第20回:クルマは顔とタイヤが命(その1)
2016.12.06 カーマニア人間国宝への道履きっぱなしは非常識!?
オーディオ問題も解決し、いよいよ納車とあいなった欧州のオシャレ牛丼カー「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」。納車後、愛車をよく見たらガンメタルーフの2トーン(Bカラー)だったのはうれしい驚きだった。紺にガンメタだとあまり目立たないので気付きませんでした!
実際に運転してみたところ、トルクもパワーも期待通りのそこそこ感。セミATのセレクトロニックには多少違和感もあるが、それもまた今後味わいが出てくるかもしれない。
「人間、違和感や嫌悪感を乗り越えなきゃ進歩はないんだよぉ!」
尊敬するテリー伊藤氏の教えである。
ということで、納車後速攻で成すべきはタイヤ交換と決まった。
デルタには6年で5万2000km走った“コチコチ”タイヤが付いており、乗り心地は驚くほどゴツゴツしている。これをレグノに替えれば間違いなくマシュマロになろう。
ただそれは、「BMW 335iカブリオレ」ですでに実行済みだ。カーマニアたるもの、新たなチャレンジをすべきではないか?
時は12月(昨年)。となるとアレか。スタッドレスか。
といっても、冬用タイヤとしてのスタッドレスではない。今は冬だが、冬を越えて春が来て、夏が巡ってもスタッドレスのまま、一年中履きっぱなしにしようというチャレンジだ。
これを言うと、眉をひそめるカーマニアは少なくない。モッタイナイし危険だというのである。が、それは時代遅れの認識ではないか!?
常識を疑え!
私が「スタッドレス通年使用」というスタイルの存在を知ったのは、20年ほど前だ。それは、「ハイヤーがスタッドレスを履きっぱなしで、1年ごとに交換している」というものだった。
当時のスタッドレスはトレッドがグニャグニャに柔らかかったので、乗り心地は超ソフト。つまりハイヤー向き。突然の雪にも対応できる。通年使うと1年くらいしか持たないが、次の冬が来る前に新品にすれば雪上性能も確保できる――という、実に合理的な考え方だった。
といっても、当時それをマネしようなどとはもちろん思わなかった。あのころのスタッドレスはそれこそ全面的に腰砕けで、ドライ路面を走るのは苦痛以外の何物でもなかったし。
その後スタッドレスは年々進歩を遂げ、アイスバーン性能を競う一方で、グニャグニャ感も徐々に消滅。ドライブフィールはサマータイヤにどんどん接近していったが、それでも「スタッドレスは冬だけ履くもの」という常識は消えなかった。
それを覆したのは、弊社スタッフのマリオ高野であった。なんと某サイトにて、愛車「インプレッサ」でスタッドレスタイヤを夏季約6カ月間使用するテストを始めたのだ!
結果は、2.3万kmを走破して摩耗は約2mm(前輪。後輪はこの6割程度)。つまり、履きっぱなしで4万km走っても5分山が残っている計算だ。意識高めに5分山を交換時期としても、年間1万kmなら4年持つ。サマータイヤとあんまり変わらんやんけ!
しかも驚くべきことにその企画、タイヤメーカー側(ダンロップ)が積極的にタイヤを提供してのものだった。メーカーも、「耐摩耗性はノーマルタイヤと変わりません」と豪語するまでになっていたのである。
3年履きっぱなしでもOK
といってもメーカーとしては、「通年使用は推奨しません」というただし書きが付く。なにせスタッドレスはメシの種。通年使用が増えると売り上げが落ちる恐れもあろうし、タイヤに無頓着な太平洋側のシロートさんが実行すると、古~いすり減ったスタッドレスで雪国に特攻して事故が起きるかもしれない。
ただ、そこらをわかっているユーザーとしては、ドライ/ウエット路面でのグリップや耐摩耗性がほぼイーブンで、雪でも走れるとなれば、スタッドレスを選ばないのは単なるゼイタク! という気さえしてくる。スタッドレスはもはやオールシーズンタイヤとして使えるんじゃないか? ってことだ。
私はマリオから詳しく事情聴取し、当時の足グルマだった「アクア」のピレリ製スタッドレスを、春が来てもそのまま履き続けることにした。履きっぱなしだと交換も保管場所も必要なくなってとっても便利だし、「このままでどこまでも走っていける」という万能感も生まれる。つまり自由を拡大できるのである!
ピレリを選んだのは、欧州メーカー製なのでアイスバーン性能は若干弱いがドライ性能が高く(たぶん)、しかも値段が安かったからだ。激安通販でアルミホイール込み4本約5万円。国産コンパクトカーは消耗品が安くてホントありがたいです。
結果は、1年余り/走行1万2000kmで、前輪約2mm、後輪約1mmの摩耗だった。ダンロップよりは減りが早かったが、それでも最大3年履きっぱなしでイケそうだ。
このような実績のもと、デルタでも通年スタッドレスに挑戦することに決めたのであった。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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