第331回:“疲れにくい”という安全性能を実現
ブリヂストンの最新タイヤ「プレイズPX」を試す
2016.01.08
エディターから一言
ブリヂストンの乗用車用タイヤブランド「Playz(プレイズ)」が復活。4年のブランクを経て登場した新生プレイズは、どんなタイヤに仕上がっていたのか? 同社の実車試験施設、ブリヂストンプルービンググラウンドで試した。
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「プレイズ」が復活
「ブリヂストンから新しい乗用車用タイヤが発売されるので、その試乗会にご一緒しませんか?」
webCG編集部からの誘いを二つ返事で引き受けたのはいいものの、新商品の内容は当日まで秘密! いったいどんな商品を試すんだろう……。不安と期待を抱きながら、2015年12月某日、那須塩原市にあるブリヂストンプルービンググラウンドに向かった。
現地で明かされた新商品の名前は……プレイズ。プレイズといえば、「タイヤを変えるとドライブがらくになる」というキャッチコピーが印象的な同社の乗用車用タイヤで、第1弾の「プレイズPZ-1」が登場したのは2005年のことだった。その後、ミニバン専用の「プレイズRV」を発売し、さらにPZ-1の後継モデルとしてセダン・スポーティーカー用の「プレイズPZ-X」と軽自動車・コンパクトカー専用の「プレイズPZ-XC」を投入するなど、ラインナップの拡大を図ってきたブリヂストンである。
ところが、PZ-X、PZ-XC、PRVは2012年に低燃費タイヤブランドの「ECOPIA(エコピア)」として生まれ変わり、一部商品を除いてプレイズの名前が途絶えていた。そして、4年のブランクを経て、ついにプレイズが復活する。低燃費性能が当たり前になったいま、再び快適性を前面に押し出そうという戦略なのか。
“疲れにくい”がコンセプト
さっそくテストコースで試乗……といきたいところだが、その前に新生プレイズ=「プレイズPX」について説明を受ける。
クルマにとってタイヤはその性能を大きく左右する部品であるのは言うまでもない。そんな重要な部品に、ブリヂストンが新たな付加価値として提供したいと考えているのが「“疲れにくい”という安全性能」なのだという。“らく”をさらに一歩進めて“疲れにくい”を目指したというプレイズPXである。
ここでいう“疲れにくい”とは、
・直進維持のために修正舵(しゅうせいだ)が少ない
・旋回時、舵角(だかく)が小さい
・レーンチェンジ時、修正舵が少ない
など、「必要以上のハンドル操作を少なくする」ことを意味している。ブリヂストンは以前からプレイズで採用する非対称形状に加えて、新しいトレッドパターンや、同社独自のタイヤ解析技術「アルティメット アイ」を駆使して接地性を最適化することで、疲れにくいタイヤを実現したという。
ユニークなのは、疲れにくさの評価方法。ブリヂストンはこれまでもプレイズの“らく”を心電図や脳波測定により可視化してきたが、今回は電通サイエンスジャムが開発し、最近なにかと話題の「感性アナライザ」を用いて走行中のストレスを計測。これによればプレイズPXは「エコピアEX20」よりもストレス値が低く、疲れにくいというのがわかったそうだ。人の気持ちがリアルタイムにわかるという感性アナライザは、開発の現場では大いに役に立ったようだが、苦手な上司やひそかに恋心を抱く女子にのぞかれたらどうしようと思うのは私だけだろうか?
3タイプのプレイズを試す
それはさておき、今回登場するのは、セダン・クーペ用の「プレイズPX」とミニバン用の「プレイズPX-RV」、そして、軽・コンパクトカー用の「プレイズPX-C」の3タイプ。車種別専用設計という伝統はこのプレイズPXにも受け継がれている。
テストコースではプレイズPX/PX-RV/PX-CとスタンダードタイヤのエコピアEX20/EX20 RV/EX20 Cを比較試乗することができた。スケジュールの都合で、最初に試したのは「レクサスCT200h」によるウエット性能だったが、走り始めてすぐにプレイズPXを履くCT200hのステアリングフィールがとてもしっかりしていることに驚いた。そして、ウエット路ではグリップが高く、格段に小さい軌跡でコーナーを駆け抜けることができた。「日産セレナ」に乗り換えるとプレイズPX-RVとエコピアEX20 RVの違いがさらに際立っていた。
後半の試乗では、CT200h、セレナに加えて、「ダイハツ・ムーヴ」をドライ路で乗り比べたが、いずれも高速走行時の直進安定性はプレイズPXのほうが明らかに上で、レーンチェンジの際の舵角の小ささや揺り返しの少なさも体感できた。一方、剛性感が高いぶん、プレイズPXはエコピアEX20よりも乗り心地が多少硬め。といってもあくまで比較級の話で、十分な快適性が確保されていたことはいうまでもない。
ということで、安定感が高く、短時間のドライブでも疲れにくさが実感できたプレイズPX。とくにウエット路での安心感は目を見張るものがある。アフターマーケットにおいて同社の主力商品となるはずのプレイズPXだが、安心して購入できる商品に仕上がっているのは確かである。
あとは4年のブランクをどうカバーするかだが、その知名度を考えるとたいした問題じゃないのかもしれないなぁ。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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