第455回:脱いでビックリのフィアット600柄パンツも!
これが本場イタリアのメンズモード見本市
2016.06.24
マッキナ あらモーダ!
乗り物好き必見のメンズモード見本市
世界屈指のメンズモード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」(以下、ピッティ)が、2016年6月14~17日の4日間、イタリア・フィレンツェで開催された。同展は年に2回開催されるイベントで、今回、節目となる90回目を迎えた。
自動車ブランドでは、過去にも数回出展しているMINIが参加。同ブランドのテーマは「FLUID FASHION」で、新鋭クリエイターたちが手がけたスウェットシャツをリリースした。
「MINIは常に、象徴的なデザインと独立したライフスタイルを代弁するブランドであり、1960年代からファッションと強い関連性を保ってきた」というのが、その趣旨である。各デザインとも200点限定で、近日「LUISAVIAROMA(ルイーザヴィアローマ)」のウェブサイトで独占販売される。
ほかにも、乗り物好きの目から見て興味深いものが少なくなかった。
ピッティの会場では、これまでもたびたびおしゃれないでたちに似合う自転車が提案されている。今回の逸品は「チーニョ・ヴェローチェ」というブランドのものだ。
チーニョは、1950年代は自転車用のロック(鍵)を得意とする企業だったが、1980年代に事業を畳んでしまった。それを新たに自転車本体のブランドとして復活させたという。
モダン、クラシック双方のラインを展開する。後者に装着される「新聞ホルダー」は、その昔イタリア人が、朝キオスクで買った新聞をパチンとはさんで職場に向かうために使ったものである。
パガーニのような、ランボのバッグ
ランボルギーニのロゴを抱いたスーツケースやトロリーが並んでいるスタンドも見つけた。
手がけているのは、ミラノを本拠とするバッグブランド「テクノモンスター」だ。
オーナー兼デザイナーのジャコモ・ヴァレンティーノ氏によると、彼の巧みな軽量素材の使い方がランボルギーニの目にとまり、2年前からオフィシャルプロダクトのサプライヤーとしてコラボレーションを続けているという。
「ランボルギーニは、アメリカのシアトルにラボラトリーを立ち上げてボーイング社と研究するほど、自動車業界ではカーボンのエキスパートであり、同社と仕事ができることは、非常にうれしい」と語る。
製品は、ランボルギーニの社内デザイナーとの共作による。「ミウラ」以来の伝統的モチーフであるヘキサゴン(六角形)を各部に反映させている。レザーの部分は、実際に車両に用いられているのと同じ素材だ。
ヴァレンティーノ氏に、市場におけるテクノモンスターのポジショニングを聞くと、「他社に比べれば、私たちが一日で作るのは、わずか5つのバッグと20個のトロリーだけ。自動車界でいえばパガーニ、といったところでしょうか」と教えてくれた。クオリティーとスペック重視の少量生産なのだ。
フィレンツェで見つけた江戸の粋
今回のピッティには、東京ドームの1.28倍にあたる6万平方メートルの展示面積に、1222ものブランドが出展。2017年春夏のトレンドを占った。それによると、来年は、リヴィエラ海岸のリゾートを想起させるターコイズブルーと、より立体感を強調した厚めのテキスタイルがキーワードとなるそうだ。
そうしたなか、ボクがもうひとつ目を奪われたブランドがあった。
「アンジェロ・ナルデッリ1951」の若者向けコレクション「チンクアントゥーノ」だ。
無数のスクーターの刺しゅうが施されたチノパンである。チンクアントゥーノ(Cinquantuno)は、ブランド名の一部でもある「51」を表す。1950~60年代といえば、戦後イタリアが最も輝いていた時代。デザイナーがスクーター柄に、その時代への思いを寄せたことは容易に想像できる。
もうひとつのチノパンは、さらに素晴らしかった。裏地に色とりどりの「フィアット600ムルティプラ」がプリントされているのだ。
凝った裏地とは、江戸っ子の着物の粋に通じるではないか。イタリア車ファンなら、自動車と同じブランドロゴがバッチリついたポロシャツをこれ見よがしに身にまとうより、これを履くほうが、何十倍もしゃれ者に見えるだろう。
「私、脱いでもすごいんです」という懐かしいキャッチを思い出してしまった筆者であった。
(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>、大矢麻里<Mari OYA>、MINI、CIGNO BICICLETTA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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