メルセデス・ベンツC180ステーションワゴン スポーツ(FR/7AT)
さらに低く、スポーティーに 2015.03.06 試乗記 “アジリティー”は新型「メルセデス・ベンツCクラス」の合言葉だが、それはステーションワゴンでも変わらない。いや、すべてのモデルに「スポーツ」グレードが用意されるワゴンの方が、“走りたいたい人向け”のCクラスなのかもしれない。1.6リッターターボエンジンを搭載する「C180ステーションワゴン スポーツ」に試乗した。スポーツ度ではワゴン>セダン
新型Cクラスワゴンのなかで、今回試乗したのはC180スポーツである。
Cのセダンでスポーツを名乗るのは「C250」だけだが、ワゴンではすべてのモデルでスポーツが選べる。セダンの場合、「C180」と「C200」では、「AMGライン」と呼ばれるパッケージオプションを選択すると、事実上、スポーツに仕立てることができる。「べつにスポーツモデルじゃなくていいんです」と考えるお客さんがセダンには多いということなのだろう。“アジリティー(敏しょう性)”をいっそう前面に押し出した4代目Cクラスで、セダンよりスポーティーなイメージを背負っているのがステーションワゴンということなのかもしれない。
ワゴンのC180スポーツは573万円。スポーツサスペンションで車高がわずかに下がり、1インチアップの18インチホイールやエアロパーツがAMG仕様になることなどが、「C180アバンギャルド」(528万円)との外見上の違いだ。
2840mmのホイールベースはセダンと変わらず、全長も大差ない。アバンギャルド同士で比べると、ワゴンボディーの割増料金は45万円である。
1.6ターボに非力さなし
C180シリーズに搭載されるパワーユニットは、新型Cクラス用ガソリンエンジンでいちばん小さい1.6リッター4気筒ターボである。C200用2リッター4気筒ターボの184psに対して、156ps。さらに、ワゴンの車重はセダンよりざっと60kg重い。果たして過不足なく走るのだろうか、という疑問もあろうかと思うが、大丈夫である。
2リッターターボと比べると、回転フィールに“小さいエンジン”の感はあるものの、必要なときには十分な力を出し、非力な印象は与えない。最大トルクをわずか1200rpmから絞り出すダウンサイジングターボのチューニングが効いている。むしろ今や「Eクラス」かと見まがう押し出し十分以上の「ベンツのワゴン」が、たった1.6リッターのエンジンで動いているかと思うと、痛快である。
エンジン、7段AT、サスペンション、電動パワーステアリングなどの設定を変える「アジリティセレクト」は、エコ、コンフォート、スポーツ、スポーツ+という4つの既定パターンを選べる。C180の場合、エコからスポーツまでだと、走りやドライビングのキャラクターにそれほど大きな変化は見られないが、スポーツ+にすると、さすがに違う。同じスロットル開度でも、明確に力強い加速を見せるし、変速マナーはギュッと詰まって、ステアリングも重くなる。
そのかわり、アイドリングストップはキャンセルされ、ギアも低めにスタンバイしてダッシュに備える。つまり、スポーツ+はサーキットモードである。それならば、ノーマルとサーキットの2種類だけで十分ではないか。この種のドライブセレクト機構を使うたびにいつもそう思う。そもそもTPOに応じて、こうした装置をいちいちマニュアル操作する人が、メルセデスのお客さんのなかにどれくらいいるのだろうか。いたらゴメンだが。
カッコよさが板についてきた
過去に経験した新型Cクラスは、セダンの200アバンギャルドだけで、C180スポーツというグレードも、ステーションワゴンのボディーも、今回が初めてだった。
セダンC200アバンギャルドと比較すると、ワゴンC180スポーツはひとことで言って、若向きである。もともと新型Cクラスは、重心感覚の低さが大きな魅力で、それがアジリティーといううたい文句を納得させる要素でもあるのだが、専用のハーダーサスペンションを備えるC180スポーツはさらに低く構えた印象を与える。
そのかわり、乗り心地はセダンC200アバンギャルドほどしなやかではなく、荒れた舗装路だとタイヤのゴツゴツが出がちだ。C180系のワゴンでも、乗り心地をとるならアバンギャルドのほうがいいはずだ。
C180スポーツは、内装も若向きで、スポーツシートやAMGデザインのステアリングホイールを標準装備する。ATのセレクターをステアリングに移設することで生まれたセンターフロアパネルの“丘陵”がきれいだ。ブラック基調のダッシュボードにはマットな質感のメッキパーツが多用される。昔、メルセデスがこういうことをやると、イモくさくなることが往々にしてあった。というか、旧型Cクラスのダッシュボードがそうだったが、今やカッコいいデザインが板についてきた感じだ。
トランクは使いやすそうだが……
電動テールゲートを開けると、使いやすそうなトランクが現れる。側壁に“蹴り”がなく、荷室フロアがスクエアにできているところがメルセデスワゴンの良き伝統だ。
ただ、実測してみると、カーゴルームのサイズは、平常時でも最大時でもほぼボディー外寸の等しい「スバル・レヴォーグ」ほど広くない。ちなみに573万円といえば、1.6リッターのレヴォーグがちょうど2台買える。
トランク内のスイッチ操作で、リアシートの背もたれを前に倒せるようになった。テールゲートの立ち位置からワンタッチで最大荷室がつくれる便利な機構だが、バネが強力で、背もたれも重いため、すごい勢いでドンッといって倒れる。小さな子どもが浅座りしているときなどにうっかりリリースしないように気をつけたほうがいい。
積み荷を目隠しするロール式トノーカバーの出来のよさはメルセデスワゴンの魅力だが、アルミを多用した軽量ボディー設計が売りなら、この“柱”ももうちょっと軽くできなかったものかと、脱着するたびに思った。測ったら、7kgあった。軽いロードレーサー(自転車)並みである。
リアバンパーの下で足を蹴るような動作をすると、後ろが開く。“ハンズフリーアクセス”という機能を試そうと、何度も蹴ってみたが、カラ振りに終わる。調べてみたら、C180には付いていなかった。ワゴンにこそあると便利だと思う。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC180ステーションワゴン スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1810×1450mm
ホイールベース:2840mm
車重:1600kg
駆動方式:FR
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7AT
最高出力:156ps(115kW)/5300rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)225/45R18 95Y/(後)245/40R18 97Y(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:16.5km/リッター(JC08モード)
価格:573万円/テスト車=581万6400円
オプション装備:メタリックペイント(8万6400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2762km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:278.0km
使用燃料:28.6リッター
参考燃費:9.7km/リッター(満タン法)/10.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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