アバルト695ビポスト(FF/5MT)/595コンペティツィオーネ(FF/5AT)/595Cツーリズモ(FF/5AT)
みんなちがって みんないい 2016.04.16 試乗記 大磯ロングビーチに特設のジムカーナコースが出現! FCAが、フィアット、アルファ・ロメオ、アバルトの最新モデルを一度に試すことができる特別試乗会を開催した。前編では、刺激的な走りが身上の、アバルト各モデルの魅力をリポートする。公道では試せないことが試せる
つい先日、神奈川の大磯ロングビーチで開催されたFCAの試乗会は、とってもとっても楽しかった。何せ広大な駐車場のスペースをたっぷりと使い、プロフェッショナルたちの手によってパイロンが並べられたジムカーナのコースが設営されていて、そこをフィアット、アルファ・ロメオ、アバルトの各モデルを取っ換え引っ換え、本数制限なしに好きなだけ走っていいよ、みたいな内容だったのだ。
もちろん会場から外に出ることもOKではあるのだけど、公道ではそうそうアクセルを全開にして走るわけにはいかないし、コーナリングを試すにしてもかなりの抑制が必要で、できることに限りがある。が、このジムカーナコースでは、いくらだってアクセルを全開にして走れるし、またコーナリングについても自分の走行ラインの取り方次第でさまざまな種類のコーナーや走らせ方を試すことができる。もちろん使えるギアは元気よく走るにはせいぜい2速までで、そういう意味では試せないこともあるし、計測タイムを縮めることを考えるとライン取りも走らせ方も決まってきちゃうから、試乗に徹するなら“ツメていく楽しみ”を諦める必要もあるけど、クルマの基本的な特性を知るのに適した素晴らしい試乗会だと思う。
僕はこの試乗会に用意されていた全てのモデルを楽しませていただいた。さすがに台数が多いので、2回に分けてリポートをお届けしたいと思う。まずは、最新のマイナーチェンジ版595コンペティツィオーネも用意されていた、アバルトから。
アバルト695ビポスト
加速以上にコーナリングに感動する
「アバルト500」シリーズの最強力版、695ビポスト。「フルスペック仕様」と呼ばれる、ドグミッションや機械式LSDなどを備えたレーシングカーさながらのモデルには何度となく試乗をしているけれど、今回の試乗車は標準仕様。パフォーマンスに関わる基本的な部分は共通ながら、トランスミッションは通常の5段MT、デフは電子制御式となるなど、日常的にストリートを走るのにより適したモデルに仕立てられている。
それでもビポスト、やっぱり速い。そのダッシュは1.4リッターという排気量がウソだと思えるほどに強烈な勢い。スピードは文字通り加速度的に、グイグイと伸びていく。1トン少々の軽い車体に190psと25.5kgmはだてじゃない。
が、より印象的なのはコーナリング。他のアバルト500シリーズと比べて段違いに速いのだ。チタン製のロールバーなどでリアの剛性が上がっていたり、車重が50kg以上軽かったり、サスペンションまわりが全面的に見直されたりしてることも効いて、低速でのターンも中速でのターンも見事に速い。しかもただ速いだけじゃなく、コントローラブルなのだ。うまく姿勢を作ってライン取りも決められたときなど、ナチュラルにテールを滑らせながらターンをクリアし、きれいに収束させながらズバーンと加速体勢に移っていくことだって、そう無理なくできてしまう。
エアコンなどの快適装備の設定はないが、めちゃくちゃ楽しいのだ。
アバルト595コンペティツィオーネ
“500”と“695”のいいとこ取り
ビポストは間違いなく速くて楽しい究極のアバルト500なのだけど、2シーター化にロールバー、エアコン/オーディオ設定なし、と毎日使うにはスパルタンに過ぎるのも確か。それもあってか、それに次ぐ高性能モデルとしてあらためて明確な位置づけが与えられたのが、マイナーチェンジを受けた595コンペティツィオーネだ。
ちゃんとリアシートを備え、エアコン含めた快適装備なども持ち、デイリーな使い方をしっかりこなせる“普通のアバルト500”の延長線上にありながら、最高出力がタービンや圧縮比の変更などでビポストまであと10psの180psまで引き上げられ、それに対応すべくビポストと同じブレンボ製フロント4ポッドキャリパーや大型フローティングローターなどで、ブレーキも強化されている。
スタンダード版の135psに対して160psを発生していたこれまでの595コンペティツィオーネでも、不満らしい不満を感じたことはなかったけれど、新たに+20psを得た新型の加速感は、やはり一段階上だった。エンジン回転の上昇に比例して高まっていくスピードの伸び具合は、従来型よりもむしろビポストのそれに近い印象だ。速さは確実に増していて、その加速の勢いは、やはり「楽しい!」のひとことである。一方で、排気量1リッターあたり132psというハイチューンでありながら、低速域からトルクが豊かで、流して走るようなときでも全く乗りづらさがないところもアバルトらしい。ついでに小さな姿に全く似合わない豪快な走りっぷりは、もうアバルト以外のナニモノでもない。
ストッピングパワーが高くなったことも、速さの向上に一役買っている。制動距離が縮まったことも大きいが、このブレーキシステムはペダルの踏力調整をしやすいから、コーナリングのための姿勢を思いどおりに作れる。アバルト500シリーズ全体の基本的な特性はアンダーステアなのだが、フロントタイヤへの荷重の載せ方次第でクルン! とすばやくターンを決められるところも同じくシリーズ全体の基本特性。ここで新たなブレーキシステムの導入が生きてくる。これまで以上にすばやくコーナリングするためのブレーキを手に入れたのだな、と思う。180psにこのブレーキ、そしてもともとそれなりに引き締められているサスペンション。サーキットに持ち込んでも十分以上に楽しむことができるだろう。
新しい595コンペティツィオーネは、通常のアバルト500シリーズと695ビポストのいいとこ取りのようなモデル。どんなときでもためらいなしに乗って出掛けられるばかっ速なアバルトとして、大きく魅力を増したといえるだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
アバルト595Cツーリズモ
適度にハードで適度にマイルド
そうなると、同じ“595”の名前を持ちながらエンジンのパワーが160psに据え置かれている595ツーリズモの存在は微妙になっちゃったかな? と思ったが、そういうものでもなかった。595Cツーリズモを走らせてみたら、これはこれでいいのだな、と素直に感じられたのだ。
確かに180ps仕様と比べるなら、加速の勢いもスピードの乗りも若干マイルドだ。けれど、それはあくまでも“比べると”であって、160psのままでも決して遅くも鈍くもないし、痛快な刺激に満ちている。ドライビングの楽しさと気持ちよさを存分に堪能できるのだ。
試乗車が電動オープントップの“C”で、心なしか足腰が柔らかくしなやかに感じられたこともあるのだろうけど、このバランスはこのバランスでいいなぁ……と思わされた。普段使いやロングドライブがメインなら、むしろ適度にハードで適度にマイルドなこっちの方が、間違いなくふさわしい。
今回の595コンペティツィオーネのマイナーチェンジで、それぞれのモデルの立ち位置がクッキリとした。公道を走れる競技車のようなスペシャルモデル、ビポスト。日常性とハイパフォーマンスをバランスさせたアスリート、595コンペティツィオーネ。アバルトらしい楽しさや気持ちよさにオトナの風味を加味した595ツーリズモ。そして、ベーシックといえども十分ピュアで刺激的な500。どれか1台を選べといわれたら、あなたはどのモデルに目が行くだろう?
(文=嶋田智之/写真=田村 弥)
拡大 |
テスト車のデータ
アバルト695ビポスト
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3675×1640×1480mm
ホイールベース:2300mm
車重:1060kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:5MT
最高出力:190ps(139kW)/5750rpm
最大トルク:23.4kgm(230Nm)/2000rpm ※SPORTスイッチ使用時は25.5kgm(250Nm)/3000rpm
タイヤ:(前)215/35R18 84W/(後)215/35R18 84W(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック2)
燃費:13.5km/リッター(JC08モード)
価格:599万4000円/テスト車=606万6360円
オプション装備:ETC車載器(1万2960円)/ナビゲーションシステム(5万9400円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1166km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
アバルト595コンペティツィオーネ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3655×1625×1500mm
ホイールベース:2300mm
車重:1120kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:5AT
最高出力:180ps(132kW)/5500rpm
最大トルク:23.5kgm(230Nm)/2000rpm ※SPORTスイッチ使用時は25.5kgm(250Nm)/3000rpmタイヤ:(前)205/40ZR17 84W/(後)205/40ZR17 84W(ピレリPゼロ ネロ)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:369万3600円/テスト車=380万3220円
オプション装備:ボディーカラー<ネオスコルピオーネ>(5万4000円)/ETC車載器(1万260円)/ナビゲーションシステム(4万5360円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1390km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
アバルト595Cツーリズモ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3655×1625×1505mm
ホイールベース:2300mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:5AT
最高出力:160ps(118kW)/5500rpm
最大トルク:21.0kgm(206Nm)/2000rpm ※SPORTスイッチ使用時は23.5kgm(230Nm)/3000rpm
タイヤ:(前)205/40ZR17 84W/(後)205/40ZR17 84W(ピレリPゼロ ネロ)
燃費:14.0km/リッター(JC08モード)
価格:369万3600円/テスト車=395万7120円
オプション装備:ボディーカラー<グリジオピスタ/ロッソオフィチーナ[ビコローレ(ツートンカラー)]>(16万2000円)/ETC車載器(1万2960円)/フロアマット(2万9160円)/ナビゲーションシステム(5万9400円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:3721km
テスト形態:ロードインプレッション・トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

嶋田 智之
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。






























