこのうえなし。いまさらボールナットのステアリングにしろとかEPSをやめろとかCVTなくせとかはいわないけれど、こういう扱いやすさをちゃんと盛り込んでほしい。というのはつまり、ナナマルみたいな特殊物件ではないフツーの乗用車にも。運転中余計なことに気を使わされないこの「フツー」な感じをゼヒ。おねがいしますよ。
……と、書きはじめてからここまででほぼ1時間。わかりやすいクルマは試乗記を書くのもラクだということです。
(文=森 慶太/写真=向後一宏)
テスト車のデータ
トヨタ・ランドクルーザー“70”シリーズ ピックアップ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5270×1770×1950mm
ホイールベース:3180mm
車重:2220kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:5段MT
最高出力:231ps(170kW)/5200rpm
最大トルク:36.7kgm(360Nm)/3800rpm
タイヤ:(前)7.50R16 LT 114/112R 8PR/(後)7.50R16 LT 114/112R 8PR(ダンロップSPクオリファイアT.G.21)
燃費:6.6km/リッター(JC08モード)
価格:350万円/テスト車=397万988円
オプション装備:電動デフロック<フロント・リア>(5万4000円)/電動ウインチ(18万6840円)/T-Connectナビ DCMパッケージ(21万6000円)/ETC ブラックボイスタイプ(1万4148円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2373km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:209.6km
使用燃料:38.2リッター
参考燃費:5.5km/リッター(満タン法)
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森 慶太
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