第4回:BMWと比較試乗! ボルボV60 D4 SE
ドライバーズ・ワゴン 2015.08.03 徹底検証! ボルボのディーゼル ボルボの基幹モデル「V60」は、クリーンディーゼルエンジンを得たことで、どんなクルマになったのだろうか。日本市場におけるディーゼル・ワゴンの先達(せんだつ)、「BMW 320dツーリング」との比較を通して、その実像に迫った。いま、ボルボがアツい!?
会社の規模としては決して“大メーカー”とはいえない、スウェーデンのボルボ。しかし今、その存在感が、かつてないほどに強まっている。
「V40」のスーパーヒット、新世代エンジンの搭載、そして生産設備の手入れにまでおよんだボディー基本骨格の刷新等々……積極的な“攻め”の姿勢を感じさせるさまざまなニュースが耳に飛び込んできたことは、昨今のこのブランドの特質によるものといえる。
そして今、またまた気になるトピックが世間をにぎわわせている。V40、「V40クロスカントリー」「XC60」「S60」、そしてV60と、現在日本で販売されている主要モデルにおいて、最新のクリーンディーゼルエンジンを搭載するバージョンが一斉に発売されたのだ。
実はボルボは、過去にもディーゼル乗用車を日本で販売した実績がある。「240ディーゼル」「760ターボディーゼル」という、2台のセダンがそれだ。
しかし、クラシカルな車名からも想像できる通り、それはもはや30年以上も前のハナシ。
もちろん、ディーゼルエンジンの搭載が必須の要件として求められる欧州市場への対応もあって、生産そのものはそれ以降も継続されてはいた。けれども、日本市場への導入は、今回が32年ぶりのことになる。まさに“満を持して”というフレーズを使うにふさわしい、ディーゼルバージョン発売というわけなのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
大プロジェクトの申し子
このタイミングでディーゼルモデル再導入が決定されたのは、日本国内でもディーゼルエンジンに対する偏見がようやく解消され、数多くのラインナップを取りそろえるマツダ車を筆頭に、いち早くクリーンディーゼル車導入に取り組んだメルセデス・ベンツやBMWなど、輸入モデルの販売が堅調に推移しているからに違いない。
けれども、それ以上に重要なのは、ボルボ自らの「Drive-E」への移行が順調に進み、それによって最新のパワートレインを提供できる体制が整ったという、プロダクト面での理由だろう。
Drive-E。それは、ボルボ史上かつてない規模で展開される、新世代パワートレイン戦略の総称である。
具体的には――ランニングコストの低減、妥協のないドライビングプレジャーの提供などをキーワードに、これからのボルボに搭載するエンジンを、自社開発の4気筒、もしくはそれ以下の気筒数に制限。スウェーデンのエンジン工場にも多額の投資を行い、ガソリンとディーゼルエンジンの基幹部分の設計を共通化、同一ラインでの生産を可能にする、というものだ。
実際、このコンセプトに基づいて作られた最新の2リッター4気筒エンジンにおいては、ガソリンとディーゼルの間で25%の部分に共通の部品を用い、50%には類似の部品を採用と、極めて効率的な設計を実現しているという。
今回日本に導入をされる各ディーゼルモデルに搭載される「D4」エンジンは、そんな新しい概念に基づいて開発された、まさに最新設計によるパワーユニットであるわけだ。
妥協いらずの「D4」ユニット
そんな数あるボルボの最新ディーゼル車の中から今回選び出したのは、現在のボルボ車の中堅モデルであるV60の「SE」グレード。価格は、474万円という戦略的な設定だ。
V60が2011年春に日本で発売されてから、すでに4年以上がたつ。それでも、その個性的でダイナミックなルックスが放つ魅力は、今も衰えることがない。
新たにディーゼルエンジンが搭載されたとはいえ、その内外装は基本的に変更ナシ。テールゲートに輝く「D4」のエンブレムが“特別な心臓”の存在を静かにアピールするのみだ。
ガソリン車と同印象でのクランキングの後、即座に目を覚ました最新ディーゼルユニットが放つサウンドは、ガソリンエンジンのそれとは明確に異なる。「静かな朝、近所迷惑になる」などということはないが、そのボリュームはガソリンよりもやや大きめだ。
Dレンジをセレクトしてアクセルオン。スタートの瞬間から味わえる力強い加速感が、何とも頼もしい。低回転域から強いトルクを発するシーケンシャル・ツインターボ付きのエンジンと、ワイドな変速レンジを誇る8段ATとの組み合わせが、そんな好ましいフィーリングを実現しているのだ。
右足に込める力を増していくと、トルク感は期待通り上乗せされていく。エンジン音はそれなりにキャビン内へと侵入してくる印象。が、音質的には特に気に障るものではない。さらに、ロードノイズなどの“暗騒音”が高まる高速域では、ガソリン車との違いは全く識別できなくなる。1800rpm付近に、わずかにノイズがこもる領域はあるものの、「ディーゼルだから、うるさくても仕方がない」といった妥協は、このモデルには全く必要ないのだ。
ディーゼルもさまざま
タコメーター上のレッドラインは、5000rpmに設定されている。そうした“高回転域”まで回したところでさほど頭打ち感を伴わないのは、排ガスエネルギーが増す段階を大容量ユニットがになうシーケンシャル・ツインターボならではの効果といえる。
圧巻なのは、1000rpm台半ばでもキックダウンを伴うことなく、低いエンジン回転数をキープしつつ、背中をドカンと押される加速感。わずか1750rpmで40.8kgmという強大なトルクを発生するから、それも当然なのである。
そんな今回のテストドライブには、同じ排気量を持つ輸入ディーゼル車の先駆者、「BMW 320dツーリング」も同行させた。
こちらの2リッター直4ディーゼルターボエンジンが発するのは、最高出力184psに最大トルクが38.7kgm。いずれの値も、ボルボユニットよりもわずかに小さい。当然ターボチャージャーを装着するものの、ツインターボのボルボとは異なり1基での対応。そのタービン側にバリアブルジオメトリー機構を採用と、異なるアプローチで“全域高トルク”の獲得を目指している点が興味深い。
そんな心臓に火を入れると、V60と同様に、車外では明確なディーゼルユニットならではの“ガラ音”が認められる。一方で、車内ではV60よりもわずかながらさらに静かな印象。無論、価格の差なども考慮の必要はあるが、端的に言ってこの段階で「より高級」という感覚を抱く人も少なくはないはずだ。
アクセルペダルを踏む力を強めると、かすかなタービン音を伴いながらスムーズ、かつ力強く加速する感覚は、こちらもV60に勝るとも劣らない。
一方で、“走りのBMW車”にしては意外な盲点と思えたのは、ブレーキのフィーリング。ひとり乗りの状態でも、踏力に対しての減速感が少しばかり物足りなかったのだ。
クルマを引き立てるエンジン
ボルボV60 D4 SEは、他のどんなモデルとも似ることのない独自の主張に満ちたスタイリングと、“スカンジナビアンデザイン”をさらに昇華させた、個性的かつ華のあるインテリアも光る。
一方、BMW 320dツーリング スポーツは、ランフラットタイヤを履きこなしつつ重厚で安定感あふれる乗り味を実現させており、4輪がしっかり均等に仕事をしていることを実感させる、自然でスポーティーなハンドリングのテイストが印象的。こうした点が、一朝一夕では成しえない“FRマイスター”としてのこだわりを連想させる。
日本人にとってはまだまだ新鮮な、「全域で豊かなトルク感に溢(あふ)れる」という特質を持つ最新のディーゼルエンジン。今回のテストドライブで鮮明になったのは、そうしたエンジンが、それぞれのクルマに元から備わっている魅力を、さらに色濃くするとともに引き出してくれた、ということだった。
V60 D4は、単なる実用的なワゴンではなく、ドライバーズカーとしての性格を持っており、乗ると実際よりもクルマが小さく引き締まったように感じられる。そして320dツーリングは、上質なステーションワゴンにさらにGT的な要素が上乗せされている。そのいずれもが、数ある輸入車の中にあって、個性的かつ価値のあるモデルに仕上がっていることに疑いはない。特に最新の心臓を得たV60のディーゼルバージョンは、今年発売される輸入車の中でも、“台風の目”になること請け合いである。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ボルボV60 D4 SE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1845×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1690kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4250rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)215/50R17 95W/(後)215/50R17 95W(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:20.2km/リッター(JC08モード)
価格:474万円/テスト車=562万5000円
オプション装備:電動ガラスサンルーフ(17万7000円)/クリスタルホワイトパールペイント(10万3000円)/PCC<パーソナルカーコミュニケーター>キーレスドライブ(3万1000円)/パークアシストパイロット+パークアシストフロント(5万2000円)/プレミアムサウンドオーディオシステム/マルチメディア(12万円)/レザーパッケージ<本革シート+助手席8ウェイパワーシート+フロントシートヒーター+12セグ地上デジタルTV>(36万円)/ファミリーパッケージ<インテグレーテッドチャイルドクッション+パワーチャイルドロック+シートベルトフォースリミッター>(4万2000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2029km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(0)/高速道路(6)/山岳路(4)
テスト距離:300.5km
使用燃料:18.1リッター
参考燃費:16.6km/リッター(満タン法)/14.6km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
BMW 320dツーリング スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1800×1460mm
ホイールベース:2810mm
車重:1620kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:184ps(135kW)/4000rpm
最大トルク:38.7kgm(380Nm)/1750-2750rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94W/(後)225/50R17 94W(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:19.4km/リッター(JC08モード)
価格:549万円/テスト車=664万6000円
オプション装備:スパークリングブロンズ(8万2000円)/ダコタレザーブラック(29万2000円)/BMWコネクテッドドライブ・プレミアム(6万1000円)/パーキング・サポート・パッケージ(11万3000円)/8段スポーツオートマチックトランスミッション(2万3000円)/バリアブル・スポーツステアリング(6万7000円)/ブラッシュド・アルミトリム(2万8000円)/フロントセンターアームレスト(2万3000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(22万1000円)/リアサイドウィンドウ・ローラーブラインド(3万7000円)/ストレージパッケージ(3万1000円)/レーンチェンジウォーニング(7万7000円)/アクティブプロテクション(5万1000円)/パーキングアシスト(5万円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:8328km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:269.5km
使用燃料:20.2リッター
参考燃費:13.3km/リッター(満タン法)/14.7km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
第9回:最新のクリーンディーゼルを支える日本の技術 2015.8.25 ボルボが誇る最新のクリーンディーゼルエンジン搭載モデル。今回は、その走りに貢献する日本の技術に注目。「i-ART」と呼ばれる先進の燃料噴射システムを開発したデンソーと、スムーズで高効率な8段ATを提供するアイシン・エィ・ダブリュの開発者に話を聞いた。
-
第8回:専門家が語る「クリーンディーゼル」 2015.8.13 環境とエネルギー戦略の専門家である金谷年展氏が、ボルボの最新ディーゼルモデル「V40 D4 SE」に試乗。クリーンディーゼルをさらに普及させるための課題と、今日の日本において、ディーゼルを選ぶ意義について語ってもらった。
-
第7回:エコランでV40 D4の燃費を確かめる 2015.8.10 すぐれた燃費性能がうたわれる、ボルボのクリーンディーゼル搭載車。では、実際に満タン・無給油で、どれだけの距離を走れるのか? “ミスター・テスター”笹目二朗が、「V40 D4 SE」でテストした。
-
第6回:XC60 D4による金沢・能登ドライブを写真で紹介 2015.8.7 ディーゼル車とガソリン車、2台の「ボルボXC60」に乗って、東京から盛夏の金沢、能登へ。ロングドライブの様子を、写真とともにリポートする。
-
第5回:ガソリン車とどう違う? XC60 D4比較試乗 2015.8.6 クリーンディーゼル「D4」エンジンが搭載されるボルボ5車種の中でも、特にディーゼルエンジンとの相性がいいといわれる「XC60 D4」。その走りや燃費を確かめるべく、従来のガソリン車「XC60 T5」とともに、1500kmのロングドライブを実施した。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























