第300回:自動運転もすぐそこに!?
日産予防安全技術取材会の会場から
2015.06.22
エディターから一言
拡大 |
日産自動車が開催した、メディア向けの予防安全技術取材会に参加した。「エマージェンシーブレーキ(自動ブレーキ)」をはじめとする、日産の予防安全技術への取り組みをリポートする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
自動ブレーキからまだ6年
日産自動車は、2015年度中に商用車を含めたほぼ全てのカテゴリーで、エマージェンシーブレーキを搭載すると発表している。
“ほぼ全て”がどういう意味なのか気になるが、「GT-R」や「フェアレディZ」といったスポーティーモデルを除いた“ほぼ全て”のカテゴリーという意味だとのこと。
運転する喜びを重視するクルマには、エマージェンシーブレーキを搭載しないと日産は判断したのだろう。これについてはいろいろな意見があるだろうが、現時点ではそういうことのようだ。
それにしても、ここ数年で衝突被害軽減ブレーキ搭載車の数は、驚くほどのスピードで拡大している。
今や軽自動車でも当たり前の装備だが、自動停止ブレーキを搭載したクルマが走り始めたのは、ごく最近のことだ。
『webCG』の過去記事を調べると、2009年3月に掲載された、「ボルボXC60」に搭載される予定の「シティセーフティ」を紹介する記事(該当記事はこちら)で、以下のように記されている。
「日本仕様はまだ明かされていないが、いずれにせよ『XC60』にはすべてのグレードにこのシステムが標準装備されており、日本でも当然採用される。
ただし現在のところ、『シティセーフティ』に対する国土交通省の認可が下りていない。仮に認可が下りないとすると、装置は付いていながらも作動をオフにして販売されるという、非常にもったいない事態になってしまう。」
結果的に「シティセーフティ」は採用されることとなり、日本における自動ブレーキの夜明けとなったわけだが、それからまだ6年ほどしかたっていない。
「モノラルカメラのみ」の技術力
日産が採用する自動ブレーキシステムには、大きく分けて3種類ある。
衝突の事前予測、つまり前方の状況を認識するのに使用される「目」に、ミリ波レーダーを用いるものと、カメラを用いるものと、赤外線レーザーを用いるものだ。
ミリ波レーダーを使う「フーガ」「スカイライン」の衝突回避性能は、約5km/h以上で前方の車両に作動し、停止している車両に対しては、約70km/h以上では作動せず、約60km/h以下で衝突回避の能力がある。
カメラを使う「ノート」「セレナ」などでは、約10~80km/hの範囲で作動し、停止している車両、または歩行者に対しては、約60km/h以上では作動せず、約30km/h以下で衝突回避の能力がある。
赤外線レーザーを使う「デイズ」などでは、約5~30km/hの範囲で前方の車両に作動し、約15km/h以下で衝突回避の能力がある。また、原則として歩行者や二輪車は検知しない。
このように、装置の性能は、どれだけコストがかけられるかによって差が出るのだが、日産は、他メーカーがステレオカメラや、モノラルカメラと赤外線レーザー併用型のシステムを採用する中で、モノラルカメラのみのセンサーを用いている。
もちろんその狙いはコストダウンなのだが、ソフトウエアの改良によって性能を担保している。
モノラルカメラでの障害物との距離計測は、その物体がどれくらいのスピードで近づいているのかを、カメラが捉える物体の大きさの変化と自車の速度を計算して算出している。その処理速度を上げることで、衝突回避の能力を上げているそうだ。
担当者の話によると、日本の交通事情、つまり走行速度であれば、将来的にはモノラルカメラで十分対応可能になるのではないかとのことだ。
自動運転はすぐそこに
ミリ波レーダーを使うフーガとスカイラインでは、「プレディクティブフォワードコリジョンワーニング(PFCW=前方衝突予測警報)」を搭載している。
世界初となるこの技術は、「2台前を走るクルマの状態を検知してドライバーに知らせる」というもの。
先行車のもう1台先のクルマの状況を、先行車の車体と路面の間を通して伝わるレーダーで検知し、2台先のクルマが急停止した場合になどに、表示と音、シートベルトの巻き上げによってドライバーに警告するというものだ。玉突き事故の防止に大きな効果があるだろう。
筆者も助手席で体験したが、残念ながら100%検知というわけにはいかなかった。実験のうち何度かは2台先のクルマを検知できずに、PFCWではなく、エマージェンシーブレーキが先に作動するということがあった。
もちろん完璧に作動することが理想だけれども、人間の目が届かないところに目を配る技術なのだから、100%の実力がなくても、十分効果的だろう。今後はより精度が上がり、痛ましい事故を減らすことに貢献することを期待したい。
日産は、自動ブレーキの導入のほか、2016年末までには、高速道路上での自動運転を可能にする「トラフィック・ジャム・パイロット」を、2018年には、危険回避や車線変更を自動的に行う、複数レーンでの自動運転技術を、さらには2020年までに、ドライバーの操作なしに交差点を自動的に横断できる、交差点での自動運転技術を導入する予定だと発表している。
2020年の東京オリンピック開催までに、自動運転のロボットタクシーを走らせたいという企業が設立され話題にもなった。
インターネットの動画サイトで公開されている、自動ブレーキの作動で事故を回避した様子を捉えた、ドライブレコーダーの映像を見ると、人間よりもコンピューターの方が危機回避能力が高いということがよく分かる。
まだまだ100%の技術ではないが、本当にすぐそこまで、自動運転の時代がやってきているのは間違いないのだろう。
(文=工藤考浩/写真=峰 昌宏)

工藤 考浩
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ
2026.8.20デイリーコラムフルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。 -
NEW
第292回:350SEが運ぶのは幸福か、それとも究極の不幸か…… 『星の時 4K』
2026.8.20読んでますカー、観てますカーブラジルの女性小説家クラリッセ・リスペクトルが1977年に発表した小説を、女性監督スザーナ・アマラウが1985年に映画化した伝説の作品。「メルセデス・ベンツ350SE」がもたらす運命の瞬間を謎めいた手つきで描き出す。 -
NEW
第975回:ホンダ&スバルのTシャツがイタリアを席巻中
2026.8.20マッキナ あらモーダ!イタリアで、ホンダやスバルをモチーフにした“日本車Tシャツ”が人気に。自動車をモチーフにしたアパレルの世界で、日本車や日本のブランドがもてはやされる理由とは? 素直に喜べないその背景を、現地在住の大矢アキオが考察する。 -
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】
2026.8.19試乗記マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。 -
第125回:「日産エルグランド」と「メルセデス・ベンツVLE」(後編) ―古豪復活と新勢力の出現で進むミニバンデザインの多様化―
2026.8.19カーデザイン曼荼羅帰ってきたキング・オブ・ミニバンこと新型「日産エルグランド」に、メルセデス・ベンツが世に問うた乗用MPVの「VLE」。古豪の復活とニューモデルの登場で、高級ミニバンのトレンドはどう変わるのか? オラオラ系が幅を利かすミニバンデザインの未来を考えた。 -
新型「キックス」がスマッシュヒットの日産 次なる一手のコンパクトミニバンとはどんなクルマか?
2026.8.19デイリーコラム新型「キックス」が好評の日産が、次はコンパクトミニバンの発売をプランしているという。日産の国内ラインナップには(なぜか)なかったジャンルのモデルだが、果たしてどんなクルマになるのだろうか。「シエンタ」「フリード」といった強力なライバルに、どのような武器を手に挑むのだろうか。





























