第293回:タイヤが変わればクルマも変わる? ブリヂストンがタイヤの重要性をアピールするイベント開催
2015.04.21 エディターから一言4月8日の「タイヤの日」を前に、ブリヂストンプルービンググラウンド(栃木県那須塩原市)で開かれたイベント「タイヤが変わればクルマも変わる? 体験会」に、モータージャーナリスト河村康彦が参加した。
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タイヤはすべてを乗せている
「タイヤは命を乗せている」――道端の立て看板などに見られる標語の類いには、街の景観を損なうだけ……と、個人的には嫌悪感を抱いてしまうことが多いのだが、ブリヂストンが今でも用いるこのフレーズだけは、なるほど“けだし名言”だと心底思っている。
「そんな大げさな」と言うなかれ! わずか11文字のこの一文は、まさにコトの神髄を突いている。
どんなにハイパワーなエンジンを積もうとも、どれほど高性能なブレーキシステムを採用しようとも、結局それは「まずはタイヤを制御している」にすぎない。それ以前にタイヤには、クルマの重量を支える、路面から受ける衝撃を緩和する、進行方向を変える、などといった数々の重要な役割も課せられているのだ。
それは、数万点とされる自動車を構成する部品の中でも最重要であるはずのアイテム。まさに、「タイヤはすべてを乗せている」のである。
一方で、毎日クルマを使っている人であっても、まるで空気や水のごとくその存在を忘れがちなのがタイヤというアイテム。昔のように、舗装率が低くたびたびパンクに見舞われるようなことがあれば、必然的に足元にも注目が集まりもしようが、今やそうした機会も稀(まれ)だ。
かくして、新学期の始まるタイミングに合わせ、いま一度ドライバーにタイヤへの関心を高めてもらうべくタイヤ業界によって2000年に定められたのが、4月8日の「タイヤの日」なる記念日であるという。今年も、ダンロップの住友ゴムや横浜ゴムによって、高速道路のサービスエリアで無料のタイヤ点検を実施するなどの啓蒙(けいもう)活動が行われた。
技術を学び、コースで確かめる
業界最大手であるブリヂストンも、そうした機会を利用してのイベントを開催。こちらは、通常はタイヤ開発を行う自らのプルービンググラウンドへと報道陣を招き、メディアの力を借りてタイヤの重要性をより広く世間へとアピールする作戦へと打って出た。
「タイヤが変わればクルマも変わる?」と銘打たれたこのイベントでは、タイヤが担う役割やトレッドパターンが刻まれる目的、そこに込められた最新テクノロジーなどを理解してもらうために、まずは担当するエンジニア氏による座学を実施。その上で、新品タイヤとすり減ったタイヤでのウエット路面上での制動性能の違いや、同一のタイヤを不適正な低空気圧で使用した場合の転がり抵抗の増加などをコース上で実際に検証する、というカタチでプログラムは進行した。
実は今回のイベントの参加者には、自動車の専門誌やネットメディアの関係者に加えて、普段は見慣れないテレビ局や一般誌の関係者の姿も多数。そして恐らくそんな彼らの多くは、どれもこれもが“黒くて丸い”タイヤにどれほどの差があるのかを、正確には把握していないことだろう。
そう、専門メディアにとってみればもはや“当たり前”と思えるような基本的な事柄を、まずはこうした一般メディアへと伝授することで、さらに普段はタイヤなどに興味を持たない自動車ユーザーへと広めることを目的に開催されたのが今回のイベントという印象だった。かくして、「そういえば、そんな映像をすでにテレビで目にした」という人も、少なくないかもしれない。
そうした一方で、そんな“初級編”だけでは物足りない、という専門メディアに向けては、発売されたばかりの「REGNO(レグノ)」に搭載された最新の静粛化技術などについて、より突っ込んだテクノロジーの解説も行われた。
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静かさを徹底追求するレグノ
レグノといえば、「POTENZA(ポテンザ)」と並ぶブリヂストンのプレミアムブランド。ポテンザが、高性能輸入車などをはじめとしたスポーツモデルへの装着を意識したものであるのに対し、レグノは運動性能と共に高い快適性なども目指した、バランス志向のタイヤとして知られている。
そんなレグノが特に高い評価を受けるのが、世に数あるタイヤの中にあっても圧倒的とされる優れた静粛性。最新モデルの場合、単に計器が拾う数値が小さいだけでなく、「心地よさに影響する周波数域までを考慮」するなど、もはや音響工学の分野にまで踏み込んだ設計が行われているというのだから、“静かさ”を追い求める執念は半端ではないのだ。
例えば、転動時にストレートグループが発生させる気柱管共鳴音を抑制するために、そこにつながる部分に“消音器”状のパターンを仕込むというのは、レグノではこれまで用いられてきた高度なテクノロジー。一方で、それに伴うパターン剛性の低下を抑制すべくデザインを見直すことで、消音器の数を半減させながら同等効果の持続を実現させたのが、最新パターンのデザインであるという。
と同時に、同社のタイヤの中でも“高額商品”となるだけに、高級感あふれるデザインとすることにも留意。その上で、「ポテンザのようにスポーティーな見た目は、レグノでは好まれない傾向もある」というから、なかなか厄介だ。
そうしたさまざまなせめぎ合いの中で生まれるのが、モデルごとに異なるデザインを備え、多種多様な品ぞろえとなるタイヤたち。「どうしてこれほどまでに、多くの種類が必要なのか!?」という、多くの人が抱くであろう疑問への回答は、まさにこうしたところにある。
かくも手間ヒマが掛けられて研究・開発が行われる上に、それが“すべてを乗せている”と知れば、出所の知れない“格安タイヤ”などに手を出す気には到底なれなくなるのは、自分だけではないはずだ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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